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いい未来が、見えてきた。2
(Web限定ムービー用代替テキスト)

第1話「もう何も見えない」篇

第1話「もう何も見えない」篇

第1話「もう何も見えない」篇

再生時間 5:12

これは全4話のストーリードラマ「いい未来が、見えてきた。2」
第1話「もう何も見えない」篇、WEB限定ムービーの書き起こしテキストです。

登場人物
濱口アキ:主人公の一人。23 歳(前シリーズでは17 歳)、父の仕事に憧れ、地元を離れ東京の大学に進学した。
友だちとの遊びや動画配信に夢中になり、未来を見失いつつある。高校生の頃に見えていたクロコは、もう見えなくなっていた。
タマミ:アキの大学の友人
エーコ:アキの大学の友人
濱口茂:アキの父親。NGK日本ガイシに勤めており、カーボンニュートラルに貢献するセラミック製品を開発している。
クロコくん:謎の生きもので人々の暮らしや社会を陰ながら支える存在。特にカーボンニュートラルやデジタル機器に関わる場所に多く現れ「未来にいいこと」をしている。
(日本ガイシのキャラクター。舞台を支えるくろこがモチーフ。丸い大きな瞳が特徴。体長は約7.5センチ)

暗い部屋でチャットメッセージを表示するパソコン画面が映る。
画面では、たくさんのロウソクが灯る部屋で3人が語る「恐怖体験3連発」という動画を配信している。
左にアキ、右側にタマミとエーコが座る。
動画の中のタマミが指名する。
「じゃあ、次はアキ!」
動画の中のアキは静かに返事をする。
「はい」
アキは神妙な表情で話し始める。
「あのね、5年くらい前かな、私が高校生の頃の話なんだけど、家で…妖怪を見つけたの」
タマミがアキに問いかける。
「妖怪!?」
アキは答え、そのまま身振り手振りを交えながら、2人に説明する。
「そう。真っ黒で、小さくて、目がこう…ギョロ!ってしてて」
エーコと、タマミが驚く。
「こわっ!」「えぇっ?」
アキが2人に問いかける。
「クロコってわかる?」
タマミは答える。
「わかんない」
エーコは思いついたように答える。
「あっ、あの舞台とかの?」
アキは相槌を打ち、続けて興奮気味に話す。
「そうそう。クロコみたいな格好をした妖怪が、家の中にいっぱいいたの!」
タマミとエーコは思わず声を揃える。
「いっぱい!?」
再び暗い部屋の机の上に置かれたパソコン画面全体が映し出され、動画の音声が流れている。
アキの音声「しかも家だけじゃなくて、街にも、学校にも、とにかく、いろんなところにいるの」
暗く散らかった部屋で、誰かが冷蔵庫を開け、作り置きのお茶を取り出す様子が映る。
タマミの音声「なにそれ…怖っ!」
アキの音声「 パッて見たらここにもいて…目がギョロっとして…」
タマミとエーコの音声「怖い怖い怖い!」
暗いキッチンでお茶をコップに注ぐ様子が映る。
動画の中のアキの映像に切り替わる。
アキの話しは続く。
「なにをするわけでもなく、ただ…走ったり動いたり、なんか遊んだりしてるだけの黒い妖怪」
タマミもエーコも真剣な表情でアキを見つめる。タマミは軽く両耳を塞いでいる。
アキは両腕を抱え込むようにしながら、なおも話し続ける。
「写真に撮っても映らない。でも、確かにそこに存在はしているの。目が合うの…」
タマミが何かに気づいた様子で問いかける。
「えっ?目が合う?」
アキはうなずく。
タマミは笑顔になり、隣のエーコを見ると、2人は続けざまにアキに話しかける。
「かわいいじゃん」「かわいいじゃん」
アキはすかさず反論する。
「いやいや、妖怪なのよ!すごく不可解な存在なのよ!」
エーコがアキに問いかける。
「え、でも何も悪さしないんでしょ?」
アキは首を横に振りながら答える。
「しない」
タマミとエーコが声をそろえて言う。
「かわいいじゃん!」
アキは少し焦った表情で、手振りを交えながら答える。
「いやいやちょっとだから!いっぱいいるんだって!めっちゃ不可解だからね!

暗い部屋の中を歩く人の足元は足の踏み場もないくらい散らかっている。
パソコンから動画の音声が流れている。
タマミの音声「え!?でも遊んだりするだけなんでしょ?」
アキの音声「遊んだりするだけっていうのが不可解じゃない?」
エーコの音声「いやいやいや かわいいでしょ」
タマミの音声「不可解?」
アキの音声「ここにいるのが不可解だよ!」
エーコの音声「えー、でもこれがここでこうしてこうやって遊んでるだけでしょ」
アキの音声「怖いじゃん!」
暗い部屋の中で、パーカーのフードを被った人がパソコンの前に座って背もたれにもたれかかり、コップのお茶を少しずつ口に含んで飲む様子が映る。
動画の中の映像に切り替わる。
動画の中のアキは、5年前に見たクロコに似た妖怪の絵を描いて見せながら熱弁する。
「こんなのが、とにかく至る所にいるの。街中にうじゃうじゃいるの!」
タマミとエーコは、描かれた絵を見て笑いながら声を揃えて答える。
「かわいいじゃん!」
アキは予想外の答えに驚きながら、もう一度クロコの絵をタマミとエーコに向ける。
「いやいや、えっ?これだよ?」
タマミがアキに語りかける。
「いや…かわいいけど、えっ、これなに、今も家にいるの?」
アキが答える。
「うーん、いや、東京に来たばっかりの頃はいたんだけど、最近はぜんぜん見ない」
暗い部屋でフードを被ったアキが座っている様子が映し出される。動画の音声が流れている。
タマミの音声 「えー? つか これのどこが怪談だよ!」
アキの音声「いやだから!怪談だよ。立派な!妖怪…」
アキはパソコンの机に置かれたコップを手に取り、それを一口飲みながら再生されていた動画を止める。
アキは椅子の背もたれにもたれかかり、ため息をつき、パソコンの画面を眺めている。
電気の消えたアキの部屋全体が映ったあと、アキが椅子をゆっくりと半回転させて部屋を見渡す。
いろんな友だちと撮った写真がたくさん貼られたコルクボードの映像に変わり、そこには父と一緒に写った成人式の写真や大学の入学式の写真も貼られている。
アキはコルクボードを見つめながらゆっくりと立ち上がり、「ブランコの座面」だけが写った写真を見ている。

