カーボンニュートラルへの取り組み
考え方
気候変動は、地球環境および社会・経済に深刻な影響を及ぼす人類共通の課題であり、その対策としてパリ協定をはじめとする国際的な枠組みの下、カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みが世界的に進められています。NGKグループは、気候変動への対応をマテリアリティの一つとして位置づけ、バリューチェーン全体でカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを推進しています。
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)
提言に賛同し、同提言に基づき、カーボンニュートラル社会への移行に伴うリスクと機会を特定しています。
こうした社会的要請やマテリアリティならびに各国・地域における法令・規制や政策を踏まえ、NGKグループは2021年に「NGKグループ環境ビジョン」を策定しました。同ビジョンの下、地球環境保全を人類共通の重要課題と捉え、事業活動を通じて「カーボンニュートラル」「循環型社会」「自然との共生」の実現に貢献することを使命としています。
戦略とアプローチおよび指標と目標
NGKグループは、「NGKグループ環境ビジョン」の下、「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」「環境行動5カ年計画」に基づいて取り組みを推進しています。カーボンニュートラルの領域においては、2050年までにCO2排出量ネットゼロの達成を目指し、環境負荷低減に資する製品や技術の開発と、自社のバリューチェーンにおけるGHG排出量削減に向けた取り組みを進めています。具体的には、2050年までに以下を目標としています。
Scope1・2※排出量:2050年度 ネットゼロ
Scope3※排出量:2050年度 90%以上削減 (基準年2022年度)
- ※Scope1:自社の直接排出
- ※Scope2:購入エネルギーの使用に伴う間接排出
- ※Scope3:Scope 1、2を除くバリューチェーン全体の排出量
これらの長期目標を、 SBTi(Science Based Targets initiative) の考え方に沿って設定しています。また、「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」に基づき、カーボンニュートラル社会の実現に資する製品・技術の開発や、Scope1・2排出量の削減に向けた取り組みを推進しています。これらの取り組みを通じて、移行リスクの低減と事業機会の拡大を図っています。
環境行動5カ年計画に基づく目標と実績
Scope1・2排出量
NGKグループは、省エネルギー活動、太陽光発電設備の設置、再生可能エネルギーの調達などを推進しています。これらの施策により、2025年度のScope1・2排出量は39万トンとなり、目標としていた50万トン以下を達成しました。2026年度以降も、これらの施策を強化し、2030年の中間目標達成に向けて取り組みを継続します。
- ※図中の数値はCN LNG(カーボンニュートラルLNG)の効果を含みます。CN LNGは、CO2クレジットでオフセットし、CO2が発生しないとみなされるLNGです
Scope3排出量
NGKグループは、Scope3排出量の把握を進めており、2019年度からNGK単独の排出量の把握を開始、2022年度からはグループ全体での算定を行っています。直近の2025年度における排出量は420万トンでした。
Scope3排出量の内訳では、購入した製品・サービスに由来するカテゴリー1と、販売した製品の使用に由来するカテゴリー11が大半を占めています。これらを重点カテゴリーと位置づけ、サプライヤーやお客さまと連携しながら、バリューチェーン全体での取り組みを通じて、まずは2030年度の目標達成に向けた削減を優先的に進めています。
推進体制
Scope1・2・3排出量の削減に向けた推進体制
NGKグループは、カーボンニュートラルの実現に向け、Scope1・2・3排出量の削減を推進する体制を整えています。戦略ロードマップおよびバリューチェーン全体を視野に入れたアプローチに基づき、テーマ別に策定したロードマップに沿って、各施策を着実に実行しています。
これらの取り組みにあたっては、国内外の各拠点における気候変動対応やエネルギー使用量削減に関する法令・規制、政策を踏まえ、適切な管理・運用をしています。国内では、地球温暖化対策の推進に関する法律やエネルギーの使用の合理化等に関する法律への対応を行っています。
今後も全社的な連携の下、Scope1・2・3排出量の削減に向けた取り組みを継続的に推進していきます。
取り組み
カーボンニュートラル戦略ロードマップに沿った取り組み
