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2023年度中期経営方針

会社の経営の基本方針

当社グループが掲げる「NGKグループ理念」と「NGKグループビジョン Road to 2050」は以下の通りです。

NGKグループ理念

私たちの使命
「社会に新しい価値を そして、幸せを」

私たちが目指すもの
「人材 挑戦し高めあう」
「製品 期待を超えていく」
「経営 信頼こそが全ての礎」

NGKグループビジョン Road to 2050

2050年の未来社会を見据え、カーボンニュートラルの実現とデジタル社会への爆発的進化という大きな流れを新たな発展機会と捉え、①ESG経営の推進、②収益力向上、③研究開発への注力、④商品開花への注力、⑤DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進の5つの変革に取り組み“Surprising Ceramics.”をスローガンに当社独自のセラミック技術を生かし、「第三の創業」に向けて事業構成の転換を図ってまいります。

主要な経営指標と資本政策

当社グループは、自己資本利益率(ROE)を主要な経営指標とし、資本効率を重視した経営を推進しております。関連性の高い投下資本利益率(NGK版ROIC)を管理指標に採用し、投下資本の代わりに事業資産(売掛債権、棚卸資産、固定資産)、税引後利益の代わりに事業部門の営業利益を用いることにより、事業部門が自ら目標管理できるようにしております。中長期の観点でROE10%以上の水準を意識し、持続的な企業価値の向上に資するよう事業リスクの変化に適合した資本政策を展開します。株主・投資家との透明で適切なコミュニケーションで資本コストの引き下げに努めると共に、これを上回る収益性確保に向けて事業計画の立案や設備投資の意思決定プロセスを回してまいります。また、配当性向及び純資産配当率等を参照して積極的な株主還元に努めます。これらにより財務健全性との両立を図りつつ、ROEを構成する利益率、資本回転率、財務レバレッジを事業戦略と整合した健全な水準に維持することを目指します。
更に、当社の企業価値向上に資する管理指標として、営業利益にCO2排出コストや労務費、研究開発費、ESG目標達成率を加味したNGK版付加価値(NGK Value-added)を導入しております。短期の収益性や中長期の成長性といった「財務価値」に加えて、超長期的に社会性を高めていくために、将来の競争力の源泉となる人的資本や知的資本の向上に継続的に取り組むと共に、環境負荷の低減や人権尊重への取組みなど多岐にわたる社会的責任を果たしてまいります。このような取組みにより「非財務価値」も高めて企業価値を向上してまいります。

中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題

当社グループを取り巻く環境は、ウクライナ情勢の長期化や物価上昇、半導体不足、米中貿易摩擦等の影響により不透明な状況が続くことが予想されます。一方、中長期の観点では、脱炭素社会実現への世界的潮流を背景としたカーボンニュートラル化に加えて、情報通信の高度化や自動運転など社会のデジタル化が進むと想定しております。当社グループは社会に新しい価値を提供する企業を目指し、NGKグループビジョンにおいて「独自のセラミック技術でカーボンニュートラルとデジタル社会に貢献する」ことをありたい姿として定め、その実現に向けて「5つの変革」を推進しております。当社グループの基幹事業である自動車関連製品は電動化の進展により縮小していく懸念はありますが、2050年の未来社会に向けて、カーボンニュートラルやデジタルソサエティ関連の製品を拡大させ、事業構成の転換を着実に進めるべく、「ESG経営の推進」と「既存事業の収益力向上と新規事業の創出」を図ってまいります。

当社グループの重点課題に対する取組みは以下の通りです。

ESG経営の推進

当社グループは、持続的な成長と将来のありたい姿への変容を推進すべく、ESGを経営の中心に位置づけております。当社グループの存在目的は製品やサービスを通じた社会課題の解決であり、事業活動の根幹である「環境」「社会」「ガバナンス」への取組みは、長期の成長に不可欠な重要課題です。当社グループは海外19カ国で37のグループ会社(うち製造会社19社)がビジネスを展開しており、これら課題への対応と経営の透明性・自律性を高めるべく、グループで働く全員が公正な価値観や国際的な水準の判断基準に従って行動できるよう環境整備を進めております。社長を委員長とする「ESG統括委員会」のもと、経営レベルでESG要素を始めとする当社グループのサステナビリティ課題への取組みを、取締役会が適切に監督してまいります。

環境(E)

