サステナビリティ
TCFD提言に基づく情報開示
NGKグループは、金融安定理事会(FSB)により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に対して2020年2月に賛同を表明し、気候変動がグループの経営にもたらすリスクと機会のような課題の解決と必要な情報開示に、TCFDの枠組みを活用すべく、その検討を進めてきました。
以下に、TCFD提言で開示を推奨している、ガバナンス、戦略、リスクマネジメント、指標と目標の4つの項目に沿って、シナリオに基づき分析した関連情報を開示いたします。
引き続き分析を深化させ、開示情報を充実させるとともに、ステークホルダーとの対話を進めてまいります。また、気候変動関連の経営への影響を明確にし、対応戦略を講じることにより、事業の持続的な成長を図っていきます。
TCFDとは、金融安定理事会(FSB)により設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」です。2019年6月のG20大阪サミットを契機に多くの日本企業が賛同を表明しています(2023年10月12日現在で1,470の企業と機関)。
ガバナンス
NGKグループは、2021年4月に公表した「NGKグループビジョン Road to 2050」において、独自のセラミック技術でカーボンニュートラルとデジタル社会に貢献することを掲げ、ESG課題への対応を経営の中心と位置付けています。気候変動対応は、地球の持続可能性において最重要課題の一つと認識し、NGKグループビジョンを踏まえ併せて策定した「NGKグループ環境ビジョン」および「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」に基づき、事業活動を通じての2050年までのCO2排出量ネットゼロを目指しています。具体的な活動として「環境行動5カ年計画」によって管理指標と年度ごとの達成目標を定めています。これらは、社長を委員長とするESG統括委員会で審議され、年1回以上、取締役会に報告されます。CO2排出量削減の取り組みについて、その達成状況を取締役および執行役員の業績連動賞与の評価項目に組み入れてインセンティブとしています。
TCFD提言に基づく情報開示については、ESG統括委員会に置かれ、関連する部門が参加する環境行動分科会で対応を検討の上、ESG統括委員会の審議を経て、取締役会に報告します。環境行動分科会では、ほかにも行動計画の一つとして事業活動におけるカーボンニュートラルを遅くとも2050年までに達成することを目標とし、省エネ・焼成燃料の転換などもマネジメントします。
その他、CDP(旧称:カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)での開示対応などのESG課題を含め、ESG統括委員会で審議した内容は取締役会に報告されます(年間1回以上)。
気候変動対応に関わる体制図
リスクマネジメント
NGKグループの気候変動に関連するリスクを含む全社的なリスクについては、リスク統括委員会がリスクマネジメントに係る方針、戦略、体制、施策、年度計画の策定、およびリスクマネジメント全般の執行状況のモニタリング等を取り扱い、適宜、取締役会へ報告することとしています。また、個別のリスク事項については、これを管理、監督すべき部門または各委員会の長の責任の下で、当該部門または委員会が対処します。災害、事故その他のリスクが現に発現した場合等には、危機管理基本規程に基づき、同規程が定める部門および委員会等が対応します。このうち著しく重大なリスクに関しては、経営企画室担当執行役員の判断で、社長の参加する対策会議を招集し対応に当たります。
リスクマネジメント体制図
リスクマネジメントプロセス
さらに、気候変動に関連するリスクについては、ESG統括委員会の環境行動分科会でシナリオ設定と重要リスクを特定するシナリオ分析、リスクと機会の抽出、対応戦略の策定を行います。これらの結果は、ESG統括委員会の審議を経て取締役会に報告されています。
重要リスクの管理サイクル
戦略
気候変動のリスクと機会
NGKグループの事業に関連する気候変動のリスクと機会およびその影響の大きさについて、時間軸とシナリオを設定して分析をしています。シナリオ分析は、複数の将来シナリオを想定した上で、各シナリオ下で気候関連のリスクと機会がNGKグループに与え得る影響を把握し、今後の戦略や対応の検討に生かすことを目的とした手法です。
前提条件
時間軸
リスクと機会を検討するための時間軸として、短期・中期・長期を設定しました。
時間軸 | 設定理由 | |
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短期 | 2025年度 | 第5期環境行動5カ年計画の最終年度であるため |
中期 | 2030年度 | NGKグループ環境ビジョンの中間目標年であるため |