戦略1:カーボンニュートラル関連製品・サービスの開発と提供
NGKグループは、脱炭素社会に至る過程を“減らす(~2030年)”、“変える(~2040年)”、“無くす(2040年~)”の3つのフェーズで進行すると見立て、 “製品(モノづくり)”と“サービス(コトづくり)”の両面で市場/顧客から選ばれるソリューションを提案することで社会課題に貢献し続けていきます。吸着・分離・合成といったNGKコア技術を軸に、製品開発や実証試験を進め、要素技術の確立はもちろんのこと、社会課題解決につながるソリューション構築を目指します。2030年までの“減らす”フェーズでは、脱水膜や分離膜技術を軸として省エネによる排出量削減ニーズに応えていきます。2040年までの“変える”フェーズにおいては、規制強化や排出権価格の上昇を受けて代替燃料への移行が進むことを想定しており、DACやリアクター技術の適用を図っていきます。2040年以降の“無くす”フェーズでは、カーボンゼロエネルギーの一つである核融合発電への転換を見据え、バックキャストで開発/アプローチを継続していきます。
戦略2:トップダウンによる省エネ強化
生産拠点の省エネ
Scope1・2排出量の削減に向け、省エネルギーの推進を最優先課題と位置づけています。省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)の努力目標であるエネルギー消費原単位の年1%改善を上回る、年2%の改善を目標に、各種取り組みを進めています。製造部門のトップが主体となり、省エネ推進会議を年2回開催し、各部門の取り組み状況を共有するとともに、改善活動につなげています。また、本社製造技術部門を中心に、省エネ診断・指導を行う省エネパトロールを実施し、部門特性に応じた省エネ施策の導入を支援しています。これら取り組みにより、2025年度にはグループ全体でScope1・2排出量を約1.3万トン(3%相当)削減しました。2021年度からの5年間の累積削減量は約10万トンとなっています。今後も各部門が設定した目標に基づき、継続的な改善を進めていきます。
- 生産プロセスの効率化
燃料を天然ガスへ転換し、炉材やバーナーを高効率なものへ更新するなどの改善により、連続焼成炉のCO2排出量は1980年代から約70%削減し、現在もその水準を維持・向上させています。近年は、焼成時の空気比調整や乾燥炉などの排熱利用を進め、さらなる省エネと効率化を推進しています。
連続焼成炉 導入年代別CO2原単位の削減
- ※代表的な生産設備である連続焼成炉のCO2原単位削減推移
- 省エネ大賞受賞(受賞年度:2024年度)
NGKグループのグループ会社であるNGKアドレックは、2024年度に一般財団法人省エネルギーセンター主催の「2024年度省エネ大賞」省エネ事例部門で、資源エネルギー庁長官賞(産業分野)を受賞しました。省エネパトロールや診断を契機に、操業条件の見直しや設備統廃合などを実施し、省エネ効果を高めた点が評価されました。今後は、この取り組みを他拠点へ展開し、さらなる省エネを推進していきます。
オフィス・間接部門での省エネ
- ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)志向型オフィスビルの建設
NGKグループは、建物の新設や更新にあたり省エネルギー化を積極的に推進しています。
名古屋事業所瑞穂地区の新事務・厚生棟では、高効率機器や再生可能エネルギーの導入に加え、隣接工場の低温排熱利用、自然換気・自然採光など立地条件を活かした対策を実施しました。その結果、瑞穂E1棟の延床面積および運用時間を踏まえて算定した基準一次エネルギー消費量から想定されるGHG排出量に対し、約50%の削減を達成しました。この取り組みは国土交通省のサステナブル建築物等先導事業に採択され、2022年度にはZEB-Readyを達成しました。さらに、2023年度には省エネ大賞(業務分野)資源エネルギー庁長官賞を受賞しています。
名古屋事業所瑞穂地区の新事務・厚生棟 名古屋事業所瑞穂地区の事務棟・厚生棟の省エネルギー設計・運用イメージ
また、2025年7月にオープンした共創施設「NGK Collaboration Square DIVERS」では、高い省エネルギー性能と再生可能エネルギーの活用により、ZEB化を実現しています。建物外皮の性能向上や高効率設備の導入によりエネルギー消費を大幅に削減するとともに、太陽光発電による創エネルギーを組み合わせることで、一次エネルギー消費量の実質ゼロを達成しました。特に環境ファサード※は、開放的な外観デザインと環境負荷低減を両立する重要な要素です。高断熱仕様のガラスを採用し、室内の熱損失を抑制するとともに、南面には傾斜した外装形状を取り入れることで、夏季の日射を効果的に遮蔽しながら、自然光と眺望を確保しています。さらに、東面から南東面にかけて外付けルーバーを設置し、ピーク時の日射を大幅に低減することで、空調負荷の抑制につなげています。これらの建築的工夫により、快適な室内環境を維持しながらエネルギー消費を抑え、ZEBの実現を支えています。
