サステナビリティ
カーボンニュートラルへの取り組み
NGKグループは、気候変動への対応をマテリアリティの一つとして捉えています。バリューチェーン全体にカーボンニュートラルを働きかけ、CO2排出ネットゼロの事業活動を目指します。2021年4月に環境ビジョンを掲げ、4つの戦略から成るカーボンニュートラル戦略ロードマップに沿って、遅くとも2050年までにCO2排出ネットゼロの目標達成に向けた活動を推進しています。
CO2排出量削減推進体制
NGKグループは、NGKグループ環境ビジョンに基づき「第5期環境行動5カ年計画」で設定したCO2排出量削減目標の達成に向け、年次計画を立案・管理することにより、成果を積み上げてきました。
2021年度から2023年度にかけては、カーボンニュートラルに向けた体制づくりの一環として、全社横断的な組織であるCO2排出ネット・ゼロプロジェクトを立ち上げて活動を進めてきました。このプロジェクトは本社製造技術部門を所管する常務執行役員がプロジェクトリーダーとなり、傘下にカーボンニュートラルの4つの戦略に基づいたワーキンググループを立ち上げ、省エネの強化、インターナルカーボンプライジング(ICP)の導入、燃料転換技術の開発、太陽光発電設備の設置などさまざまなテーマで活動してきました。3年間で各ワーキンググループがロードマップを作成し、カーボンニュートラルに向けた取り組みができる体制が整ったため、2024年度からはプロジェクトの体制は解消し、それぞれのワーキンググループが自立して取り組んでいます。NGKグループは国内および海外の拠点において、気候変動やエネルギー使用量削減などに関する法律や規制(国内の場合は「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」や「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」など)や政策などを支持し、これらへの対応を適切に行っています。
CO2排出ネット・ゼロワーキング推進体制
目標と実績
2023年度は、2022年度に引き続き、省エネパトロールやICPによる環境関連設備投資の実施に加え、クリーンルームや生産設備などの運用について改善をしました。また、エネルギーの見える化の一環として、エネルギーデータを月次で収集し、社内プラットフォームでの情報共有を行いました。
その結果、省エネによりCO2排出量を3.1万トン削減することができました。さらに、NGKグループ内で太陽光発電設備の設置や再生可能エネルギーの調達、カーボンニュートラルLNG※の切り替えなどの取り組みの結果、2023年度のCO2排出量実績は56万トンとなり、目標を達成することができました。
2024年度については、CO2排出量目標を60万トンと設定しました。本年度は、昨年度に引き続き、上記の取り組みとともに省エネ活動のさらなる推進、プロセス改善や排熱利用による改善を行っていきます。しかしながら、エンバイロメント事業において乗用車販売台数の回復や排ガス規制の強化を背景に需要が増加する見通しのため、排出量が増加する可能性を踏まえた目標値としました。目標値の達成に向けた活動を推進することに加え、本年度の排出量実績値からの増加を少しでも抑えるために省エネ活動の強化などを進めてまいります。
CO2クレジットでオフセットすることでCO2が発生しないとみなされるLNG
CO2排出量の推移(NGKグループ 全生産拠点)
図中の数値はCN LNG(カーボンニュートラルLNG)の効果含みます。CN LNGとは、CO2クレジットでオフセットし、CO2が発生しないとみなされるLNGです。ただし、省エネ法などでは現在クレジットの対象になっていないため、区別し記載しています。
NGKグループ内でのカーボンニュートラルに向けた対応
「NGKグループ環境ビジョン」の達成に向けて、「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」を策定し、2050年の目標としてグループ全体のCO2排出量ネットゼロを掲げ対応を進めています。
トップダウンでの省エネ強化
CO2排出削減に向けた省エネ活動の主要な取り組み
区分 | 方策 | 効果(2023年度) |
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省エネ推進体制の強化と事業部への省エネ支援 |
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CO2削減効果 省エネ活動による削減:3.1万トン |
生産プロセスの高効率化 |
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汎用設備と建物の省エネ活動 |
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省エネに対する推進体制強化と支援
