新製品の創出

分子レベルの分離プロセスにおけるセラミックフィルターの適用

CO2やN2など特定の気体や液体を分子レベルで分離

サブナノセラミック膜

日本ガイシでは、混合ガスから特定の気体を、また混合液から特定の液体を分離できるさまざまな「サブナノセラミック膜」を開発しています。大幅な省エネルギー、コストダウンを可能にし、革新的な分離プロセスを実現します。

セラミックフィルターの分類と適用範囲

日本ガイシは、工場排ガスの「集塵」から、医薬品の製造工程における「低分子分離」まで、幅広いラインアップで、最適なフィルトレーションを提供しています。
セラミックフィルターの中でも特に細かい細孔径を持つ「サブナノセラミック膜」は、分子レベルでの分離が可能な膜です。たとえばガス中からCO2を分離するなど、カーボンニュートラルに大きく寄与できます。

分離対象物と日本ガイシのセラミックフィルターの対応を分子径の大きさに沿って並べた図です。

サブナノセラミック膜の構造

直径180ミリメートル、全長1,000ミリメートルの円柱状の多孔質セラミック製基材を貫通する約1600本のセル内面に、1ナノ(10億分の1)メートル以下の細孔径を持つゼオライトなどからなる緻密な分離層を形成することで、分子レベルでの分離を実現します。分離層の種類を分離対象に応じて変更することで、細孔のサイズをコントロールし、分離したい分子を選択的に分離することが可能となります。

サブナノセラミック膜の外観と、断面の構造です。
サブナノ膜のカットモデルです。供給ガスは、分離槽を透過した膜透過ガスが本体横のスリットから排出され、透過しなかったガスは奥の出口から排出されます。

日本ガイシのサブナノセラミック膜は、「分子の大きさの違い」や「吸着性の違い」を用いて特定の分子を分離します。例えば、分離層の細孔よりも大きな分子と小さな分子とが含まれる混合ガスの分離にサブナノセラミック膜を使用した場合、分離層の細孔よりも小さな分子が細孔を通り抜けることで、大きな分子のガスと小さな分子のガスを効率的に分離することができます。

分子の大きさの違いで特定の分子を透過させる分子ふるい効果の透過モデルです。
分子の吸着性の違いで特定の分子を透過させる親和性効果の透過モデルです。

サブナノセラミック膜の特長

サブナノセラミック膜には以下のような特長があります。

(1)分子レベルでの分離が可能

結晶構造内に分子レベルの細孔を有するゼオライトなどをセル表面に配置することで、分子レベルでの気体や液体の分離が可能です。

(2)細孔径が均一であり、分離精度が高い

日本ガイシのサブナノセラミック膜は、均一な細孔を保有する結晶性のゼオライトなどを分離層として採用することにより、従来の膜分離に用いられる有機膜や炭素膜と比較し、高い分離精度を有しています。
また、分離したい分子の種類に合わせて分離層の種類を選択することにより、さまざまな分子を分けることが可能になります。
例えば、DDR型ゼオライト膜の分離層であるDDR型ゼオライトは、結晶性の材料で、0.36ナノメートル×0.44ナノメートルの楕円形の細孔を持っていることが特長です。細孔の短径(0.36ナノメートル)は、CO2(0.33ナノメートル)より大きく、CH4(0.38ナノメートル)より小さいため、DDR型ゼオライト膜にCO2とCH4の混合ガスを供給すると、CO2を優先的に透過させることができ、高い分離精度を得ることができます。

ゼオライトの種類・細孔径・分子径

分子の大きさと、分離に使用されるゼオライト膜の種類の対比です。

DDR型ゼオライト膜の分子分離のイメージ

従来の膜

孔が均一ではない

従来の膜は孔の大きさが均一ではありません。

DDR型ゼオライト膜
結晶構造なので細孔が均一

結晶構造のため孔の大きさが均一にできます。

DDR型ゼオライト膜の各種ガスの透過性能

DDR型ゼオライト膜の各種ガスの透過性能です。横軸に分子径、縦軸に透過速度を設定しています。

(3)分離装置の小型化、省エネを実現可能

CO2の分離で用いられるアミン吸収法、N2の分離で用いられる深冷分離法、有機溶媒の脱水に用いられる蒸留法などは、分離精度は高いものの、巨大な設備が必要なことや、エネルギー消費が大きいといった課題があります。これらの工程にNGKのサブナノセラミック膜を用いることで、設備のコンパクト化や省エネルギー化を実現できます。