アキの回想シーンが始まる。
高校生のアキが、ブランコの座面の上にいる「クロコくん」の姿をスマートフォンで撮影したときの場面が映し出される。
アキの回想シーンが終わり、再び「ブランコの座面」だけの写真が大きく映し出される。
フードを被ったアキがその写真を見つめる横顔が映る。
アキの回想シーンが始まる。
アキが高校時代に、家の中で「クロコくん」を探していた時の様子が映し出される。
アキが食卓に置かれている折り畳まれた新聞をサッと持ち上げる。すると、リモコンの横に「クロコくん」がいる。
そのあとリビングに駆け入りテレビの後ろをのぞき込むと「クロコくん」がいてアキを見上げる。
アキの回想シーンが終わり、フードを被ったアキのうつろな表情の横顔が映る。
アキは何かを思い出したかのようにゆっくりと振り返り、部屋の脇で雑多にモノが置かれたミニテーブルの前まで歩いていき、テレビ情報誌の束とその上に置かれたリモコンを一緒に持ち上げて確かめるが、「クロコくん」は見あたらない。
今度はミニテーブルの左側にあるテレビの後ろを覗き込んでみるが「クロコくん」は見あたらない。
アキは少し足早にパソコンの机に戻り、椅子を除けて足下にあるデスクトップパソコン本体の横を覗き込んで見ると、そこで「クロコくん」と目が合った。
しかしアキがまばたきをすると、「クロコくん」の姿は無かった。
アキは少し寂しそうな表情で、机の下を覗き込んでいた姿勢からゆっくりと体を起こして正座になると、ふっと息を吐きながら諦めのような笑みを薄っすらと浮かべる。

突然、電話の着信音とバイブが鳴り、アキはスマートフォンを手に取って相手を確認し、電話に出る。
「もしもし」
アキの父「おー、アキ!元気か?」
アキ「元気だよ。なにお父さん、どうかした?」
アキの父「お父さん 今仕事でこっち来ててなー。今から会おう!」
アキ「は!?」
アキの父「ご飯食べたか? 何か買って行くから一緒に食べよう」
アキ「え、ちょちょちょッ、え、い、今から!?」
アキの父「なんだよ、都合悪いのかよ」
アキ「え、いや、都合は別に…大丈夫だけど」
アキの父「もうちょっとで着くから!じゃあな!」
そう言ってアキの父は電話を切り、アキは通話が終わったスマートフォンを見ながら茫然としている。
アキは、パチパチと何度もまばたきをしながら我に返ると、振り返って部屋を見渡す。
アキがつぶやきながら、慌てて散らかった部屋を片付け始める。
「もう!急だなあ!」
すると、部屋のインターホンが鳴る。
「ピンポーン」
アキは驚いた表情で玄関の方を向き、思わず声を出す。
「早っ!!!」

メロディーが流れ始める。
ナレーション(ワタルの声)
「いい未来が、見えてきた」
「サプライジングセラミックス NGK日本ガイシ」
メロディーが流れ終わる。

アキの父がインターホンを押す指が映し出され、2回目のインターホンが鳴る。
「ピンポーン」
アキは集めた衣類を抱えながら、玄関の前で待つ父に向かって大きな声で呼び掛ける。
「はーい。ちょっと待ってー!」
アキは焦りながら、なおも急いで部屋を片付けている。

第2話「5年前の私へ」篇

第2話「5年前の私へ」篇

第2話「5年前の私へ」篇

再生時間 6:55

これは全4話のストーリードラマ「いい未来が、見えてきた。2」
第2 話「5 年前の私へ」篇、WEB限定ムービーの書き起こしテキストです。

登場人物
濱口アキ:主人公の一人。23 歳(前シリーズでは17 歳)、父の仕事に憧れ、地元を離れ東京の大学に進学した。
友だちとの遊びや動画配信に夢中になり、未来を見失いつつある。高校生の頃に見えていたクロコは、もう見えなくなっていた。
小松ワタル:もう一人の主人公。23 歳(前シリーズでは17 歳)、日本ガイシに就職した1年目の新人。高校生の頃から見えるようになったクロコとの出会いをきっかけに、「未来にいいこと」をしたいと入社した。先輩社員の濱口茂がアキの父だとは気づいていない。
濱口茂:アキの父親。NGK日本ガイシに勤めており、カーボンニュートラルに貢献するセラミック製品を開発している。
クロコくん:謎の生きもので人々の暮らしや社会を陰ながら支える存在。特にカーボンニュートラルやデジタル機器に関わる場所に多く現れ「未来にいいこと」をしている。
(日本ガイシのキャラクター。舞台を支えるくろこがモチーフ。丸い大きな瞳が特徴。体長は約7.5センチ)

アキの父、茂が少し驚いた様子でアキの部屋の中を見渡しているシーンから始まる。
アキは、部屋の片付けをしながら、父に声を掛ける。
「なに、どうしたの、入ったら?」
茂は答える。
「あぁ…」
茂は一歩部屋に入ると、再び部屋の中を見渡している。
アキはひととおり部屋の片付けを終わらせ、キッチンで二人分のお茶をコップに注ぎ終えると
部屋の真ん中に置いたミニテーブルの前で座っている父にお茶を運びながら話し掛ける。
「急に来ないでよ。びっくりするから」
茂は笑顔交じりで答える。
「ははは、悪かったな」
アキは父にお茶を渡し、テーブルの向かい側に座りながら問いかける。
「なに、また出張?」
茂は少し曖昧な返事をする。
「え、うーん、まぁそんなとこだ」
アキは素直にうなずく。
「ふーん」
茂は早速、左脇に置いた白い大きな紙袋から、弁当をふたつ取り出して、テーブルの上に置く。
アキが笑顔でお礼を言う。
「おぉ、ありがとう」
茂はにっこりとしながらアキに話す。
「ひとつ、1600円もした」
アキもにっこりしながら思わず言葉が出てしまう。
「高っ!」
茂はアキの言葉に笑顔を返しながら加えて言った。
「高級弁当だろ」
茂はアキの明るい表情に安心した様子で、弁当を開封し始める。
「よっし」
アキは笑顔で手を合わせる。
「いただきます」