当社グループは、2050年までにCO2排出量ネットゼロとする目標を掲げ、カーボンニュートラル、循環型社会、自然との共生への寄与を骨子とした「NGKグループ環境ビジョン」を策定し、具体的な行動計画として「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」と環境5カ年計画を定め、その実現を目指しております。2025年度はScope1及びScope2におけるCO2排出量を55万トン(2013年度比25%削減)、マイルストーン(中間目標)とする2030年度には同37万トンの排出量(同50%削減)とする目標を設定しており、実現のための取組みの一つとして2025年度までに海外拠点で使用する電力の全量を再生可能エネルギー由来に切り替え、国内外の製造拠点に合計40メガワットの太陽光発電設備の導入を計画しております。また、目標達成を前倒しで実現すべく、水素やアンモニアなどカーボンニュートラル燃料によるセラミックス焼成設備や、CO2分離膜やDAC(Direct Air Capture)などCCU・CCS(CO2の回収・利用・貯蔵)関連技術の開発に着手しており、当社グループ内での実証・適用を進めるほか、カーボンニュートラル関連製品・サービスの開発にも取り組んでまいります。2022年11月には一昨年に続き2度目のグリーンボンド(無担保社債)を発行しました。環境効果のある製品・サービスの提供、自社の事業活動・生産活動におけるカーボンニュートラルへの取組みなどを加速してまいります。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)については、「ガバナンス」「戦略」「リスクマネジメント」「指標と目標」の4項目に沿ったシナリオ分析結果に関する情報を当社ウェブサイトに公開しております。今後も社会的な要請に遅れることなく関連情報の開示を拡充してまいります。

社会(S)

当社グループは、自社及びサプライチェーンにおける人権を尊重する取組みを展開することで、事業活動が影響を及ぼす全ての人々の人権が侵害されることのない社会づくりに貢献します。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、「NGKグループ人権方針」を定めたほか、英国現代奴隷法に関する声明を開示、また「子どもの権利とビジネス原則」を支持し事業活動において子どもの権利を尊重し、子どもの権利の推進に向けた社会貢献活動等に取り組むことを宣言しております。
当社グループにおいては、NGKグループ理念で「人材」を私たちが目指すものの出発点と位置付けており、NGKグループビジョンで掲げる「5つの変革」に不可欠な人材の育成と、多様な人材が全力で取り組むための舞台として、挑戦と変革を後押しする職場の実現に取り組みます。当社では、自律的な成長に取り組むことが出来るような多様なキャリアパスの提供や、テレワーク活用といった柔軟な働き方、長時間労働の削減を中心とする社内環境整備などの施策にも取り組んでおります。女性活躍については、新卒採用に占める女性比率の数値目標を設定すると共に、配属先・異動先での職域拡大を図っています。また、育休・産休取得者のキャリア早期再開を促すための早期復職支援制度の導入、育休からの復職者研修の実施、男性育休制度の拡充などの制度面からのアプローチに加えて、仕事と家庭の両立への理解を深めることを目的とした社内講演会を開催するなど、女性が活躍しやすい環境づくりに取り組んでおります。海外人材については、当社グループは従業員約20,000人のうち、約6割が海外に所在しています。グループ運営において、それぞれの地域の事情、文化、習慣に基づく素早く適切な意思決定を行うためには現地人材の活躍が不可欠と考えており、海外拠点の幹部層も現地化するなど、現地人材の積極的な登用に努めております。
当社グループのサプライチェーンにおいては、サプライチェーンを構成する調達パートナーと共に公正・公平な取引を行い、共に繁栄を図るため、「門戸開放」「共存共栄」「社会的協調」を調達の基本方針とした「購買基本方針」を定めており、内閣府、中小企業庁が推進する「パートナーシップ構築宣言」を公表しております。サプライチェーンにおけるCSRへの配慮が社会的要請として高まっていることからCSR調達を推進しており、企業の選定や調達する原材料、利用するサービスについては、「CSR調達ガイドライン」に基づき、CSRに配慮されたものを採用しています。また取引先企業への訪問や実態調査アンケート等を通して、リスク・CSR詳細評価を行っているほか、2022年度はサプライヤーの重要度、事業実態に応じて改善サポートも実施しています。

ガバナンス(G)

