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カーボンニュートラルおよびCO2排出量削減に寄与する分離膜の適用例

カーボンニュートラルおよびCO2排出量削減に寄与する膜分離プロセス

サブナノセラミック膜は分離プロセスの省エネルギー化を可能とし、カーボンニュートラルおよびCO2排出量削減に貢献します。例えば有機溶媒と水の分離において、従来の蒸留法では加熱に大量のエネルギーを必要とするのに対し、サブナノセラミック膜を用いた分離では加熱にかかるエネルギーを低く抑えることができるため、分離プロセスの省エネ化に貢献します。その他にもCO2やH2、N2、CH4などを対象としたガス分離用途での導入も可能であり、以下の用途での使用を期待されています。

(1)CO2-EOR(二酸化炭素原油増進回収法)

CO2-EORとは、CO2を地下の油層に圧入することにより、油層内に残る原油の粘性を低下させ、流動性を高めることで原油回収率を改善する技術です。油層に圧入されたCO2の一部は地中に貯留されるため、原油の生産と同時に、「CCS:Carbon Capture and Storage」による温室効果ガスの排出削減を期待できる点が注目されています。高圧、高CO2濃度の運転環境下でもCO2を効率良く回収・再利用できるサブナノセラミック膜により経済的なCO2-EOR事業を実現し、私たちの社会活動に不可欠なエネルギー資源の確保と、地球温暖化抑制の両立に貢献します。

CO<sub>2</sub>を地下の油層に圧入することにより、油層内に残る原油の粘性を低下させ、流動性を高めることで、原油回収率を高めます。

(2)産業排ガスからのCO2分離

カーボンニュートラルの観点より、工場などから排出される産業排ガスからCO2を回収する技術が今後ますます重要になってきます。ただし、産業排ガスは圧力が低いため、より圧力損失が低く透過量が大きいCO2分離膜の開発や最適なプロセス設計が重要なカギを握ります。日本ガイシでは、産業排ガスに含まれるCO2の分離に適用可能な、産業排ガス向けCO2分離膜の開発にも、力を入れています。

膜での分離には導入側と透過側に一定の分圧差が必要です。

工場などから出る産業排ガスに含まれるCO<sub>2</sub>の分離に適用可能な、産業排ガス向けCO<sub>2</sub>分離膜です。

(3)天然ガスからのN2分離

世界に広く分布する天然ガス田には、不純物として窒素(N2)が含まれている場合があります。パイプライン輸送や液化天然ガス(LNG)製造プロセスに適する高品質な天然ガスを得るためには、N2を除去する必要があり、現在は巨大な設備と大きなエネルギーを必要とする「深冷分離法」が主流です。一方で、日本ガイシのサブナノセラミック膜は、巨大な設備と大きなエネルギーを必要とせず、コンパクトで環境負荷の低いN2除去プロセスを実現できます。石炭や石油に比べて環境負荷の低い天然ガスの利用を促進することで、低炭素社会の実現に貢献します。

サブナノセラミック膜を適用することで、コンパクトな設備・少ないエネルギーで天然ガスからN2を除去できる可能性があります。

(4)有機溶媒からのH2O分離

サブナノセラミック膜は脱水用途にも適用可能です。現在、有機溶媒からの脱水プロセスには沸点の差を利用して分離する「蒸留法」が主流ですが、加熱のため多くのエネルギーを要します。日本ガイシのサブナノセラミック膜は、蒸留法と比較して加熱にかかるエネルギーが削減されるため、CO2削減やカーボンニュートラルに貢献します。特に、沸点の差がなくなる共沸物質や還流比の大きい物質の脱水に大きな効果を発揮します。

有機溶媒からの脱水にサブナノセラミック膜を適用することで、加熱にかかるエネルギーの削減や、設備のコンパクト化が期待できます。

(5)膜反応器へのサブナノセラミック膜の適用

膜反応器はサブナノセラミック膜の新たな適用分野として期待されています。CO2からの燃料合成など反応が進みにくいようなプロセスでは、反応場から一部の生成物を引き抜き化学平衡をずらすことで、反応を進めることが可能ですが、その化学プロセスは高温・高圧環境下であることが多いため多くのエネルギーを要します。一方でサブナノセラミック膜を用いた膜反応器は、低エネルギーで反応場から生成物を引き抜くことが可能となり、CO2削減やカーボンニュートラルに貢献します。

サブナノセラミック膜を使用して反応場から生成物を引き抜く膜反応器としての適用が期待されています。

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