空になった弁当箱が置かれたキッチンのシーンが映る。
二人がテーブルを挟んで座っているシーンに戻る。
茂が半ば唐突にアキに質問をする。
「で、彼氏できたか?」
アキはけげんな顔で答える。
「なに、いきなり!」
茂は前のめりになり、問いかける。
「できたのか?」
アキはすかさず否定する。
「できてません!てか、いきなり聞かないでよ。そんなこと」
茂はアキの熱くなった様子を笑顔で受け流しながら、問いかけを続ける。
「どうだ、大学は?」
アキは伏し目がちになり、少し気まずそうに答える。
「うん…行ってるよ」
茂は優しく問いかける。
「勉強、大変か?」
アキは答えにくそうな様子で、空になった父のコップを手に取り、立ち上がりながら小さな声で答える。
「まあね」
茂はキッチンに向かったアキに目をやったあと部屋を見渡すと、アキの机の横に「再生可能エネルギー」や「カーボンニュートラル」関連の本が積み上がっているのを見つける。
どれもきれいな状態のそれらの本を手に取りながら、アキに話しかける。
「あっ、動画配信見たぞ、三人の。楽しそうじゃないか」
アキはキッチンでコップにお茶を注ぎながら答える。
「えっ、見ないでよ!恥ずかしいな」
茂はすでに元居た席にもどっており、いたずらっぽい表情でキッチンの方を見ながらアキに話しかける。
「あれだな!アキの話が一番おもしろかったな」
アキは照れくさそうに答える。
「もうやめてよ!」
茂はそんなアキの反応を見て喜んでいる。
「ひっひひ」
アキはお茶を入れたコップを父に差し出すと、座りながら父に問いかける。
「お父さんは?どうなの最近」
茂は穏やかに答える。
「お父さん変わらないよ。母さんも元気だ」
アキは父の返答を受け、続けて冗談交じりで問いかける。
「ふーん。仕事は?クビになってない?」
茂は真面目な顔で即答する。
「バカ!当たり前だろ」
アキはそんな父を見て笑顔で受け流す。
「ふふ」
茂は、先ほど手に取った本がある方をチラリと見たあと、お茶を飲みながらアキに話しかける。
「DAC(ダック)って知ってるか?」
アキは少し呆れたような様子で答えるも、話を聴く姿勢がうかがえる。
「知るわけないでしょ。なにそれ」
茂が話を続ける。
「ダイレクト・エア・キャプチャー、簡単に言うと…大気」
「ここからCO2だけを回収するんだ」
と言って、茂は手を大きく広げ、空気中のあちこちをつかみ取るような手振りをする。
アキは不思議そうに問いかける。
「そんなことできんだ?」
茂は相槌を打ちながら、話を続ける。
「うん。で、この回収したCO2を、別のエネルギーとして再利用する。そのためのセラミックスを開発しているんだ」
茂はにっこりしながらアキに語り掛ける。
「これまた、カーボンニュートラルに大貢献や」
アキは笑顔で受け答える。
「でた、カーボンニュートラル」
茂は、コップを手に取り、コップの側面を指でなぞりながら話を続ける。
「あとは…このコップに貼り付けられるくらい薄ーい電池とかな」
アキは笑顔で関心しながら受け答える。
「へぇー、さすが謎の会社、日本ガイシ。 いろんなことやってんねえ」
茂は、お茶を一口飲み、ゆっくりとうなずく。
「うん」
茂は、一呼吸ついたあと再び話し始める。
「今年入った新人がいてな。アキと同い歳の。ダメダメなやつでさあ、本当ポンコツなんだよ」
アキの笑顔は少しずつ薄れて微妙な表情に変化していくが、アキが相槌を打つ。
「へえ」
茂は話を続ける。
「ミスばっかしてな。毎日凹んでる」
アキ「かわいそ。社会人も大変だ」
茂「でも、やる気だけはあるんだよなあ。どんだけ怒られても、凹んでも、あいつ目だけは死んでないんだ。ほんと変なヤツだよ。ははは」
アキの笑顔は全く無くなっており、父の話を少しうつむき加減で聞いている。
茂はそんなアキの様子を心配そうにちらりと見ていた。

夜の踏切のシーンのあと、アキが駅で父を見送るシーンが映し出される。
茂はアキの方に向き直って話し掛ける。
「じゃあ、また来るわ」
アキも父の方を向いて答える。
「うん。お母さんによろしく」
茂は深くうなずく。
アキが続けて、軽く会釈をしながら話す。
「あ、高級弁当ごちそうさま」
茂もアキもひと笑いする。
そのままアキは父に向かって微笑みながら、お別れを言う。
「じゃあ」
振り返って帰ろうとするアキを、父が呼び止める。
「アキ!」
アキは父の方を向き、答える。
「なに?」
茂は優しい眼差しでアキに問いかける。
「見えなくなってないか?」
アキは突然の父からの問いかけに、思わず聞き返す。
「え?」
茂は変わらぬ眼差しで語り掛ける。
「いつでも、戻ってきなさい」
アキに背中を向けて駅の改札へ歩いて行く。
アキは父の背中を見つめる。

都会の夜景が映ったあと、場面が変わり、アキが部屋で目を瞑り、横になっている様子が映る。
アキの5年前の回想シーンが始まる。
茂が自宅のリビングに座って語っている。
「ま、未来にええことしとるわけよ」
アキがご飯を食べながら父の方を見ている。
茂が微笑みながらアキの方をちらっと見る。
アキの回想シーンが終わり、アキが部屋で横になっているシーンへ戻る。
アキの部屋では小さな音でラジオ番組が流れており、誰かの話す声が聞こえている。
アキは父の言葉を思い出し、ゆっくりと起き上がると、うつろな表情で机の横に山積みされた「カーボンニュートラル」関連の本を見つめる。しかしそのあと倒れ込むようにベッドに横たわる。
アキが仰向けでしばらくぼんやりと小さな音声を聞いていると、番組からCMに切り替わり軽快なリズムと声が流れ始める。
ラジオの音声「今夜のクロコのひとりごと」
スマートフォンのラジオアプリから、若い男性の声が聞こえてくる。
ラジオの音声「1年目の新人です。毎日謝ってばかりです。だけど、今、新しい電池つくってて…きっと皆さんが驚くようなものになります」
アキは仰向けのままつぶやく。
「クロコ…」
アキの回想シーンが始まる。
高校時代、学校の教室のプロジェクターの上に「クロコくん」がいきなり現れ、驚いて立ち上がったシーン、
自宅のデスクトップパソコンの後ろから顔を出した「クロコくん」と目が合ったシーン、
バス停で並びながらスマートフォンを触っている人々の周りに、たくさんの「クロコくん」が居るシーン、
NGK日本ガイシの製品であるNAS電池の周りで、たくさんの「クロコくん」たちが活動しているシーン、
岩の上で二体の「クロコくん」が、アキに向けてGOODサインを出しているシーンへと移り変わる。
アキの回想シーンが終わり、仰向けに寝転ぶアキの映像に変わる。
ラジオの音声「以上 小松ワタルさんの「正直な気持ち」でした。サプライジングセラミックス、NGK 日本ガイシ」
アキは何かを思い立った様子で、ベッドの上で体を起こすと、瞬きをしながらどこか一点を見つめる。

