気象条件の良い時に発電。蓄電して安定供給
「2050年脱炭素社会の実現」をめざして、太陽光や風力など再生可能エネルギーを活用した発電の普及が、いまや待ったなしの課題となっています。
一方、台風や大地震によって起きた広域停電は、大規模・集中型電力供給システムの脆弱性を浮き彫りにしました。地域ごとの再エネ電力による、災害に強い地域密着型電力供給システムの構築が必要とされています。再エネは、脱炭素社会の主力電源であると同時に、地域密着型電力供給システムの主役でもあります。
しかし、太陽光発電や風力発電は天候に大きく左右されます。安定した電力供給には、気象条件の良い時に発電した電力をいったん蓄え、必要に応じて供給するしくみが不可欠です。再エネ電力の需給調整になくてはならないのが、信頼性の高い大容量蓄電システムです。
世界初、メガワット級の大容量蓄電を実現
世界で初めてメガワット級の大容量蓄電を実現させた電池があります。それがNAS(ナス)電池です。NAS電池は、負極がナトリウム(Na)、正極が硫黄(S)で、βアルミナのセラミック固体電解質を介して充電と放電を繰り返します。
NAS電池の単電池
NAS電池は長寿命でエネルギー密度が高いため、メガソーラーに併設すれば、発電装置の耐用年数を十分にカバーする安定した電力供給が可能になります。
大容量蓄電池で電力供給を安定化
再生可能エネルギーは出力変動が大きい
NAS電池の充放電で電力量を安定化
NAS電池で電力地産地消や需給市場対応も
自治体が電力会社を設立して地域に電力を供給する、大規模工場が自前の太陽光発電で必要電力を調達するなど、NAS電池の支えがあれば、電力の地産地消が実現します。電気がこない僻地でも、太陽光や風力を利用した電力の安定供給が夢ではありません。
再エネ普及を後押しし、電力需給をバランスする方策として、電力の需給調整市場が開設され、小規模発電による余剰電力を束ねた管理や売買ができるようになりました。これをきっかけに大容量蓄電システムの必要性が高まるとともに、NAS電池の出番がますます増えそうです。
※「NAS」は日本ガイシの登録商標です
NAS電池
ライター
古郡 悦子ふるこおり えつこ
科学技術ジャーナリスト
東京大学理学部化学科、教養学部教養学科を卒業。製薬会社に勤務するかたわら、科学雑誌に記事を書くようになり、研究者や技術者を取材するワクワク感にはまった。以来、科学・技術とその周辺について記事執筆、調査、企画、編集などを手がける。MIT科学ジャーナリズムフェロー、サイテック・コミュニケーションズ創業メンバー。