コーポレートガバナンスについては、取締役会の更なる機能発揮の観点から、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に資する独立社外取締役を選任し、その数を全取締役の3分の1以上としております。また、経営の透明性を確保し取締役会の監督・監視機能を強化するため、独立社外取締役を過半数として構成する指名・報酬諮問委員会で役員の人事及び報酬決定等に係る公正性の確保及び透明性の向上を図ると共に、社外役員を主要な構成員とし役員等が関与する不正及び法令違反等への対応を取り扱う経営倫理委員会を設置し、取締役会への答申または報告、勧告等を行うこととしております。役員等が関与する不正・法令違反に歯止めをかける仕組みとして、従業員からの相談・報告を受けるヘルプライン制度とは別に、社外弁護士を通じて経営倫理委員会に直接報告するホットライン制度を設置し、経営陣から独立した通報体制を設けるなど、コンプライアンス体制の充実を図っております。また、当社グループで働く全ての人が倫理観を持って正しい事業活動を行うための道しるべとしてNGKグループ企業行動指針を策定しており、その周知徹底に取り組んでおります。さらに様々な領域で取り組むコンプライアンス活動を国際的な水準に照らして評価検証し、共通の理解と価値観に基づき継続的に改善する仕組み作りを行うため、「コンプライアンス活動基本要領」を制定しております。
競争法及び海外腐敗行為防止法などの法令遵守については、継続的な経営トップのメッセージ発信、国内外グループ会社の役員・従業員向けのコンプライアンス教育の実施、国際的な水準に沿った競争法遵守プログラムの運用、「競争法遵守ハンドブック」の活用などにより徹底を図っております。品質コンプライアンスについては、経営トップによる品質活動や品質委員会の直接指導の実施などの仕組みを強化すると共に、経営層及び従業員に対する品質教育の徹底など企業体質の改善に取り組んでおります。労働環境の安全面では、国内外グループ会社のリスクアセスメントの推進による重大災害リスクの特定と未然防止対策の強化に加え、グループ全体の現場マネジメント力の強化を図り、業務災害リスクの低減に取り組んでまいります。リスクマネジメントについては、経営レベルの視点から重要と考えるリスクを事業環境、戦略、内部要因に分類し継続的に見直しを行っております。当社グループのサステナビリティ課題を含む個別のリスク事項については、各種の委員会を設置してリスク管理を行っておりますが、国内外の環境変化が加速する中、部門を横断し全社視点で取締役会につながる統合的なリスク管理の仕組みを構築するため、2023年度より社長直轄の統括委員会として「リスク統括委員会」を設置しております。

既存事業の収益力向上と新規事業の創出

当社グループは、全社の視点から企業価値を高めるために事業ポートフォリオ方針を定め、NGK版ROICを用いた収益性と、売上高成長率を用いた成長性の二軸で精査しております。コア事業や今後の成長が期待される事業群への経営資源の投入を検討するほか、低成長・低収益に区分される事業については、今後の事業継続の判断において単年度及び中期的な経営計画に基づく計数面での評価に加えて、長期的な視点での成長可能性、収益性等を個別に社内の戦略会議等で議論し、経営に関する重要な事項として取締役会が監督してまいります。また、設備投資の意思決定にあたっては、個別の投資の回収期間のほか、NGK版ROICや2022年度より導入したインターナルカーボンプライシング(ICP)を用いたESG視点での価値評価も考慮し判断してまいります。さらに利益の追求と将来の企業価値の源泉となる人的資本や知的資本への投資を両立させ、同時に環境負荷の低減や人権尊重への取組みなどサステナビリティに関する取組みも総合的に評価するため、管理指標として営業利益にCO2排出コストや労務費、研究開発費、ESG目標達成率を加味したNGK版付加価値(NGK Value-added)を導入しております。これにより、短期の収益性や中長期の成長性といった財務価値に加えて財務諸表に表れない非財務価値を高めて、企業価値向上につなげてまいります。