- ※環境ファサード:遮熱・断熱、日射制御、自然換気等により、建物の環境性能向上に寄与する外観(ファサード)設計
共創施設「NGK Collaboration Square DIVERS」 共創施設「NGK Collaboration Square DIVERS」のZEB達成のための環境配慮手法
- 既存建物の運用
NGKグループは、建物の新設・更新時の省エネ化に加え、既存の事務棟やオフィスにおいても省エネルギーの取り組みを推進しています。本社地区の本館ビルでは竣工から30年以上が経過し、近年の施設と比べて省エネルギー性能の改善余地が生じています。こうした課題に対応するため、従来の管理手法に加え、さらなる省エネ効果を目指した新たな取り組みを開始しました。
具体的な取り組みとして、各フロアに温度・湿度・不快指数を表示する計器を設置しました。併せて、経営トップから従業員に向けて、省エネ行動を促すビデオメッセージを発信しています。また、施設管理者が計器による実測値を確認しながら空調をきめ細かく調整するとともに、利用者からの要望にも適切に対応する運用を導入しました。これらの取り組みにより、2021年度比で2024年度はエネルギー使用量を約20%削減しました。今後も活動を継続・改善し、他の建物への展開を進めていきます。
NGKグループ内のカーボンニュートラルに向けた投資の推進
- インターナル・カーボンプライシング(ICP)の運用
NGKグループは、カーボンニュートラルに向けた投資判断を促進するため、2022年度よりインターナル・カーボンプライシング(ICP)を導入しています。設備投資の評価において、国際エネルギー機関(IEA)が示す2030年の先進国における炭素価格である140USドル/CO2トンを基準価格として設定しています。
ICPを活用し、排熱利用設備や太陽光発電設備の導入に関する投資回収の評価を行っており、一部案件では、投資判断要素の一つである投資回収期間に約3割の影響を与えました。 今後は、社会動向を踏まえながら、さらなる活用方法の検討を進めていきます。
戦略3:技術イノベーションの推進
NGKグループのセラミック製品の製造には焼成工程が不可欠であり、同工程では主に天然ガスを燃料として使用しています。そのため、カーボンニュートラルの実現に向けては、Scope1排出量の削減が重要な課題となっています。この課題に対応するため、電化の可能性を検討するとともに、水素やアンモニアを活用した燃料転換技術の開発を推進しています。
- 燃料転換技術の開発
水素バーナーを用いた焼成炉の実用化に向け、量産実証炉を設置し、耐久性や炉内の温度分布の検証を進めています。併せて、製品への適用に向けて試作品での品質確認を実施しています。
- CO2回収技術の開発
水素やアンモニアのインフラ整備の進展を見据え、当社は工場排ガスからCO2を回収するCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)設備を導入し、実証を進めています。2024年度には、回収したCO2と水素からメタンを合成するメタネーション設備を導入しました。さらに、2025年度からは、生成したメタンを脱臭炉の燃料として利用し、CO2循環の実証を行っています。
戦略4:再生可能エネルギーの拡大
NGKグループは、RE100に加盟し、Scope2排出量の削減に向けて、2040年までに事業活動で使用する電力を全て再生可能エネルギーに切り替えることを目標としています。この目標の達成に向け、同グループは太陽光発電設備の設置や再生可能エネルギー証書の活用など、コスト面も考慮しながら、再生可能エネルギーの導入および調達を計画的に推進しています。その結果、2025年度には使用電力における再生可能エネルギーの割合が50%に達しました。
今後も、再生可能エネルギーの導入拡大を継続し、Scope2排出量の削減と目標達成に向けた取り組みを進めていきます。
- 太陽光発電設備の設置
NGKグループは、国内外の生産拠点で太陽光発電設備の導入を進めています。現在は、NGKセラミックデバイス多治見工場やNGK(蘇州)環保陶瓷有限公司などで稼働しており、再生可能エネルギーの活用を拡大してきました。今後も、国内外拠点を対象に、順次設置を進めていく計画です。
- 再生可能エネルギーの調達
NGKグループは、グループ内での省エネルギーの推進や設置済みの太陽光発電設備の活用だけでは、カーボンニュートラルの達成は十分ではないと認識しています。そのため、地域ごとの状況やコストを踏まえ、再生可能エネルギーを計画的に調達しています。