長期 | 2050年度 | NGKグループビジョンおよびNGKグループ環境ビジョンの目標年であるため |
シナリオ
カーボンニュートラルへの移行によるリスクと機会、物理的なリスクと機会がそれぞれ最大化すると考えられるシナリオとして、1.5℃シナリオと4℃シナリオを設定しました。
シナリオ | 概要 | 参照した主な外部シナリオ |
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1.5℃シナリオ | 2050年カーボンニュートラルに向けて、政策・規制導入や市場変化が急速に進行することで、地球の平均気温上昇が産業革命前の水準に比べ1.5℃に抑えられる。 |
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4℃シナリオ | CO2排出量削減に向けた政策・規制や社会の取り組みが進まず、地球の平均気温上昇が産業革命前の水準に比べ4℃となる。災害などの気候変動による影響が甚大化する。 |
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特に重要度の高いリスクと機会
各時間軸とシナリオにおいて、TCFDの分類に沿ってリスクと機会を特定しました。リスクと機会各々の財務影響の大きさは、全社のリスク評価基準を参考に定性的に評価を行った上で、一定の影響があると考えられ、シナリオに基づく定量的な検討が可能な一部の項目については、財務影響の定量化を実施しました。
なお、本シナリオ分析はNGKグループの業績の将来見通しではなく、各シナリオ下で気候変動によるリスクと機会がNGKグループに将来与え得る影響を分析し、今後の戦略や対応の検討に生かすためのものです。また、財務影響の試算において使用している情報は検討時点のものであり、不確実な要素や仮定も含んでいます。
気候変動のリスクと機会を踏まえた戦略
シナリオ分析を通じて特定したリスクと機会に対して各々の影響度を認識した上で、社会や市場の動向を注視しながら、各項目について設定した対応戦略に沿って行動していきます。
移行リスクのうち、CO2排出に伴うリスクについては、「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」に基づきCO2排出量ネットゼロに向けた取り組みを推進することでリスクを低減していきます。
水災害リスクについては、比較的発生頻度の高い降雨に対してBCP(事業継続計画)の観点から土地の嵩上げ等の対応策をすでに講じています。それ以上の災害についても、人命を守ることを第一優先として壊滅的な被害が発生しないように対応策を取っています。今後も気候変動によるリスク低減のために、4℃シナリオのような最悪な事態の可能性も認識した上でリスク評価を継続するとともに、BCP等の対応策の強化に取り組んでいきます。
NGKグループは「NGKグループビジョン」において、「独自のセラミック技術でカーボンニュートラルとデジタル社会に貢献する」ことをありたい姿として定め、2050年にこれらの分野における関連製品が売上高の80%を占めることを目指しています。カーボンニュートラル社会の実現による事業機会について、今回のシナリオ分析では現在想定し得る一部の事業に対する定量的な財務影響を算定しました。「NGKグループビジョン」の実現に向けて今後もカーボンニュートラルおよびデジタル社会関連の新製品の開発に努め、新たな価値を社会に提供し持続的な成長を目指します。
シナリオ分析については、参照した外部シナリオや各種のパラメーター等の追加や更新、新製品の開発状況に応じて適宜充実、深化させ、気候変動のリスクと機会が経営にもたらす影響を継続的に分析し、対応を検討していきます。
指標と目標
「NGKグループ環境ビジョン」の達成に向けて、目標実現のための「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」を策定しました。2050年の目標をグループ全体のCO2排出量ネットゼロとし、そこに至るまでのマイルストーン目標として、2025年度に排出量55万トン(基準年2013年度比25%削減)、2030年度に同37万トン(同50%削減)を設定しています。
カーボンニュートラル戦略ロードマップ
カーボンニュートラル戦略ロードマップ4つの戦略
また「NGKグループ環境ビジョン」の実現に向け、2021~2025年度における環境活動の目標として、「第5期環境行動5カ年計画」を策定しました。2050年ネットゼロ、およびマイルストーン目標である2030年度の2013年度比50%削減の達成への進捗をわかりやすくすることが狙いです。また、再生可能エネルギーの利用拡大への取り組みとして、グループ全体の電力使用量に対し、再生可能エネルギー利用率の目標を新たに設定したほか、カーボンニュートラル関連製品での登録数を増やす目標も定めました。
(2023年5月 開示)