各事業の収益性改善に向けて、世界的なインフレに伴う費用増を適切に価格に転嫁していくほか、収益力をさらに高めるべく「モノづくり∞(チェーン)革新」を進めております。モノづくりチェーンにおける理想と現状のギャップを埋める「生産革新活動」、工場単位のロス削減により製造原価を改善する「原価低減活動」を柱とし、デジタル技術の活用によりモノづくりの見える化とグローバル連携を進め、競争力強化につなげてまいります。また、将来に向けた企業変革を遂げるべく、2022年4月に「NGKグループデジタルビジョン」を公表し、2030年までの推進ロードマップに沿ってDXを強力に推進しております。全社横断的な部門であるDX推進統括部を核として、「人材」(社内におけるDX啓蒙活動やリテラシー向上に向けたDX人材の育成)、「デジタル」(デジタル利活用基盤の構築、次世代技術の開発、強固なITセキュリティー)、「組織・風土」(ビジョン策定による経営層コミットメント、グローバルでの連携・推進、グループ全員の意識改革)の3つを柱に、開発、製造、営業、購買をはじめ様々な部門で改善活動を進めております。2023年度はデータ活用の推進及びサプライチェーン・エンジニアリングチェーン連携の加速・強化を図ってまいります。事業構成の転換には新規事業の創出が不可欠であり、その重要施策として、2030年に新事業化品売上高を1,000億円以上とする「New Value 1000」を目標に掲げております。マーケティング機能を主体としたNV推進本部、セラミックス材料技術や要素技術など当社独自の差異化技術を有する研究開発本部、試作・量産技術などモノづくりの製造技術本部の3本部が連携し「研究開発」から「商品開花」へのスピードを高めてまいります。2022年度から、社内の研究開発及び事業化プロセスの全体を統括し、方針策定を担う上位の会議体として開発・事業化委員会を設置しました。2023年度の研究開発費は過去最高の310億円を投じることを計画しており、10年間で3,000億円、このうち8割をカーボンニュートラルとデジタル社会関連に配分し、社会課題の解決に資する将来の有望なテーマに対して重点的に経営資源を投じてまいります。また、開発スピードを上げつつこれまで以上の差異化技術を作るべく、早い段階から製造技術本部を巻き込んだコンカレント開発に取り組むほか、当社が保有する大量の実験データをデータベース化しAI技術を組み合わせるマテリアルズ・インフォマティクスの推進により、短期間で革新的なセラミック材料の開発につなげることを目指します。更には、ベンチャーキャピタルやスタートアップ企業への出資など外部とのアライアンスを活用した新製品・新規事業の創出も積極的に推進し、事業構成の転換を図ってまいります。

セグメント別の重点課題は以下の通りです。

エンバイロメント事業

世界の自動車生産の回復や各国の排ガス規制強化等により、当面は需要拡大に対応しつつ生産性の改善やグローバル生産体制の最適化と安定供給体制の構築により利益最大化を目指します。電気自動車の普及拡大により将来的には内燃機関ビジネスは漸減するものの、短期的には欧州をはじめとする更なる規制強化の対応に向けて、ガソリンセンサーや電気加熱式触媒(EHC)等の新製品の開発スピードを加速させてまいります。また世界的に市場拡大が期待されるカーボンニュートラル関連市場にDACなどCCU・CCS関連製品を展開し、広義に環境関連を包含する事業として、高付加価値品の投入を進めてまいります。

ハニセラムの写真
ハニセラム
DPF/GPFの写真
DPF/GPF
センサー車載用高精度 NOxセンサーの写真
センサー車載用高精度 NOxセンサー

デジタルソサエティ事業

NGKグループビジョンで掲げたデジタル社会関連の事業領域は、経済状況の悪化に伴い短期的には需要が減少するものの、中長期ではIoTや5Gの進展などにより半導体関連や電子部品関連で需要が拡大すると期待されています。半導体製造装置用製品や電子部品関連については、次世代製品の開発や顧客開拓を進めるほか、中長期を見据えた設備投資を進め、拡大する需要に対応していきます。また、チップ型セラミックス二次電池(EnerCera)や絶縁放熱回路基板など新製品の開発を着実に進め、デジタル社会に貢献する製品群の拡大を目指します。

セラミックヒーターの写真
セラミックヒーター
チップ型セラミックス二次電池「EnerCera」の写真
チップ型セラミックス二次電池
「EnerCera」
絶縁放熱回路基板の写真
絶縁放熱回路基板

エネルギー&インダストリー事業

2050年のカーボンニュートラルを目指し、日本では補助金などの再エネ導入に向けた施策も顕在化しており、世界で蓄電池の重要性が高まっております。エナジーストレージ関連では、NAS電池の本格的な需要拡大には暫く時間を要しますが、大容量、長寿命、長時間充放電の特性を生かしたビジネスモデルの構築に取り組んでまいります。NAS電池と独自のエネルギーマネジメントシステム(EMS)を組み合わせることで、NAS電池の容量の有効活用、エネルギーリソース価値の最大化が可能となり、従来の「モノ売り」に加え、サービスや価値を提供する「コト売り」ビジネスへの展開も加速してまいります。がいしは、国内電力会社の設備投資抑制が継続する中、中長期の市場変化を想定して事業の効率化を進めます。また、産業プロセス事業は、耐火物製品や医薬用水設備の収益拡大を図ると共に、CO2分離や水素分離、バイオエコノミーといった社会の環境ニーズに貢献できる製品や設備を投入し、新たなカーボンニュートラル製品の受け皿となる事業領域を目指してまいります。

NAS電池の写真
NAS電池
がいしの写真
がいし
サブナノセラミック膜
サブナノセラミック膜

当社グループは、こうした取組みを通じて経営基盤の更なる強化に努め、資本効率重視、株主重視の経営を継続すると共に、持続的な成長と企業価値の向上を通して将来のありたい姿の実現を目指してまいります。