アキが高校時代に住んでいた地元の、丘の上にある公園から町と海を見渡せる風景が映し出される。
大学生のアキは地元に帰り、高校からの帰り道だった跨線橋の上をゆっくりと一人で歩いている。
アキが公園のブランコに座り、ブランコの座面で「クロコくん」を見つけた時のことを思い出しながら、「クロコくん」がいた隣のブランコの座面を見ている。
当時は緑色だった座面が今は赤色に替わっており、年月の経過を物語っている。
アキは寂しそうな表情で下を向き、ブランコに一人ポツンと座っている。
木漏れ日が差し込む様子が映り、高台の公園に移動したアキが丘の上から海と山、町と港の方向を立ったまま眺めている後ろ姿が映る。
アキは左手にある大きな岩を眺める。当時二体のクロコくんが岩の上でGOODサインをしてくれたが、今は何も見えない。もう一度海の方向を見ながらつぶやく。
「なにやってんだろ」
するとアキの斜め後ろの方から、ビジネスタイプのリュックを背負ったスーツ姿のワタルがふらりふらりと歩いて来る。ワタルはアキの姿に気付くと立ち止まり思わず声を発する。
「あ、」
アキは声がした方へ振り返り、しばらくワタルの姿を見つめると、そのあと思い出したように声を発する。
「あ…」
ワタルが少し緊張したような表情でまっすぐアキの方を見つめている。

メロディーが流れ始める。
ナレーション(アキの声)
「いい未来が 見えてきた」
「サプライジングセラミックス NGK 日本ガイシ」
メロディーが流れ終わる。

ワタルがアキの方へ一歩、二歩と、ゆっくり近づいていく。

第3話「君とボクの5年」篇

第3話「君とボクの5年」篇

第3話「君とボクの5年」篇

再生時間 6:56

これは全4話のストーリードラマ「いい未来が、見えてきた。2」
第3話「君とボクの5年」篇、WEB限定ムービーの書き起こしテキストです。

登場人物
濱口アキ:主人公の一人。23 歳(前シリーズでは17 歳)、父の仕事に憧れ、地元を離れ東京の大学に進学した。
友だちとの遊びや動画配信に夢中になり、未来を見失いつつある。高校生の頃に見えていたクロコは、もう見えなくなっていた。
小松ワタル:もう一人の主人公。23 歳(前シリーズでは17 歳)、日本ガイシに就職した1年目の新人。高校生の頃から見えるようになったクロコとの出会いをきっかけに、「未来にいいこと」をしたいと入社した。先輩社員の濱口茂がアキの父だとは気づいていない。
濱口茂:アキの父親。NGK日本ガイシに勤めており、カーボンニュートラルに貢献するセラミック製品を開発している。
クロコくん:謎の生きもので人々の暮らしや社会を陰ながら支える存在。特にカーボンニュートラルやデジタル機器に関わる場所に多く現れ「未来にいいこと」をしている。
(日本ガイシのキャラクター。舞台を支えるくろこがモチーフ。丸い大きな瞳が特徴。体長は約7.5センチ)

画面いっぱいに名刺が写されたシーンが始まる
名刺の内容
NGK NV推進本部 ビジネスクリエーション
バッテリーソリューション
小松ワタル

ワタルが自分の名刺を嬉しそうに眺めながら、会社の自席に座っているシーンが始まる
先輩がワタルに声をかける。
「…新人!」
「なにニヤニヤしてんだ。行くぞ」
ワタルは焦った様子で返事をし、椅子から立ち上がる。
「あ、はい。」
ワタルは急いでノートパソコンを小脇に抱えながら歩き出す。
会議室の入口が映し出される。
定員6名程度の会議室内でのシーンへと変わり、ワタルと先輩がオンラインミーティングに参加している。
ワタルが話し始める。
「はい。では、私の方から資料の共有をさせていただきます。」
ワタルはパソコン内の資料を探し、共有しようとするが、間違えたファイルを表示してしまう。
「あ、これ、違いますね。すみません、失礼しました」
ワタルのつぶやき
「ん?ってことは?ん?これじゃない」
ワタルの焦った顔が、オンラインミーティングの画面に大きく映し出される。
先輩が見かねてワタルに声をかける。
「おい、自分の顔映してどうすんだよ」
ワタルは焦った様子で答える。
「すいません。失礼しました。すぐやり直します」
先輩が他の参加者に謝る。
「申し訳ありません。もう少しお待ちください」
ワタルのパソコンの横で、「クロコくん」が頭を抱えたり、パソコン画面を何度も指したりしながらワタルを応援している様子が映る。

場面は変わり、照明が消された会議室で、プロジェクターからスクリーンに映した資料の前で、眼鏡をかけた社員が製品説明しているシーンが始まる。
資料には「エナセラ活用アイデア」という見出しと「太陽パネル付き屋内外位置トラッカー」というタイトルがついている。
眼鏡をかけた社員は、左手にタブレット、右手に位置トラッカーを持ちながら、説明を行っている。
「このトラッカーを付けた子どもや高齢者が、指定されたエリアの外に出た場合、メールでのアラートを送信し、位置情報を確認できます。」
15名ほどの会議の参加者たちは、説明をする社員とスクリーンに注目している。
スクリーン上の資料には、指定されたエリアから「クロコくん」が外に出た途端、スマートフォンに通知が来る様子が映っている。
「これまでのトラッカーとは違い、エナセラと太陽光を組み合わせることで、メンテナンスフリーと半永久的な使用が可能です。」
説明を真剣に聞いていたワタルが思わず声を上げる。
「へえー!おもろっ!」
会議の参加者たちは一斉に、ワタルの方を見る。
ワタルは周りからの視線に気が付くと、我に返って小さく謝る。
「あ、すみません」
眼鏡をかけた社員は、説明を続ける。
「えー、というわけで、エナセラと太陽光パネルを組み合わせた位置トラッカーは、様々な側面で社会貢献できるのではないか…」
ワタルは再び説明を興味深く聞き入りながら、目を輝かせる。

場面は変わり、タブレットのメモ帳にメモしている手元が映し出される。
タブレットの画面に書かれている内容
エナセラの有効活用
いまは段ボールとかに貼られている
例えば
エナセラをトラッカーシールとして…