(4)耐熱性、耐圧性、耐久性が高い

材質がファインセラミックスのため、耐熱性、耐圧性に優れ、さまざまな気体・液体、温度への対応が可能です。また機械的強度が大きく剛性を有しているため、圧力や熱による膜構造の変化がなく、長期使用が可能です。

(5)圧損が少なく透過量が多い

分離層を形成するための基材には、細孔径をアレンジした支持層と表面層を積層した複層構造を採用しています。細孔径が均一な単層構造と比較して大幅に圧力損失が低い複層構造の基材上に分離層を形成することにより、高い透過量を実現します。

(6)膜面積が大きく処理量が大きい

直径180ミリメートル、全長1,000ミリメートルの円柱状のセラミック製基材を貫通するセルを約1,600本配置したハニカム(蜂の巣)状の構造のため、大きな処理量を確保できます。また管状構造の膜のように膜を束ねてモジュール化する必要がないため、部品点数も少なく、設備のコンパクト化やコストダウンが可能になります。

カーボンニュートラルに寄与する幅広い分野・用途への適用が可能

サブナノセラミック膜は、CO2やH2、H2Oなど、様々な分子を分離することが可能です。こういった分子の分離ニーズは、具体的には以下のようなものがあります。

(1)CO2-EOR(二酸化炭素原油増進回収法)

CO2を地下の油層に圧入することにより、油層内に残る原油の粘性を低下させ、流動性を高めることで、原油回収率を高める技術です。
圧入したCO2のおよそ半分が地中に貯留されるといわれており、「CCS:Carbon Capture and Storage」の切り札として導入が進んでいます。

CO2を地下の油層に圧入することにより、油層内に残る原油の粘性を低下させ、流動性を高めることで、原油回収率を高めます。

(2)産業排ガスからのCO2分離

カーボンニュートラルの観点からも、工場などから排出される産業排ガスを回収する技術が今後ますます重要になってきます。ただし、産業排ガスはガスの圧力が他の用途と比較しても低いため、より圧損が低く、透過量の高さや最適なプロセス設計が重要なカギを握ります。日本ガイシでは、工場などから出る産業排ガスに含まれるCO2の分離に適用可能な、産業排ガス向けCO2分離膜の開発にも、力を入れています。

  • サブナノセラミック膜での分離には導入側と透過側に一定の分圧差が必要です。
工場などから出る産業排ガスに含まれるCO2の分離に適用可能な、産業排ガス向けCO2分離膜です。

(3)天然ガスからのN2分離

天然ガスには不純物としてN2が含まれている場合があります。LNGやパイプラインはN2許容濃度が決まっているため、事前にN2を除去する必要があります。現在は巨大な設備と大きなエネルギーを必要とする「深冷分離法」が主流ですが、日本ガイシのサブナノセラミック膜を適用することで、コンパクトな設備・少ないエネルギーでのN2除去が可能になります。

サブナノセラミック膜を適用することで、コンパクトな設備・少ないエネルギーで天然ガスからN2を除去できる可能性があります。

(4)有機溶媒からのH2O分離

サブナノセラミック膜は脱水用途にも適用可能です。例えば有機溶媒からの脱水は、現在は、熱を加えて、沸点の差を利用して分離する「蒸留法」が主流ですが、日本ガイシのサブナノセラミック膜を適用することで、加熱にかかるエネルギーの削減や、設備のコンパクト化が期待できます。

有機溶媒からの脱水にサブナノセラミック膜を適用することで、加熱にかかるエネルギーの削減や、設備のコンパクト化が期待できます。

(5)膜反応器へのサブナノセラミック膜の適用

CO2からの燃料合成など、反応が進みにくいようなプロセスでは、反応場から一部の生成物を引き抜き化学平衡をずらすことで、反応を進めることが可能です。化学プロセスは、高温、高圧環境下であることが多いため、膜を使用して反応場から生成物を引き抜く膜反応器は、サブナノセラミック膜の新たな適用分野として期待されています。