NGKグループは、2021年度より製造部門の事業部長をリーダーとした全社横断的な省エネ推進体制をつくり、共通の省エネ目標を掲げてカーボンニュートラルの目標に向けた削減を推進しています。月次エネルギーデータの収集や社内プラットフォーム開設による見える化により、削減活動の計画および進捗管理を強化し分析に役立てています。一方、事業部への省エネ支援として、省エネ事例集やガイドラインを作成し、国内外の全生産拠点に配布しています(日本語版、英語版)。また、本社工務部門が国内外の製造拠点を訪問し、現地スタッフとともに省エネパトロールおよび意見交換を実施しています。汎用設備(コンプレッサー/ボイラー/空調機等)のエネルギーの漏れや無駄を摘出し、製造設備全体の省エネレベルアップとともに、エネルギーコストの大幅削減にもつながっています。
生産プロセスの高効率化
NGKグループは、生産効率の向上や排熱の回収・利用の促進、エネルギー効率の高い設備導入などによって、生産に伴う環境負荷の低減に努めています。また、競争力強化を目指し、さらに進化したエコプロセスを構築していきます。特に、セラミックスの製造において必要不可欠な焼成工程を担う焼成炉は、多くのエネルギーを消費するため、従来から高効率化に力を入れてきました。グラフで示すように連続焼成炉におけるCO2原単位は約30年間で約70%の削減を達成しています。
連続焼成炉 導入年代別CO2比較
代表的な生産設備である連続焼成炉のCO2原単位削減推移
汎用設備と建物の省エネ化
NGKグループは、従来から照明・空調・蒸気・工場エアーなどの汎用設備の省エネ活動に取り組んでいます。照明ではLED化、空調ではインバーター化や出力の最適化、室外機の遮熱など、工場エアーでは風量の最適化など高効率機器の適用や運用面での改善を進めてきました。このように汎用設備の省エネは、共通するノウハウ情報を本社部門から各拠点に水平展開することで、効率的により大きな成果につなげています。
建物の更新・新築時には、積極的に高効率機器や再生可能エネルギーの導入を図るほか、隣接する自社工場の低温排熱の有効利用や自然換気・自然採光等、立地条件等を考慮した対策を施し、大幅な省エネを図っています。名古屋事業所瑞穂地区に新たに建設した新事務・厚生棟(2020年10月竣工)はこれらの施策により、基準とするビルのエネルギー消費から排出されるCO2排出量を半分以下に削減することを目指した「ZEB(ゼロエネルギービル)指向型オフィスビル」です。この建物は国土交通省の「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」に採択され、先進的な省CO2対策が高い評価を受け、2022年度はZEB-Readyを達成することができました。また、未利用の工場低温排熱の活用、従業員の快適性を考慮した空調の調整などを踏まえてZEB-Readyを達成したことが他社の規範になると高く評価され、2023年度には、省エネルギーセンター主催の「2023年度 省エネ大賞 省エネ事例部門」の資源エネルギー庁長官賞(業務分野)を受賞しました。当社は事業構成の変化や建物の老朽化により、建物の新築計画や更新が多くあるため、順次省エネ化・ZEB化とエネルギー利用効率を高める運用改善に努めます。
インターナル・カーボンプライシング(ICP)の運用
ICPは、脱炭素に向けた投資や対策の推進に向けて、企業内部で独自に設定、使用する炭素価格のことです。
日本ガイシは、環境ビジョンで掲げた2050年CO2排出ネットゼロの目標実現のため、高効率設備や再生可能エネルギー関連設備の投資を推進するために、2022年度からICPの運用を開始し、設備導入可否の評価を実施しています。2023年度はICP設定において参考にしている国際エネルギー機関(IEA)のCO2価格が見直されたため、140USドル/CO2トンに見直しを行い、CO2削減のための排熱利用設備や太陽光発電設備の設置において、ICPを投資回収計算に適用しました。今後、世間の動向をウォッチするとともにさらなる活用として社内炭素課金などに向けた検討を開始しています。
技術イノベーションの推進
Scope2排出量は再生可能エネルギーの導入などでのCO2排出削減が可能ですが、当社の強みであるセラミックス製品の製造には焼成工程が必要で、燃料として主に天然ガスなどを利用しています。そのため、焼成で用いる燃料をCO2排出フリーにするため、水素やアンモニアなどによる燃料転換技術の開発を進めています。2022年度は、水素バーナーを用いた焼成炉の実用化に向けて量産実証炉を設置しました。2023年度は、量産実証炉でのバーナーの耐久性や炉内の温度分布などの検証を進めています。
また、水素やアンモニアのインフラ整備の進捗具合に備えて、工場から排出された排ガスからCO2を回収するCCS(Carbon Capture and Storage)の実証も進めています。今後、回収したCO2と水素を合成して都市ガスの主成分であるメタンを生成するメタネーションの実証を進めることも計画しています。
再生可能エネルギー利用の拡大
NGKグループ環境ビジョンの目標である2050年ネットゼロ実現のためには、再生可能エネルギーの利用拡大が必要です。特に電力については、RE100(100% Renewable Electricity)に加盟し、2040年までに事業で使用する電力をすべて再生可能エネルギーとすることを約束しています。目標達成のために、太陽光発電設備の設置や再生可能エネルギー調達などのコストを意識しながら、計画的に推進しています。