旅行バッグなどに小さく貼れる

ワタルが自席でタブレットにメモを書いている映像に切り替わる。
ワタルはブツブツとつぶやきながら、エナセラの活用方法について考えている様子。

帰り支度を終えて自席を離れた茂が、ワタルに声をかける
「まーだやってるのか」
ワタルは茂の方を向き、答える。
「あ、お疲れさまです」
茂はワタルの席へ近づきながら話しかける。
「なんだ、頼まれごとか?」
茂は、ワタルの机の向かい側から、タブレットを覗き込む。
ワタル「あ、いや、ちょっと思いついたことあって…」
茂は少し嬉しそうな表情で答える。
「そうか、まあほどほどにして帰れよ。じゃあ、お疲れ!」
ワタルは座ったまま頭を下げ、挨拶する。
「お疲れさまです。」
ワタルが帰ろうとする茂の背中を眺めていると、茂は振り返って優しい眼差しを送り、帰っていく。
「クロコくん」がワタルの机の上で、帰っていく茂に向かって両手を振っている。

NGK日本ガイシの会社の外観が映ったあと、社内のエレベーターホールで先輩がワタルに注意しているシーンが始まる
先輩は腕組みをし、ワタルの正面に立っている。
「だから、何回も同じこと言わすなって。なんでそんなにミス多いんだよ。」
ワタルはうつむき加減で謝る。
「…すみません」
先輩は腕組みをほどくと今度は腰に手を当て、注意を続ける。
「小松さあ、社会人なんだからさ、もっとちゃんと周り見て自分の役割果たせよ」
偶然、茂が先輩の後方を通り掛かるが、ワタルが注意を受けている様子に気付いて、壁の脇に隠れる。 先輩は注意を続ける。
「自分のやりたいことだけやるの学生までだろ。なあ」
茂が見かねて、先輩社員に駆け寄りながら声をかける
「まあまあまあまあ…」
茂は両手で先輩社員をなだめるように少しワタルから離し、ワタルに話しかける。
「小松、今日はもう上がっていいぞ」
ワタルは腕時計を見て、戸惑った様子で答える。
「え、でも…」
茂は小声でワタルを説得するように話す。
「いいから、ひと息入れてこい」
茂は先輩社員をワタルから遠ざけながら、先輩社員に話しかける。
「悪い悪い」
先輩社員「最近あいつ、ミス多いんすよ」
薄暗い窓の外の景色を背景に、うつむいてため息をつくワタルの横顔が映る。

夕暮れの山と街の映像へ切り替わる。
ビジネスバッグを背負ったスーツ姿のワタルが、高台の公園から遠くを眺めている。

ワタルの高校生時代の回想シーンが始まる。
ワタル「だからクロコ…」
アキは笑顔で嬉しそうに答える。
「なんか、ちょっとかっこいいなって思った」
ワタルとアキが、二人並んで街と海の方を眺めている。
ワタルの回想シーンが終わり、遠くを眺めるワタルの映像へと戻る。

ワタルはため息を吐き、つぶやく
「はぁ…なんか、向いてねえかもな」
ワタルの横にある岩の上で、「クロコくん」がワタルを心配そうに見つめている。
「クロコくん」は、腰の後ろに手をまわし、何か思いをめぐらせるような様子のあと再びワタルの方を見ると、ポンッ!という音と共に消えてしまう。

ワタルの会社内のシーンが始まる。
ワタルが驚いた表情で答える。
「えっ!オレがですか?」
広報の女性社員がワタルに説明する。
「ええ。今回は新入社員の方に担当していただきます」
ワタルが広報の社員から手渡された資料の表紙が映る。
資料:ラジオCM「今夜のクロコのひとりごと」企画資料
女性社員は説明を続ける。
「20秒ほどのラジオCMですので、コメント考えておいてください」
ワタルは資料を持ったまま、焦った様子で立ち上がり、女性社員に問いかける。
「ちょちょちょ、なに話せばいいんですか」
女性社員は落ち着いた様子で、ワタルの問いに答える。
「まあ、なんでも。仕事についてでも、会社についてでも、自分の言葉で話してください」
ワタルは困った表情で女性社員に問いかける。
「自分の言葉って…こういうのって、誰かが考えてくれるんじゃないんですか」
女性社員は不思議そうな表情で、ワタルに問いかける。
「誰かとは?」
ワタルはとても困った表情で、女性社員に話す。
「いやなんか、広告代理店の人とか」
女性社員は笑顔混じりの表情で間髪を入れずに答える。
「ないですね。皆さん自分で考えて、話してくださってますので」
ワタルはものすごく困った顔で資料を見ながら、崩れるように席に座る。
「えー…?」

ラジオCM収録のシーンが始まる。
ワタルは、いろいろとメモを書いた資料を机に広げ、ペンを両手先でカチャカチャ触りながら緊張した様子で
収録ブース内に一人で座っている。

ラジオ収録の現場スタッフが、ワタルの前にマイクなどの機材をセットし、収録の準備をしている。
ワタルはセットを終えたスタッフが去って行く際、軽く会釈する。
広報の女性社員が収録ブースに入ってきて、ワタルに話しかける。
「大丈夫ですか?」
ワタルは不安そうな表情で答える。
「大丈ばないです。なに言えばいいんでしょう」
女性社員がアドバイスを送る。
「最近の仕事とか」
ワタルは、最近起こったことを思い返しながら答える。
「最近…めっちゃ怒られて凹みました」
女性社員は苦笑いをしながら答える。
「そういうのは言わないでください」
ワタルが不安そうな表情のまま小さく頷くと、女性社員は声をかける。
「じゃ、お願いします」
女性社員は、収録ブースの外のスタッフに視線と手振りで合図を送りながら足早に収録ブースから出て行く。
ワタルは小さな声で答える
「はい」
収録ブースの扉が閉まり、ロックされる音と共にドアレバーが下りる。
ワタルは緊張した表情で、収録開始を待っている。
数秒間、無音の時間が流れた後、机の上の機材のランプが赤く点灯し収録の開始を知らせる。
ワタルは少し焦った様子で話し始める。
「1年目の新人です。毎日、謝ってばかりです。だけど…だけど、今新しい電池つくってて、きっと、皆さんが驚くようなものになります。」
「皆さんが驚いた時の顔を想像すると…」
「めっちゃワクワクします。だから、楽しいです。新しい電池、待っててください。」
緊張しながらも自分の言葉で正直な気持ちを語り終えたワタルの横顔は、少し照れくさそうな笑みを浮かべ、安堵した様子がうかがえる。

