企業価値向上に向けて

財務・ESG責任者メッセージ

資本市場との対話を深め、価値創造に向けた財務・非財務のマネジメントを実行します

取締役専務執行役員 神藤 英明 の写真

既存事業の収益力アップと株主還元により資本収益性を向上させ、高付加価値品や新製品への積極投資で成長性を確保し、ESGの重要課題の解決に取り組むことで非財務価値を高めていく。これら3つの取り組みを推し進め、企業価値の向上を目指します。

2023年度実績と2024年度の見通し

2023年度は、大幅な為替の円安進行に支えられ、売上高は5,789億円と過去最高を更新しました。しかしながら、エンバイロメント事業が自動車販売台数の増加などにより好調を維持した一方、デジタルソサエティ事業で半導体マーケットの悪化などが響き、営業利益は664億円、当期純利益は406億円と、減益となりました。

2024年度は、全社で売上高6,200億円、営業利益750億円、当期純利益530億円の増収増益を目標としています。デジタルソサエティ事業においていまだ厳しい市況が続いていますが、下半期以降は半導体マーケットの回復が見込まれるほか、エネルギー&インダストリー事業でもNAS電池の海外案件出荷が増加する見通しで、全社の売上・利益共に伸ばしていけると予測しています。

企業価値向上を目指して

当社の株式市場からの評価は、2024年3月期末日時点でPBR(株価純資産倍率)1倍未満となっていますが、早期の改善を目指しています。当社は、持続的な企業価値向上と株主の皆さまへの利益還元を経営の最重要課題の一つに位置付け「資本収益性の向上」「成長性の確保」「非財務価値の向上」の3つの取り組みを進めています。

資本収益性の向上

資本収益性については、CAPM(Capital Asset Pricing Model)を用いた当社の株主資本コストを約9%と想定しており、ROE(自己資本利益率)はこれを上回る10%以上の水準を目標としています。その達成に向け、ROEと密接に関連するNGK版ROIC(営業利益÷事業資産(売掛債権+棚卸資産+固定資産))を社内管理指標として採用し、事業別に資本収益性を評価しています。

各セグメントの収益性向上につきましては、基幹事業であるエンバイロメント事業はEV化の進展で成長性の低下が見込まれますが、コストダウンやお客さまへの価格交渉などを通じて、採算性向上を目指します。また、2024年度からは産業プロセス事業をエネルギー&インダストリー事業からエンバイロメント事業へと移管しました。産業プロセスのエンジニアリング機能を、自動車排ガス用の触媒担体やフィルターの製造技術などと組み合わせ、新製品の開発・実証実験を加速させていきます。

デジタルソサエティ事業については、新製品の開発とともに先行製品の付加価値を高め、業界シェアをさらに拡大します。成長性が非常に高い分野でもあり、積極的に開発や設備投資、場合によってはM&Aを含めて経営資源をインプットし、収益性を向上させていきます。

エネルギー&インダストリー事業も、NAS電池の大型案件による成長率上昇に加え、これまでの取り組みにより収益性が改善してきています。今後も、さらにそれを加速させていく考えです。

こうした各事業の取り組みを受け、NGK版ROICは2023年度の9.8%から2024年度は11.0%に改善する見込みです。NGK版ROICについての意識が全社に浸透し、各事業本部でも資産水準を常に意識しながら事業運営を進められていると感じています。

成長性の確保

成長性の確保は、当社の経営戦略の中核です。事業ポートフォリオ管理による経営資源の適切な配分に加えて、持続的な成長を実現するために研究開発を強化し、2030年度の新製品の売上高を1,000億円以上とする目標「NV1000」を掲げています。

既存事業および事業化した新製品については、収益性と成長性の2軸で事業ポートフォリオを管理しています。NGK版ROICは10%、売上高成長率は5%を基準に精査し、成長が期待できる事業群への優先投資を行い、低成長・低収益分野については事業継続の判断を個別検討しています。2024年度は、エンバイロメント事業の更新投資のほか、先行き成長が期待されるデジタルソサエティ事業の増産投資を中心に、総額680億円の設備投資を予定しています。

