研究開発

研究開発本部長インタビュー

研究開発の方針

「独自のコア技術」に今後もこだわる

日本ガイシ株式会社 研究開発本部長の七瀧 努の写真です。
常務執行役員 研究開発本部長
七瀧 努

NGKグループビジョンによりグループの新たな道を示しましたが、「ファインセラミックスを中心とした材料技術やプロセス技術の先進性を高め、競争力のある新製品を継続的に創出し続ける」という従来の研究開発方針には変わりはありません。将来、ガソリン車など内燃機関自動車関連事業がピークアウトした際、カーボンニュートラルとデジタル社会分野で成長していけるような製品を出し続けることが、研究開発本部の責務です。

今後も注目される事業分野は激しく変わり、市場における技術革新も加速しています。そうした状況に対応するためには、研究開発テーマを増やして研究開発スピードを加速することに加え、オープンイノベーションの推進が必要です。一方で、当社最大の強みである「独自のコア技術」には今後もこだわり続け、時間を掛けてでも開発を進めていきます。

最近の成果

EnerCeraの量産、FGANのサンプル出荷が開始

2020年度の研究開発成果の一つがチップ型セラミックス二次電池「EnerCera(エナセラ)」です。多機能クレジットカードや自動車用カードキー用に、薄くて柔軟性のあるパウチ型の採用が決まり、量産を開始しました。このほか、各種スマートカード、物流用ICタグなどのIoTデバイス、ウエアラブルデバイスなどでも順次採用される見込みです。105℃の温度に耐えられるコイン型も2021年度第1四半期より量産を開始しており、さらに125℃の温度にも耐えられるラインアップも、2022年度中には量産に移行していきたいと思います。並行して、ICメーカーやデバイスメーカーと連携して電源システムなどを開発し、共同でIoTデバイスなどの最終メーカーへの売り込みも図っていきます。

製品化済みの「SAW(表面弾性波)フィルター用複合ウエハー」の技術を応用した新規複合ウエハーも、5G通信向けの新型SAWフィルター用や、光ネットワーク/データセンター向け光デバイス用に開発を進めており、来年度には量産を計画しています。

レーザー光源用として製品化した窒化ガリウム(GaN)ウエハー「FGAN」については、より市場の大きいパワー半導体用途でサンプル提供を開始しました。高周波用4インチウエハーと大電力用の6インチウエハーの二種類で、今後、お客さまであるこれらデバイスメーカーとの緊密な協業により、開発を進めていきます。

また、CO2の分離・回収が可能な「サブナノセラミック膜」の実証実験も、アメリカ・テキサス州の油田で進めています。この技術を発展させることにより、発電所や工場から排出されるCO2の回収も可能となるため、カーボンニュートラルの大きなビジネスに成長する可能性を秘めています。

New Value 1000

新事業化製品で売上高1,000億円を目指す

NGKグループビジョンの実現に研究開発分野から貢献していくために、「New Value 1000」という目標を掲げました。2030年に新事業化品売上高1,000億円以上を目指すとともに、研究開発費を10年間で3,000億円に増額し、その8割をカーボンニュートラルとデジタル社会関連に配分するというのが骨子です。

カーボンニュートラルについては、CO2の回収・有効利用・貯留を実現するサブナノセラミック膜や、再生エネルギー活用に向けた亜鉛二次電池「ZNB」などの各種蓄電池に加え、回収CO2と水から高効率で燃料・原料を合成するためのキーとなる固体酸化物形電気分解セル(SOEC)の開発を進めます。また、EV用電源などに用いられ、大幅な省エネルギーを実現するパワー半導体に関連して、前述のFGANの高性能化による用途拡大を進めるとともに、熱伝導率の高い窒化ケイ素(SiN)材料を用いた絶縁放熱回路基板を開発していきます。

デジタル社会関連では、EnerCeraの用途拡大・拡販に加え、光コンピューター、量子デバイス等の新しい用途に向けた新規複合ウエハーを開発。市場規模が大きい半導体製造装置用サセプターの次世代品や、自動運転用途などのセラミックパッケージにも力を入れていきます。

これらの開発において最も重要なのは、NGKグループならではの独自技術での差別化ができていることです。独自技術に関しては時間を掛けてでも開発を進める一方で、研究開発全体についてはスピードアップを図る必要があります。

今後の施策

危機感を持って技術を高め、競争力のある新製品を

そこで現在注力し始めているのが、マテリアルズ・インフォマティクスと呼ばれる開発手法です。蓄積された実験データをデータベース化し、AIによる解析を行うことで、短期間で革新的なセラミック材料の開発につなげることを目指しています。NGKグループの過去100年間の実験データの蓄積を活用できることが大きな強みです。これら実験データの電子化は終えており、今後、解析に適した構造化データへの変換を行います。研究開発本部だけでなく、製造技術本部や新設のDX推進統括部も参加した全社プロジェクトとして進め、まずは1~2年で効果を確認。10年掛けてでも技術を確立します。この手法は、有機材料では活用が始まっていますが、セラミックスでの活用には不明な点も多く、大きな挑戦になりそう

また、オープンイノベーションを進めていくことも重要です。まずは大学や研究機関との共同研究を現状の20数件から倍増させ、外部からの技術導入や、EnerCeraのようなデバイス開発を手掛ける企業との共同開発も進めます。そうした開発のために本社に設けているコラボレーション施設「ID-Room」を、他の拠点に展開することも検討しているほか、2021年4月からは、名古屋工業大学と共同で「日本ガイシ 革新的環境イノベーション研究所」を、名古屋市の同大学キャンパスに設立。次世代パワー半導体材料や高性能蓄電池材料など、革新的な次世代製品の創出に取り組み始めました。

研究開発人員の増強も積極的に進めていきます。これまでの開発では、研究開発部隊がプロトタイプを完成させた後、生産技術部隊がパイロットプラント設計に着手することが通例でした。今後、手戻りなく効率的に量産化するために、製品設計とものづくりの両方に精通した人材が、基本プロセス設計から開発に参加するプロジェクト体制を推進していきます。

(インタビューは2021年5月に実施)