スマートフォンのラジオアプリから、ラジオの音声が流れるシーンへと変わる。
ラジオの音声「だから、楽しいです。新しい電池、待っててください。」
アキがベッドに仰向けで寝転びながら、ぼんやりしている場面が映る。
ラジオの音声「以上、小松ワタルさんの「正直な気持ち」でした。」
アキは何かを思い立った様子で、ベッドの上で体を起こすと、瞬きをしながらどこか一点を見つめる。
ラジオの音声「サプライジングセラミックス NGK日本ガイシ」

NGK日本ガイシの会社の外観とNGK製品である大容量電力貯蔵用NAS電池が映り、ワタルが出勤しているシーンが始まる。
茂がワタルに気付き、声をかける。
「おう」
ワタルは近づいてくる茂の方を見て、挨拶する。
「あ、おはようございます」
茂は少し楽しそうな表情でワタルに話しかける。
「聞いたぞ昨日、ラジオ」
ワタルは苦笑いしながら答える。
「え、あ、すみません」
茂は楽しそうに話し続ける。
「おまえ、すごい緊張してなかった?なんか聞いてるこっちまで、ソワソワしちゃったよ。」
ワタルは照れくさそうな表情で答える。
「いやあ…」
茂は嬉しそうな表情で、話し続ける。
「『新しい電池、待っててください』か」
ワタルも少し嬉しそうな表情で答える。
「すみません。偉そうに」
茂は嬉しそうに話し続ける。
「ラジオであんなこと言っちゃったんだから、がんばんなきゃな」
茂はワタルの肩を軽く叩き、先に行く。
ワタルはその場に止まり、先に行った茂の背中を眺める。
「クロコくん」がワタルの背中の方から左肩に登ってきた。
ワタルは左肩に乗った「クロコくん」に気づくと、清々しい笑みを浮かべながら前を見て姿勢を正す。
「クロコくん」は、ワタルの表情を見た後、肩の上に腰かけて足をパタパタさせてご機嫌な様子。

高台の公園から海を臨むシーンへと変わる。
スーツ姿のワタルが木々の中からふらり歩きながら前方に視線を送ると、なにかを見つけ立ち止まる。
ワタルの視線の先には、大学生のアキが立ったまま、海の方を眺めている。
ワタルはアキに気づき、思わず声を発する。
「あ…」
アキは声がした方を振り返り、少し眩しそうな表情でしばらくワタルの姿を見つめたあと、思い出したように目を見開くと小さな声を発する。
「あ…」
画面がふたつに分かれ、左側にはワタルを見つめるアキ、右側にはアキを見つめるワタルの顔がアップで映し出される。

メロディーが流れ始める。
ナレーション(アキとワタル2人の声)
「いい未来が、見えてきた」
「サプライジングセラミックス NGK日本ガイシ」
メロディーが流れ終わる。

ワタルがアキの方へ一歩、二歩と、ゆっくり近づいていく。

第4話「いい未来が、また見えてきた」篇

第4話「いい未来が、また見えてきた」篇

第4話「いい未来が、また見えてきた」篇

再生時間 9:58

これは全4話のストーリードラマ「いい未来が、見えてきた。2」
第4話「いい未来が、また見えてきた」篇、WEB限定ムービーの書き起こしテキストです。

登場人物
濱口アキ:主人公の一人。23 歳(前シリーズでは17 歳)、父の仕事に憧れ、地元を離れ東京の大学に進学した。
友だちとの遊びや動画配信に夢中になり、未来を見失いつつある。高校生の頃に見えていたクロコは、もう見えなくなっていた。
小松ワタル:もう一人の主人公。23 歳(前シリーズでは17 歳)、日本ガイシに就職した1年目の新人。高校生の頃から見えるようになったクロコとの出会いをきっかけに、「未来にいいこと」をしたいと入社した。先輩社員の濱口茂がアキの父だとは気づいていない。
濱口茂:アキの父親。NGK日本ガイシに勤めており、カーボンニュートラルに貢献するセラミック製品を開発している。
タマミ:アキの大学の友人
エーコ:アキの大学の友人
クロコくん:謎の生きもので人々の暮らしや社会を陰ながら支える存在。特にカーボンニュートラルやデジタル機器に関わる場所に多く現れ「未来にいいこと」をしている。
(日本ガイシのキャラクター。舞台を支えるくろこがモチーフ。丸い大きな瞳が特徴。体長は約7.5センチ)

高台の公園で、スーツ姿のワタルがアキの方へ歩み寄っていくシーンが始まる。
ワタルがぎこちない歩き方でアキの方へ近づきながら話しかける。
「久しぶり」
アキはその場に立ったまま、ワタルに答える。
「うん。久しぶり」
ワタルは、アキから3メートルほど離れた場所で立ち止まり、アキに話しかける。
「なにしてんの。こんなとこで」
アキは、はにかんだような笑顔で返事をする。
「別に、なんとなく」
微妙な笑顔のアキを見たワタルも、少し笑顔で答える。
「へえ…」
緊張気味の二人の間に沈黙が生まれる。
今度はアキがワタルに問いかける。
「そっちこそ、なにしてんの?」
ワタルは少し困ったような表情で答える。
「いや、特に」
アキはとりあえず微笑みながら答える。
「ふーん」
二人の間にまた沈黙が生まれる。
ワタルが何かを思いついた様子で、アキに話しかける。
「あー、あのさ、お茶でも行く?コーヒー、そこのどっか、店で、あの…」
アキは笑顔ながらも首を横に振ってはっきり答える。
「行かない」
ワタルは仕方なさそうに、作り笑顔でアキを見る。
アキもワタルを硬い笑顔で見ている。
ワタルはアキから目をそらし、両肩のリュックのベルトに手をかけると、突然大きな声でアキに向かって話す。
「買ってくる!」
アキは少し驚いた様子で声を出す。
「え…」
ワタルは無言で後ずさりし、振り返り、走って行く。
アキは驚いた様子で、走って行くワタルに声をかける。
「え、え?ちょっと…」
ワタルの走って行く足音が聞こえ、アキはワタルが走って行った先を見つめている。