新規事業の拡大についても、NV1000が順調に進捗しており、すでに事業化した製品の一つ、絶縁放熱回路基板では2030年度に約200億円の売上を目指しています。事業化に近い実証フェーズの製品群では、DAC(ダイレクト・エア・キャプチャー)用セラミックスやサブナノセラミック膜などを早期に事業化させ、合わせて約1,000億円の売上を目指します。さらに開発フェーズにも、合計で約1,000億円規模のテーマを抱えています。2024年度も前年度同様、カーボンニュートラルやデジタル社会分野を中心に300億円を超える研究開発投資を行う予定です。

NGKグループビジョンに対する進捗(業績推移)

NGKグループビジョンに対する進捗を示したグラフです。

事業ポートフォリオ方針

中期の事業ポートフォリオイメージを示したグラフです。

非財務価値の向上

財務指標に表れない非財務価値の向上も、企業価値向上における重要な課題です。当社グループは、持続的な成長とNGKグループビジョンで掲げた事業構成の転換を果たすべく、ESG(環境・社会・ガバナンス)を経営の中心に据えており、これらの活動は長期の成長に不可欠なものと捉えています。

2023年4月には、9つのマテリアリティを特定しました。これは、当社にとってのサステナビリティの基本方針を支えるものであり、これらの課題を解決していくことが会社としての成長にもつながると認識しています。ESG統括委員会において各マテリアリティの目標となるKPIを審議し、取締役会で決議を得ましたので、これに基づき着実なマネジメントを進めていきます。

また、ESG経営においては、社会的責任の観点に加え、将来の成長の源泉となる人的資本や知的資本への投資を行っていきます。その管理指標として、営業利益にCO2排出コストや労務費、研究開発費、各評価機関のESG目標達成率を加味した「NGK版付加価値」を導入しました。これによってサステナビリティを高め、非財務価値を向上させていく上での当社の課題が明確化し、それを改善することで企業としての質の向上にもつながります。足元の収益性の向上へのインプットと、将来の業績につながる非財務価値向上へのインプットの両輪をバランス良く回し、利益を拡大させていくことが重要と考えています。

健全な財務基盤の維持に向けて

資本政策に関しては、資本コストを上回る収益性の確保と財務健全性を両立し、利益率、資本回転率、財務レバレッジを事業戦略と整合した健全な水準に保つことを意識しています。有利子負債の活用と機動的な自己株取得を含めた積極的な株主還元を行い、資本コストの低減を図るほか、成長性の確保によってROEを向上させ、エクイティ・スプレッドの拡大を目指します。資金調達面では、フリーキャッシュフローを超える場合は有利子負債での調達を基本としつつ、財務健全性維持のためD/Eレシオ0.4をめどとしています。債券格付けA+を維持しつつ、収益力・キャッシュフローの向上により一段上の格付けを目指していきます。

企業価値と当社の経営指標の関係

企業価値と当社の経営指標の関係を示した図です

投資家・株主との対話を重視

当社グループは株主の皆さまの利益を重視し、持続的な企業価値向上と利益還元を経営の最重要政策の一つに位置付けています。成長に向けた適切な投資資金の確保と、資本効率を意識した利益還元をバランス良く行っていきます。

配当金については、事業リスクの変化に合わせた純資産管理と3年程度の期間業績(ROE)へのリンクも勘案しながら、純資産配当率3%および連結配当性向30%程度を中長期的なめどとし、さらにはキャッシュフローの見通しなども勘案して配分することとしています。2023年度の株主配当については1株当たり50円で実施、2024年度の配当金につきましては1株当たり60円とさせていただく予定です。

また、以前より資本効率の向上、株主還元の充実を目的に自己株式取得を進めており、2023年度は850万株(149億円)の取得を実施しました。今後も成長投資、配当水準、手元資金や株価水準などを総合的に勘案しながら、機動的に実施していく考えです。

投資家・株主の皆さまとの対話についても、精力的に進めています。投資家向けの決算説明会(年2回)に加え、主幹事証券会社が開催する海外投資家向けフォーラムや海外IR、個人投資家向けのIR、また昨年度は株主向けのSRミーティングも実施しました。皆さまが当社の経営状況や今後の成長、人材育成のあり方などに強い関心を抱いてくださっていることを改めて実感しました。

対話を通じて得られたフィードバックは経営の質向上に活用させていただくとともに、当社グループの中長期的な展望や経営のあり方をご理解いただけるような情報開示の充実に努めていきます。

さらなる企業価値向上の努力を続けていきますので、今後ともご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

(インタビューは2024年5月に実施)