サブナノセラミック膜を使用して反応場から生成物を引き抜く膜反応器としての適用が期待されています。

サブナノセラミック膜の種類と分離特性

日本ガイシのサブナノセラミック膜の種類と分離特性についてご紹介いたします。

サブナノセラミック膜の種類と適用例

  膜種 適用先の例 分離対象の例
ガス分離 DDR型ゼオライト膜 CO2-EOR実施油田の随伴ガス中のCO2回収
天然ガス精製
バイオガス精製
CO2/CH4
天然ガスからのHe回収 He/CH4
化学プロセス等での分離
反応ガスからの水素回収
CO2/H2
H2/エタン
H2/CH4
H2/メチルシクロヘキサン
各種ゼオライト膜 天然ガス精製
LNGボイルオフガスからのCH4回収
N2/CH4
MFI型ゼオライト膜 産業排ガスからのCO2回収 CO2/N2
脱水 DDR型ゼオライト膜
LTA型ゼオライト膜
各種有機溶媒からの脱水
エステル合成プロセスでの脱水
使用済み有機溶媒のリサイクル
膜反応器(メンブレンリアクター)での脱水
水/アルコール
水/ケトン
水/エーテル
水/エステル
水/芳香族

サブナノセラミック膜の混合ガス分離特性

膜種 混合ガス組成
[数字はmol%]
試験条件 性能
供給圧力
[MPaG]
供給温度
[℃]
透過ガス組成
[数字はmol%]
分離係数
[-]
DDR型ゼオライト膜 CO2 : CH4 = 50 : 50 0.3 25 CO2 > 99 >160
H2 : CH4 = 60 : 40 0.4 25 H2 > 99 >100
CO2 : H2 = 40 : 60
0.4 25 CO2 > 87 >10
N2分離用ゼオライト膜 N2 : CH4 = 50 : 50 0.4 25 N2 > 96 >30
  • 分離係数 = 透過ガス成分比 / 供給ガス成分比

サブナノセラミック膜の各種有機溶媒からの脱水性能

膜種 有機溶媒 試験条件 脱水性能
供給液
有機溶媒濃度
[wt%]
供給液
温度
[℃]
透過側
真空圧
[torr]
水透過速度
[kg/m2h]
透過液
有機溶媒濃度
[wt%]
分離係数
[-]
DDR型
ゼオライト膜
有機酸 酢酸 90 90 50 4.0 <0.5 >1,700
芳香族 フェノール 50 90 50 30.0 <0.01 >10,000
エステル 酢酸エチル 97 70 50 1.5 <0.5 >6,400
アルコール エタノール 90 70 50 1.0 <0.5 >1,700
イソプロパノール 90 70 50 4.0 <0.1 >9,000
n-ブタノール 90 70 50 5.5 <0.1 >9,000
ケトン アセトン 90 50 10 1.5 <0.1 >9,000
エーテル テトラヒドロフラン 90 50 10 3.5 <0.1 >9,000
LTA型
ゼオライト膜
アルコール エタノール 50 60 50 2.7 <0.01 >10,000
  • 分離係数 = 透過液成分比(水/溶媒) / 供給液成分比(水/溶媒)

サブナノセラミック膜のシステム例

サブナノセラミック膜のシステム例について紹介します。

天然ガスからのCO2分離(DDR型ゼオライト膜)

DDR型ゼオライト膜によって、天然ガスに不純物として含まれているCO2を分離除去することで、膜1段で、メタンロスを抑えながら、高純度のメタンと高純度のCO2を得ることができます。

天然ガスからのCO2分離のシステム例

天然ガスからのN2分離 (N2分離用ゼオライト膜)

N2分離用ゼオライト膜を用いることで、天然ガスに含まれる不純物のN2を分離除去することができます。膜を2段にして配置することで、メタンロスを抑えながら、高純度のメタンを得ることができます。

天然ガスからのN2分離のシステム例

バイオガス精製(DDR型ゼオライト膜)

バイオマスからつくられるバイオガスには、メタンとCO2が含まれています。バイオガスに含まれているCO2の分離除去にも、DDR型ゼオライト膜を使用できます。膜を2段にして配置することで、高純度のメタンと高純度のCO2を得ることができます。

バイオガス精製のシステム例

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