木漏れ日が降り注ぐ場面のあと、岩の上にワタルとアキが少し間を空けて腰をかけ、そこからの街と海の景色を眺めている二人の後ろ姿シーンが始まる。
ワタルがアキに話しかける。
「5年ぶり、だよね」
アキは答える。
「そんなだっけ?そっか」
ワタルはアキに自分の方を見て欲しそうに話しかける。
「だって、見て見て、スーツ」
アキはワタルの方を見て答える。
「ははは。社会人だ」
二人を斜め前から映した映像に切り替わる。ワタルにフォーカスが当たり、後ろのアキは少しぼやけている。
アキがワタルの買ってきたホットコーヒーをゆっくり一口飲む。

ワタルが街の方を見ながら、話しはじめる。
「でも、なんか、うまくいかないっていうか」
アキは無言でうなずく。
アキにフォーカスが当たった映像に切り替わる。
ワタルは話を続ける。
「もう毎日怒られてさ、毎日凹んでるよ」
アキはワタルが買ってきたコーヒーを一口飲み、笑顔で答える。
「へぇー」
ワタルは話し続ける。
「でまあ、落ち込むとなんとなく、ここ来てる」
二人が岩の上に腰をかけている後ろ姿と、街と海を見渡す映像に切り替わる。
ワタルは話を続ける。
「ここ来るとなんか、リセットされるんだよね」
ワタル中心の映像に切り替わる。ワタルは街の方を眺めながら、話し続ける。
「どんだけ先輩にムカついても、自分にムカついても、ちゃんと、やりたいことには近づいてるはずで…」
アキは無言でうなずきながら、ワタルの話を聞いている。
ワタルは少し笑顔になり、話し続ける。
「うん、だから、がんばろうとか、思える。…あ、今つくってるのがさ…」
ワタルはアキの方を見る。アキ中心の映像へと切り替わる。
ワタルは、アキが少し深刻そうな顔をしているのに気付き、話を止める。
二人とも無言の時間が少し続く。
ワタルはアキから目を離し、街の方を見ながらアキに問いかける。
「…で?そっちはどうなの?」
アキはワタルの方へ顔を向け、聞き返す。
「え?」
ワタルはアキを見て問いかける。
「東京の大学」
アキは微笑みながら答える。
「あー」
二人とも正面を向き直し、アキが話し始める。
「…どうかなー」
アキが右手で頭をかき、話し続ける。
「なんか最近わかんなくなっちゃった。ははは」
ワタルは笑顔でアキの方を見て問いかける。
「え?なにが?」
アキは首をかしげながら答える。
「うーん、自分…」
ワタルは無言でうなずき、アキを見ながら問いかける。
「なんで東京行ったの?」
アキもワタルの方を見て、笑顔で答える。
「そりゃ勉強のためだよ」
ワタルはさらに問いかける。
「え、何の?」
アキ「再生可能エネルギー」
ワタルは鼻の下を伸ばし、驚いたような、少しおどけた表情をする。
アキは話し続ける。
「昔お父さんにね、言われた言葉があったの」
ワタルは真面目な顔に戻り、答える。
「うん」
アキは無言になる。
ワタルがアキの方を向き、問いかける。
「なんて?」
アキは硬い笑顔で答える。
「…言いたくない」
ワタルが笑顔で問いかける。
「えー、なんでよ?」
アキは笑顔のまま悲しげに答える。
「いま言うと…泣きそうになる」
ワタルは真顔になり、小さく声が漏れる。
「え…」
アキは真面目な表情で、話し続ける。
「いつか私も、お父さんみたいな仕事したいなって思って、それで一生懸命勉強して、東京の大学入ったんだ」
「でも、東京行ったら、見えなくなっちゃった」
ワタルは真面目な顔でアキを見ながら、話を聞いている。
アキは話し続ける。
「毎日友達と、出かけて、遊んで、楽しくて、いつの間にか学校行く目的が、勉強じゃなくなっちゃって」
「だから勉強ぜんぜんしてないし、なんか…家族にも嘘ついてるみたいで」
二人は無言になり、ワタルの複雑そうな表情がアップで映し出される。
アキの映像に変わり、アキは少し申し訳なさそうな表情で話を続ける。
「大学入っただけなのに、そこに辿り着いた気になっちゃった」

アキはうつむきながら自分の右肩に視線を落としたあと、寂しそうな表情で話を続ける。
「…もう、なにも見えない」
真剣な表情のワタルは正面を向いたまま少し大きめに息を吸い込むと、今度はその息を吐く勢いに乗せて話し出す。
「別にいいんじゃね?」
アキはワタルの方を見る。ワタルはそのまま話し続ける。
「それに気付いたんなら、またやればいいじゃん。勉強。遅くないんだし」
アキが深刻そうな表情でワタルを見ていると、ワタルが急に立ち上がり、話し始める。
「マテリアルズインフォマティクス」
アキは不思議そうな表情で問いかける。
「え?」
ワタルは自信に満ちた笑顔でアキを見たあと、街の方を見ながら、手振りを交え、話し続ける。
「今オレがやってる仕事ってさ、明日とか明後日よりも、もっと先、100年後のことを想いながらする仕事なんだ」
「電池もそうだし、再生可能エネルギーもそう」
一瞬アキの方を見たあと、ワタルは街のずっと先の方を見つめながら話し続ける。
「遠くの未来が良くなるようなアイデアを、みんなで、形にする仕事なんだ。それって、めっちゃ面白い」
笑顔で楽しそうに仕事の話をするワタルを、アキは座ったまま見上げている。

アキの回想シーンが始まる。
高校時代に、父が話していた言葉を思い出す。
アキの父(茂)「まあ、未来にええことしとるわけよ」
アキの回想シーンが終わる。

アキは遠くを見つめるような表情をしている。
ワタルが立ったままペンを持ち、何かを描いている姿が映り、アキは怪訝そうな表情で、ワタルの背中を眺めている。
ワタルはアキに背中を向け、手を動かしたまま、アキに話しかける。
「アキも、未来の自分に、いいことをしなよ」
ワタルは振り返り、アキに何かを描いた紙コップを差し出す。
アキが紙コップを受け取ると、そこには「クロコくん」の絵が描かれている。
アキはしばらく無言で「クロコくん」の絵をじっと見つめ、次第に嬉しそうな表情になり、ワタルを見上げる。
すると突然、ポンッという音と共にワタルの右肩に「クロコくん」が現れ、アキはびっくりして叫びながら立ち上がり、後ずさりする。
「わーーッ!!!!!」
ワタルもいきなり声を上げたアキにびっくりして、声を上げる。
「うわ!え、え、え、な、な、なに!」
アキは自分とワタルの紙コップを手に持ったまま、ワタルの右肩を指さす。
「くくくく…くくくく…ク…ロコ!」
ワタルが自分の右肩を見ると、「クロコくん」がアキに向かって右手を上げる。
ワタルは小さく声を上げる。
「お、おう。」
ワタルが、アキにも「クロコくん」が見えていることに気付く。
ワタルがアキの方を見ると、
アキは満面の笑みで、「クロコくん」に元気に声をかける。
「久しぶり!」

