研究開発

研究開発本部長インタビュー

研究開発の方針

技術の先進性を高め、新製品を継続的に創出

日本ガイシ株式会社 研究開発本部長の七瀧 努の写真です。
研究開発本部長 七瀧 努

ファインセラミックスを中心とした材料技術やプロセス技術の先進性を高め、競争力のある新製品を継続的に創出し続けることが、研究開発本部の基本方針です。重要なのは、筋の良いシーズを早期に見つけ出し、リソース配分を集中させること。世の中の動きを俯瞰し、何が必要なのかを考え抜く。実現できれば世界を変えるような差別化技術に徹底的にこだわり、時には10年以上かけてでも粘り強く挑み続ける。そうして結晶配向※1、異種材積層※2、水熱合成※3といった得意技術を生かし、かつてない製品を世に送り出し続けてきました。

新製品の開発期間は短いものでも3年程度、長いものでは10年以上ですが、なかなか完成に至らない研究でもあきらめることはありません。開発期間が長いものについては、開発委員会で毎年経営層に説明し取捨選択されるのですが、大島社長は「できないことにチャレンジするのが研究開発だ」と言っています。挑戦しやすい土壌があるのが、NGKグループの研究開発の強みです。

  • ※1 結晶配向技術:多くの結晶からなるセラミックスにおいて結晶方向をそろえて高性能を引き出す技術
  • ※2 異種材積層技術:異なるセラミック材料を、貼り合わせたり、焼き固めたりして一体化させる技術
  • ※3 水熱合成技術:高い温度で焼き固めるのではなく、高圧の熱水の中でセラミックスを形成する技術

最近の成果

過酷な高温環境に耐える、新たなEnerCeraの開発へ

この5~6年内に、製品化にこぎつけた研究開発本部発の新製品が4つあります。SAWフィルター用複合ウエハー、紫外LED用マイクロレンズ、レーザー光源用窒化ガリウム(GaN)ウエハー「FGAN」、チップ型セラミックス二次電池「EnerCera(エナセラ)」です。いずれも成長軌道に乗りつつあり、特にEnerCeraは、幅広い分野でさまざまな使い方が期待できることから、2019年に事業化した後、事業部と共同で製品マーケティングに力を入れています。

当社グループがこれまで扱ってきた製品のような、特定のお客 さまを個別訪問してご意見をうかがうといったマーケティングだけでは不十分と考え、専門誌への広告出稿、特設ウェブサイトの開設、メールマガジンの発行など、潜在顧客に広くアプローチしコンタクトをいただける形を作っています。期待通り、ワールドワイドでさまざまな業界のお客さまから相当数のご意見やご指摘をいただき、手応えを感じています。マーケットが何を要求しているのかが、明確に見えてきました。

それらの情報を踏まえ、現在、より厳しい高温環境にも耐える新たなEnerCeraの開発を進めています。自動車のタイヤに設置するセンサーの電源や、産業用FA機器のバックアップ電源用途では、さらに高い温度への耐性が求められます。サンプル出荷を開始しており、2020年9月からは量産を開始する予定です。

将来に向けて

安全で高性能なオールセラミックス電池(全固体電池)の実現を目指す

新しい価値の創造を目指し、継続的に新製品を開発していくことが、研究開発本部の目標です。まずは次の2~3年で、亜鉛二次電池「ZNB」と、CO2分離用大型セラミック膜を事業化したいと考えています。

ZNBはリチウムイオン電池並みに高性能な電池ですが、電解質が水溶液で燃えないため安全性が極めて高いことが最大の特長です。当社グループ開発品は、第三者機関による試験で熱暴走や発火が不発生である高い安全性能が実証された結果、蓄電池分野で世界初のUL検証マーク※4を取得しました。産業用バックアップ電源に使われていた鉛電池の置き換えにも使えます。現在、オフピークに貯めた電気を日中に使う「ピークカット」の実証実験を清水建設と共同で、成蹊学園キャンパス内にて行っており、電力コストの削減効果を検証しています。

一方のCO2分離用大型セラミック膜は、石油採掘の際に原油の粘度を下げるために圧入したCO2を分離・回収し、再圧入に用いるためのものです。2020年度には米国・テキサス州で実証実験が始まります。カーボンニュートラルの実現に貢献できる製品であり、2~3年のうちに事業化したいと思います。また、この技術を発展させることにより、工場排ガスなどから直接CO2を分離する取り組みも始めます。少し時間がかかるかもしれませんが、将来が非常に楽しみです。

並行して、FGANの新規展開も進めていきます。現状の製品はウエハー直径が2インチですが、結晶育成技術の改良により、他社に先駆けて4~6インチへと大型化するめどが立ちました。既にサンプル出荷を始めており、数年後にはパワー半導体用途で製品化したいと思っています。

また、5~6年先を見据えた開発として、全固体電池にも取り組んでいます。この分野では、電解質に硫化物を使うタイプの電池が実用化に近づいていますが、硫化物は空気中の水分と反応すると猛毒の硫化水素が発生します。我々が取り組んでいるのは、より安全 な酸化物系セラミックスを使った「オールセラミックス電池」です。酸化物系セラミックス電解質はイオン伝導性が低いため、世界でもあまり開発事例はありませんが、EnerCeraの半固体電池の技術を発展させ、NGKグループならではの高性能かつ安全な電池を目指します。

  • ※4 米国の第三者安全科学機関「Underwriters Laboratories(UL)」が厳しい安全試験・評価を経て発行する、安全性に関する検証マーク。有効期限は2020年10月まで

(インタビューは2020年5月に実施)