太陽光発電設備設置については、2021年度以降、NCDK多治見工場やACC(NGK(蘇州)環保陶瓷有限公司)などの国内外の生産拠点に設置を進め、2023年度は、引き続き国内の名古屋事業所や石川工場、海外の生産拠点であるACP(NGKセラミックスポーランド)への設置も進めました。
再生可能エネルギー由来の電力や再エネ証書の購入などによる環境価値取得については、海外の生産拠点を中心に調達を進め、2021年度には欧州の全製造拠点ACP、ACE(NGKセラミックスヨーロッパ)、NBF(NGKベリルコフランス)にて再生可能エネルギー由来の電力100%調達を実現しました。特にNBFは燃料も再生可能由来のものに切り替え、NGKグループ初の電力・燃料双方での100%再生可能エネルギー利用の拠点となりました。また北米ではNGKロックにおいて100%再生可能エネルギー電力に切り替えました。
また、燃料については日本ガイシの名古屋、知多、小牧事業所およびNGKセラミックデバイス本社の燃料をカーボンニュートラルLNGといったクレジットを利用してCO2の排出削減につなげています。
上記の太陽光設備の設置や再生可能エネルギーの調達などにより2023年度は21万トンの削減へつながりました。今後も、拠点内での太陽光発電設備設置の拡大および再生可能エネルギーの調達の継続・拡大を進めていきます。2025年度に再生可能エネルギーの電力利用率50%を達成することを目指して取り組んでいきます。
バリューチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けた対応
カーボンニュートラルを推進するためには、自社でのScope1およびScope2でのCO2排出量だけでなく、Scope3であるバリューチェーンでのCO2排出量を把握し、サプライヤーや顧客と協働して削減に取り組むことが重要です。
Scope3への取り組み
Scope3は、Scope1、2以外のバリューチェーン全体を通じた温室効果ガスの間接排出です。NGKグループでは、2022年度からグループ全体でのCO2排出量の把握を開始しました。2023年度の実績は327万トンです。Scope3のカテゴリー1(購入した製品・サービス)は188万トンと最も多く、それに次いでカテゴリー11(販売した製品)の使用が102万トンと多いため、これらカテゴリーの排出量を優先的に削減することが重要と考えています。今後、SBTiが掲げる水準に準じた排出削減目標に沿って、お取引先の皆さまと連携し削減に向けて取り組んでいきます。一方、Scope3のカテゴリー4(自社荷主の輸送)は11万トンと比較的小さい割合ですが、従来から日本ガイシは日本の省エネ法への対応により、積載率の向上やモーダルシフトなどの削減対策に取り組んできました。ここ数年間は製品構成の変化などにより輸送量原単位は良化傾向にあります。2023年度は、前年比0.7%減と良化しました。今後は、NGKグループ全体での削減にも取り組んでいきます。
輸送量と輸送量原単位の推移
ライフサイクルアセスメントでのカーボンフットプリント(CFP)の算定
ライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)は、製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)における環境負荷を定量的に評価する手法です。バリューチェーン全体での削減を推進するために自社全体が関連するScope3に加え、自社製品のLCAでのCO2排出量(CFP)把握が第一歩と言えます。NGKグループでは、第5期環境行動5カ年計画で主要製品のLCAによるCFP算定を目標に掲げました。2021年度からISO14040に基づいたCFP算定に着手しています。主要製品や新製品におけるCO2の多い工程を特定し、排出量削減を進めていきます。今後、製品の企画・設計段階でのLCAを行うことにより、CFPが小さく競争力の高い製品の提供を目指します。
カーボンニュートラル関連のイニシアチブへの参加および外部団体からの認証
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)
金融安定理事会(FSB)により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に対して2020年2月に賛同を表明し、2022年4月にTCFD提言に基づいて情報を開示しました。
SBTi(Science Based Targets initiative)
2022年4月にSBT(Science Based Targets)の認定機関であるSBTi(Science Based Targets initiative)にコミットメントレターを提出し、2024年7月に短期目標およびネットゼロ目標について、認定を取得しました。
RE100への加盟
2022年10月に事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す国際的なイニシアチブ「RE100」に加盟しました。電力エネルギーにおける再生可能エネルギー比率を2025年に50%とすることを目標としており、2023年は目標としていた25%を達成しました。
省エネ大賞受賞
2023年度に、名古屋事業所瑞穂地区の新事務・厚生棟が省エネルギーセンター主催の「2023年度 省エネ大賞 省エネ事例部門」の資源エネルギー庁長官賞(業務分野)を受賞しました。