サステナビリティ

第三者意見

第三者意見

NGKレポートへの第三者意見を寄稿した、関西大学 社会安全学部・大学院社会安全研究科教授 髙野 一彦(たかの かずひこ)氏の写真です。
関西大学 社会安全学部・大学院社会安全研究科
教授・博士(法学)
日本経営倫理学会 常任理事
経営倫理実践研究センター 上席研究員

髙野 一彦氏

1.NGKレポート2021の特筆すべき点

ここ数年、社会において大きな変革が起こっている。わが国では、サステナブル投資の投資残高が2016年頃から急速に拡大し、2020年3月末時点で約310兆円、運用資産総額に占める割合は24.3%となった。環境・社会・ガバナンス(ESG)課題に積極的に取り組む企業を企業価値という視点から応援する、わが国はそのような社会になりつつあるように思われる。
NGKグループは本業に根ざしてESG課題に取り組もうとしている。そのような真摯な姿勢を本レポートからうかがい知ることができる。それは新たな中長期ビジョン「NGKグループビジョン Road to 2050」で示されている。例えば、カーボンニュートラルな社会の実現のためにCO2を分子レベルで分離できるサブナノセラミック膜、安全で高効率な亜鉛二次電池などの開発を、またデジタル社会の発展に貢献するために超小型薄型電池などの開発を意欲的に進めようとしている。独自のセラミック技術で世界をリードするNGKグループの取り組みとして、同ビジョンは社会から強く支持されるものと思う。
同ビジョンの実現のための組織改編も行われている。例えば本年4月にESG推進統括部が設置され、ESGに関する活動をグループ横断的に取り組むこととなった。一般的にCSRやコンプライアンスなどを担う部門はコストセンターと呼ばれていたが、同社のESG推進統括部は、価値創造プロセスに寄与する部門であり、隔世の観がある。
また、ガバナンス課題にも積極的に取り組んでいることがわかる。例えば、独立社外取締役が全取締役に占める比率を1/3(9人中3人)に高め、女性や外国人の執行役員の選任も進めている。経営課題について、社外役員と社長・副社長が議論を行う「経営協議会」、社外役員同士が意見交換を行う「社外役員会議」、社内の関係者から監査役や社外取締役が情報を聴取する「監査役・社外取締役ヒアリング」などが頻度高く開催されていることは、同社のコーポレート・ガバナンスの特筆すべき点である。一般的に、社外取締役の情報収集に限界があること、発言が実際の経営執行に反映されにくいことなどの課題が指摘されているが、このような課題の解決を目的とした真摯な取り組みである。

出典:GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW 2020

2.さらなる発展への期待

新型コロナウイルス感染症のパンデミックが長期化しているが、この間もNGKグループは製品を安定的に供給し続けたことに敬意を表したい。国内外の工場や事業所における感染対策を徹底し、またテレワークへの移行などの対策をスムーズに行えたことは、従前よりBCM(Business Continuity Management)に積極的に取組んでこられた成果だと思われる。
本レポートでは、大島卓会長が進めてこられた社風改革を小林茂社長が踏襲し、「皆が挑戦する心を持ち、創造性を発揮できる、風通しの良い働きやすい会社」を目指す旨を述べておられる。ニューノーマル時代の新たな働き方の中で、このような職場環境をどう作っていくのか、さらに探求されることを期待したい。エドモンドソン(1999)は、「人間関係が安全であるという構成員共通の信念」が組織効率を向上させると論じているが、このような企業風土の醸成が、NGKグループのさらなる発展の礎になることと思う。
また、コンプライアンスの取り組みもさらに進展した観がある。本年4月に「コンプライアンス活動基本要領」を制定し、米国司法省のガイドラインを研究し、コンプライアンスの「考え方」をまとめられたことは素晴らしい取り組みである。今後、製品のみならず、サービスやソリューションを提供する事業にも取り組まれるとのことだが、新たな事業への展開には新たなコンプライアンス上のリスクも発生することとなる。しかしコンプライアンスに関する基本的な「考え方」をグループで共有していれば、自信を持って新たな領域に進むことができると思う。この「コンプライアンス活動基本要領」のグループ全体への浸透を期待したい。

3.エール

同社は2019年に創立100周年を迎えた。世界的なリーダー企業であるにもかかわらず、100周年を契機として「NGKグループ理念」を改定し、新たに「NGKグループビジョン Road to 2050」を策定し、現在を「第三の創業期」と位置づけ、積極的に変革に取り組んでおられることに敬意を表したい。また、ビジョンの策定にあたっては、経営層とともに多様な従業員が参加して、30年後のありたい姿を議論されたことは素晴らしい取り組みだと思う。
本年度版のNGKレポートは、同社グループが30年後の社会課題の解決のために本業に根差して貢献するための道筋を示した卓越した内容であると思う。新たな中長期ビジョンに沿って、NGKグループが益々発展されることを期待してエールを送りたい。

(本記事はNGKレポート2021より抜粋)

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