海外拠点では、欧州の全製造拠点において再生可能エネルギー由来電力の100%調達を達成しました。さらに、2025年度より欧州以外の海外拠点でも再生可能エネルギーの調達を開始しています。加えて、2026年度からはNGKセラミックスポーランドにおいて、VPPA(Virtual Power Purchase Agreement:再生可能エネルギー電力の環境価値を取引する仮想的な電力購入契約)による長期調達を開始し、10年間で約94万トンのCO2削減に寄与する見込みです。
国内においても、一部で再生可能エネルギー由来電力の調達を開始しました。併せて、環境価値を取得可能なカーボンニュートラルLNGを採用しています。これらは名古屋・知多・小牧事業所およびNGKセラミックデバイス本社で活用しており、Scope1・2の排出量削減に取り組んでいます。
バリューチェーンに沿ったアプローチによる取り組み
持続可能な調達の推進(Scope3排出量の削減)
Scope3のカテゴリー1(購入した製品・サービス)およびカテゴリー11(販売した製品の使用)の排出量削減には、サプライヤーおよびお客さまとの連携が不可欠です。特にサプライヤーについては、主要200社を対象に、GHG排出量や削減目標に関する調査を実施しています。調査にあたっては、事前に説明会を開催し、当社の気候変動に関する方針や取り組みを共有するとともに、協力を依頼しました。併せて、個別対応や意見交換を通じて理解の深化と継続的な連携強化を図っています。
また、サプライヤーの状況を踏まえつつ、当社として支援可能な取り組みを検討しながら推進しています。排出量算定をこれから開始する約20社のサプライヤーとは個別にコンタクトを取り、算定方法に関するレクチャーを実施しました。さらに、1社とは具体的な排出削減余地について検討を進めています。
ライフサイクルアセスメントによるカーボンニュートラル推進
ライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)は、製品のライフサイクル全体における環境負荷を定量的に評価する手法です。NGKグループでは、Scope1~3の排出量把握に加え、主要製品および新製品にLCAを適用し、製品ごとのGHG排出量であるカーボンフットプリント(CFP)の算定を進めています。
原材料調達、製造、輸送など各段階における製品あたりのGHG排出量を算定し、環境負荷の大きい工程を特定することで、排出削減につなげています。また、開発段階の製品についてもLCAを実施し、環境負荷の低い製品設計に取り組んでいます。今後は、GHG排出量にとどまらず、その他の環境負荷についてもLCAを活用し、製品の環境貢献度の算定につなげていきます。
イニシアチブや外部団体への参加および認証
外部団体への参画、イニシアチブへの賛同・参加の考え方
NGKグループは、気候変動対策に関する自社方針と一致する業界団体やイニシアチブに積極的に参画し、CO2排出ネットゼロの実現に向けた取り組みを推進しています。参画にあたっては、方針との乖離がないかを定期的に確認し、方向性に大きな相違がある場合は、参画内容の見直しや脱退も検討します。これらの判断は、サステナビリティ推進部を中心に社内関連部門と連携して行っています。
TCFD
NGKグループは、2020年に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同しました。TCFDが推奨する4項目(ガバナンス、戦略、リスクマネジメント、指標・目標)に沿って、シナリオ分析に基づく情報を開示しています。今後も分析を深化させ、開示内容の充実とステークホルダーとの対話を進めるとともに、気候変動による経営への影響を明確化し、対応戦略を講じて事業の持続的成長を目指します。
SBTイニシアチブ(Science Based Targets initiative)
NGKグループは、温室効果ガス排出削減目標について、国際認定機関であるSBTイニシアチブからネットゼロ基準で認定を取得しました。バリューチェーン全体で、2050年までに基準年(2022年度)比で90%以上の削減を目指します。さらに、2030年までにScope3排出量を基準年比で25%削減することを中間目標としています。
RE100
RE100は、事業活動で使用する電力を全て再生可能エネルギーで賄うことを目指す企業による国際的なイニシアチブです。NGKグループは2022年10月に加盟し、2050年までにCO2排出量ネットゼロを目標とする「NGKグループ環境ビジョン」に基づき、再生可能エネルギー利用の拡大を戦略の一つとして推進しています。
エコ・ファースト
NGKグループは、環境大臣が認定するエコ・ファースト制度に基づき、エコ・ファースト企業として認定を受けています。環境保全を経営の重要課題と位置づけ、Scope1・2排出量の削減や環境配慮型製品の提供に継続的に取り組んでいます。今後も、先進的な環境経営を通じて、カーボンニュートラル社会の実現と事業の持続的成長の両立を目指します。