製品情報

亜鉛二次電池「ZNB」が蓄電池分野で世界初のUL検証マークを取得
独自のセラミック技術により屋内設置に適した安全で大容量の蓄電池を実現

2019年11月19日

日本ガイシ株式会社(社長:大島卓、本社:名古屋市)が開発中の亜鉛二次電池「ZNB」がこのたび、米国の第三者安全科学機関であるUL(本社:イリノイ州ノースブルック)による「UL9540A」規格に基づく試験の結果、蓄電池分野で世界初のUL検証マークを取得しました。UL9540Aは蓄電池システムの熱暴走火災伝播に関する評価試験規格で、ULによる客観的で再現性の高い検証によりZNBの高い安全性能が実証されました。

 当社が開発中のZNBは、負極に亜鉛、電解液に水溶液、正極と負極を隔てるセパレータに当社独自のセラミックセパレータを使用することで、屋内設置に適した高い安全性と大容量を実現した蓄電池(二次電池)です。
 
 亜鉛を負極に用いた電池はエネルギー密度が高いことから、アルカリ乾電池や補聴器用の空気電池など使い切りの一次電池として広く利用されていますが、二次電池として利用する場合、充電時に負極から亜鉛が樹状析出(デンドライト)し、セパレータを貫通して短絡するという問題により長年実用化に至っていませんでした。当社は独自技術で新規開発した緻密な水酸化物イオン(OH)伝導性セラミックスをセパレータに用いることでこの問題を解決し、亜鉛二次電池の開発に成功しました。当社が開発したセラミックセパレータは、電池動作に必要なOHだけを選択的に通し、デンドライトを物理的にブロックすることで正負極間の短絡を防止し、繰り返し充放電することを可能にしました。セラミック製のセパレータを亜鉛二次電池に使用するのは世界で初めてです。

 ZNBはエネルギー密度が高くコンパクトに設置でき、常温での電池動作が可能なうえ、電解液に不燃性の水溶液を使用していることから内部発火や熱暴走するリスクがないため、非常に安全性が高く、屋内設置にも適しているのが特長です。学校や病院、コンビニエンスストアを含む商業施設、通信基地局や通信ビルなどBCP(事業継続計画)対策が重要な施設では、高い安全性と大容量を兼ね備えた蓄電池が強く求められており、ZNBはこれら施設での採用を想定しています。

 UL9540Aは、ULが米国の消防・防災団体の要請に基づいて、蓄電システム内で万が一熱暴走が発生した時の事象を確認するための試験方法を定めた規格で、厳しい安全基準を求める米国だけでなく、現在では世界的に高い信頼を得ています。UL9540Aの試験は、発火、有炎燃焼、破片飛散、発煙、可燃性ガスの発生に伴う危険性の確認を目的とするものです。ZNBは、UL9540Aの試験方法に基づくセル(※)レベルの表面加熱、過充電、過放電、釘刺し試験の結果、熱暴走および発火が発生しないことが確認されました。これにより当社は、屋内など高い安全性が求められる場所での設置に適している製品として訴求していきます。

 再生可能エネルギーの有効活用や電力のピークカット、災害時の電力確保やBCP対策への関心の高まりを背景に近年、蓄電システムの需要拡大が見込まれています。当社は2015年から高度な火災安全性能、大容量、長寿命を特長とするZNBの開発に取り組んできました。2016年には研究開発部門に加え製造技術や営業部門、知的財産部、資材部などが参加する全社横断プロジェクト「セラミックス電池プロジェクト」を発足し、早期事業化を推進しています。当社はこのたびのUL検証マーク取得を機に開発・実証をさらに加速させ、2020年度に事業化する計画です。

  • セル:蓄電システム内に搭載される電池の最小単位。単電池。

<亜鉛二次電池「ZNB」の特長>
高い安全性:
 電解液に可燃性の有機溶剤を使用せず水溶液を使用するため、安全性が高く設置場所を選ばない。
大容量:
 定置型リチウムイオン電池と同等の体積エネルギー密度を実現。
 (電池の体積1リットル当たり200ワット時程度)

ZNBのセル(前)とモジュール電池
ZNBのセル(前)とモジュール電池
緻密な構造のセラミックセパレータが、OH-を通しつつも物理的に亜鉛の貫通を阻止
緻密な構造のセラミックセパレータが、OHを通しつつも物理的に亜鉛の貫通を阻止
UL検証マーク
UL検証マーク

ZNBのUL検証マークの詳細

ULについて
ULは、科学の活用によって安全、セキュリティ、サステナビリティ(持続可能性)における課題を解決し、よりよい世界の創造に寄与します。そして、先進的製品/技術の安全な導入を実現することで、信頼を高めます。ULのスタッフは世界をより安全な場所にするという情熱を共有しています。第三者調査から規格開発、試験、認証、分析/デジタルソリューションの提供まで、ULは業務を通じて、より健全なグローバル社会の構築を目指します。ULに対する信頼が、企業、メーカー、政府当局、規制機関、人々のスマートな決断を支えます。

ULについて

UL Japanについて
株式会社UL Japanは、世界的な第三者安全科学機関であるULの日本法人として、2003年に設立されました。現在、ULのグローバル・ネットワークを活用し、北米のULマークのみならず、日本の電気用品安全法に基づく安全・EMC認証のPSEおよびSマークをはじめ、欧州、中国市場向けの製品に必要とされる認証マークの適合性評価サービスを提供しています。

UL Japanについて

以上

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