アキの嬉しそうな顔を見て、ワタルも笑顔になる。
「クロコくん」は、ワタルの右肩で楽しそうに踊っている。
ワタルはもう一度、右肩の「クロコくん」に視線を移し、またアキを見る。
アキは笑顔のままでいる。

大学のカフェでアキが学校の友だちと三人で勉強しているシーンへと変わる。
タマミがアキに問いかける
「カーボンニュートラル…なに、カーボンニュートラルって」
アキは手振りを交え、二人に笑顔で説明する。
「だから、ざっくり言うと、温室効果ガスの排出量を、全体として差し引きゼロにするってこと」
エーコがアキに問いかける。
「え、なんでゼロにするの?」
アキは手振りを交えながら説明を続ける。
「地球の温度ってどんどん上がってるじゃん。それを、食い止めるため」
タマミが理解した様子でアキに話しかける。
「あ、地球を守るってこと?」
アキがタマミに笑顔で答える。
「そう」
エーコも嬉しそうに話し出し、3人の会話が弾む。
エーコ「規模でけぇ」
アキ「そうでしょ!?」
タマミ「地球規模じゃん」
アキ「地球、守ってんの」

ワタルが会社の打ち合わせ用テーブルの席で、基板が貼られたワインボトルを手に持ち、6名の社員に囲まれているシーンが映る。ボトルに貼られた基板にはNGK日本ガイシの製品である薄い蓄電池「エナセラ」が搭載され、「クロコくん」を表示する電子ペーパーが被さっている。
ワタルが基板横のスイッチを操作すると、電子ペーパーに表示された「クロコくん」が動き出す。
ワタルの周りの社員たちが一斉に沸き立ち、笑顔で盛り上がる。
周りの社員たち「おー!いいねー」
他の社員「これは応用ききそうだよね」
先輩社員「たしかに。いろんなとこに使えそうだね」
ワタルは嬉しさをかみしめている様子でいる。

アキが自宅で勉強しているシーンへと変わる。
勉強しているアキが、だんだん大きく映し出される。
アキのカラフルなニットの左腕に「クロコくん」がつかまって、アキの方を見ている。
アキが嬉しそうな顔で、机の上を見渡す。
勉強している机の上の映像に切り替わると、参考書やスマートフォンの周りに3体の「クロコくん」がいる。
真ん中の「クロコくん」がアキに向かってGOODサインを出す。

ワタルの会社の社員食堂のシーンへと変わる。
茂が食事をしながら、向かい側に座っている社員へ話しかける。
「そういや、お前、結婚とかしないの?」
茂の向かい側に座って食事をしているワタルが映され、ワタルが返事をする。
「いやいや結婚はまださすがに…てかセクハラっすねその発言」
茂の映像に切り替わる。茂は気にせず、話し続ける。
「彼女いるんだろ?」
ワタルの映像に切り替わり、ワタルがはにかんだ笑顔で答える。
「まあ…彼女っていうか…」
茂「なに」
ワタル「いい感じの子はいますね」
茂の映像に切り替わり、茂は興味深そうに質問する。
「どんな子?え?おい」
ワタル「いやあ、まあ」
茂「写真!」
ワタルの映像に切り替わり、ワタルは少し戸惑いながらもまんざらでもなさそうに答える。
「え?」
茂「あるんだろ?」
ワタル「写真?」
茂「うん。早くー」
ワタルはポケットに入っているスマートフォンを取り出し、照れ笑いしながら答える。
「写真見ますか?」
茂は興味津々な表情で、ワクワクしながら待っている。
ワタルがスマートフォンに写真を表示して、身を乗り出している茂に見せる。
「この子です」
ワタルのスマートフォンには、笑顔のワタルとアキのツーショットが映っている。
茂の表情がみるみる固まっていくが、ワタルは気付かずに話し続ける。
「高校の同級生なんですけど、最近再会して」

メロディーが流れ始める。
茂はこわばった表情で、ワタルの顔と、スマートフォンの写真を交互に見る。
ワタルは茂の表情に全く気付かず嬉しそうに話し続ける。
「毎日電話してるんすよね~」
ワタルが笑顔で茂の顔を見ると、茂の様子がおかしいことに気付く。
茂はワタルを見つめながら無言で席を立つ。
ワタルは茂の態度に驚き、問いかける。
「え、え、どうしたんすか?」
茂は横を向き、隣の椅子に脚をぶつけてよろけながら立ち去る。
ワタルは焦った様子で、茂に声をかける。
「え!?ちょっと、濱口さん?」

ナレーション(アキとワタル2人の声)
「いい未来が、見えてきた」
メロディーが流れ終わる。

茂が離れた場所で振り返り、体を震わせながらワタルに向かって叫ぶ。
「見えてないよ!!!」
茂は叫んだあと、背中を向け、自分に言い聞かせるようにつぶやきながら歩き去って行く。
「見えてない、ない、見えてない、見えない」
ワタルは怪訝そうな表情で何か考えている様子。

メロディーが流れ始める。
ワタルは何かに気付いた様子で、驚いた表情と共に声を上げる。
「ええ!?」

回想シーンが始まる。
高校生のワタルが転校してきて、アキと「クロコくん」に出会ったシーン
ワタルとアキが学校から一緒に帰っている坂道のシーン
高台の公園で、アキとワタルが「クロコくん」について話しているシーン
NGK日本ガイシのNAS電池の前で、アキとワタルが話しているシーン
バスの座席で2体の「クロコくん」が座って遊んでいるシーン
大学生になったアキと社会人になったワタルが、高台の公園で笑顔で話しているシーン
茂がアキの住む東京の部屋で、楽しそうに話しているシーン
高台の公園で、社会人のワタルの笑顔のシーン
アキが、大学のカフェで友だちにカーボンニュートラルの説明をしているシーン
ワタルの肩の上に乗った「クロコくん」が見えるようになったアキの笑顔のシーンが流れる。
回想シーンが終わり、青い空と白い雲の映像へと変わる。
ナレーション(アキとワタル2人の声)
「サプライジングセラミックス NGK日本ガイシ」
メロディーが流れ終わる。

アキとワタルが、高台の公園の岩に並んで座り、街と海を眺めている後姿のシーンが映る。

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