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いい未来が、見えてきた。
(Web限定ムービー用代替テキスト)
第1話「謎の会社」篇
これは全4話のストーリードラマ「いい未来が、見えてきた」
第1話「謎の会社」篇、WEB限定ムービーの書き起こしテキストです。
登場人物
濱口アキ:主人公の一人。のどかな田舎で暮らす女子高生。理系科目が得意。デジタルに強く、実はかなりの腕のゲーマー。「アキーム」として配信を行っているがクラスメイトには秘密にしている。
濱口茂:アキの父親。関西出身で、いまだに関西弁が抜けない。NGK 日本ガイシでサブナノセラミック膜の研究をしている。
クロコくん:アキの前に突然姿を現した謎の生物。(日本ガイシのキャラクター。くろこをモチーフにした全身黒づくめの衣装に、丸い大きな瞳が特徴。体長は約7.5センチ)
アキの母
暗い部屋の中、パソコンの前でアキが「アキーム」としてライブ配信をしている。
「そうそうそう」「つまりよ、つーまーり!」
「みんなわかってるねー」
「あ、じゃそろそろ今日は終わろっかなー」
「チーム組んでくれた皆さんもお疲れしたー」
「お!おつかれーありがとー」
「明日も同じ時間にやろうと思ってるんで、また明日ねー」
アキは配信を終了し、ヘッドフォンを外して椅子にもたれかかり、ひと息つく。
「ふー」
パソコン画面を消し、椅子から立ち上がり部屋を出ようと机に背を向けて歩き出すと、机のほうで「ガタッ」という音がする。
アキは振り返り、目を凝らして机の下をのぞき込む。
メロディーが流れ始める。
暗い机の下にあるデスクトップパソコン本体の上に黒い生き物「クロコくん」が現れ、丸い大きな瞳で、アキを見る。
「うわッ!」
アキは驚き、机から離れる。
「なになになになに!」
慌てて部屋の電気をつけ、恐る恐る机に近づき、再び机の下をのぞき込むが「クロコくん」の姿はない。
机のまわりや部屋の中も見渡すが、「クロコくん」は見当たらない。
メロディーが流れ終わる。
夜の濱口家の外観が映る。
アキが食卓で晩御飯を食べているシーンが始まる。
父はリビングのソファの前に座り、テレビを見ている。
テレビの音声
「はっはっはっはっ!」
父もテレビにつられて笑う。
「ハハハハ!」
母がアキにお茶を出してくれたので、アキはお礼を言う。
「ありがと」
アキがご飯を食べながら、食卓の上にある父の名刺を見つけ、手に取る。
名刺の内容
NGK 日本ガイシ株式会社 NV推進本部 テクニカルマネジメント部長 濱口 茂
名刺を見ながら、アキが心の中でつぶやく。
(アキの心の声)「N G K ニホン ガイシ ケ ク くん?」
アキはリビングのほうを向き、父に話しかける。
「ねえ、お父さんの会社ってこれ何の会社なの?電気会社?」
父はテレビを見たまま反応する。
「ん?」
アキが続けて問いかける。
「どんな仕事してんの?」
父はテレビから目線を外し、少し上を見ながら答える。
「今やっとるのは、サブナノセラミック膜やな」
アキは父を見ながら、難しそうな表情で問いかける。
「ハ?なんて?」
父はテレビのほうを向いたまま答える。
「カーボンニュートラルに大貢献や」
父は答え終わるとすぐにまた、テレビを見て大笑いしている。
「ハハハハ!」
アキは持っていた名刺を食卓に置き、再びご飯を食べ始める。
「意味わかんないんだけど」
父はアキの反応を聞き、テレビのほうを向いたまま話す。
「まあ、未来にええこと、しとるわけよ」
アキは複雑そうな表情でつぶやく。
「なにそれ」
父はアキのほうを向きながら、少しおどけた表情で話す。
「かっこええやろ」
アキは父の反応に、少し笑いながら答える。
「知らんわ」
キッチンにいる母も、微笑みながら、一瞬振り返って二人の様子を見る。
父がテレビを見て笑う。
「ハハハハ!」「ハハハハハ!」
アキは父を見て微笑みながら、再び父の名刺を手に取って見る。
後日、学校の教室
授業のシーンが始まる。
先生がプロジェクターとスクリーンを使い、「進化する二次電池」の授業をしている。
「セラミック技術というのは、今のデジタル社会になくてはならないもので、
例えば、この小型リチウムイオン二次電池は、薄くて小さいのに、大容量で、高出力な電池なんですね」
スクリーンに、NGK日本ガイシの小型リチウムイオン二次電池の画像が映る。
アキがスクリーンに映った画像を見てつぶやく。
「あ、日本ガイシ」
先生は二次電池の説明を続けている。
「そのため、これまで電池を使えなかったものにも搭載することができるなど、IoTデバイスや」
メロディーが流れ始める。
効果音「ポンッ!」
プロジェクターの上に、いきなり「クロコくん」が現れる。
「うわ!!」
アキは「クロコくん」を見て、驚いて立ち上がり、後ずさりする。
突然の出来事に教室は静まり返り、クラスメイトと先生はびっくりして、アキに注目する。
先生が心配した様子で、アキに話しかける。
「どうした?濱口」
アキは立ち上がったまま、プロジェクターの上の「クロコくん」を見て指をさす。
「え、だって、これ」
「クロコくん」がプロジェクターの上で軽快に踊っている。
クラスメイトと先生は、アキが指をさした先を見るが、「クロコくん」は見えていない。
ただアキがプロジェクターを指さしているように見えている。
先生は不思議そうな表情で、アキに問いかける。
「プロジェクターがどうした?」
アキは先生と「クロコくん」を交互に見ながら、自分に見えているものを説明する。
「いや、プロジェクターじゃなくて、この、踊ってるヤツ!」
「クロコくん」はプロジェクターの上で踊り終わり、ポーズを決める。
メロディーが流れ終わる。
クラスメイトはプロジェクターや立ち上がったままのアキを見ながらざわついている。
アキは不思議そうな表情で、先生に問いかける。
「見えないんですか?」
先生は何も見えないことを近くの生徒にも確認し、再びプロジェクターとアキを見る。
メロディーが流れ始める。
「クロコくん」がプロジェクターの上でくつろいでいる様子で横になり、アキを見る。
アキは「クロコくん」と目が合い、思わず一歩引き下がるが、何度も瞬きしながら「クロコくん」を見つめている。
ナレーション(ワタルの声)
「いい未来が、見えてきた」
「サプライジングセラミックス NGK 日本ガイシ」
メロディーが流れ終わる。
第2話「あれからずっといる」篇
これは全4話のストーリードラマ「いい未来が、見えてきた」
第2話「あれからずっといる」篇、WEB限定ムービーの書き起こしテキストです。
登場人物
濱口アキ:主人公の一人。のどかな田舎で暮らす女子高生。理系科目が得意。デジタルに強く、実はかなりの腕のゲーマー。「アキーム」として配信を行っているがクラスメイトには秘密にしている。
濱口茂:アキの父親。関西出身で、いまだに関西弁が抜けない。NGK 日本ガイシでサブナノセラミック膜の研究をしている。
クロコくん:アキの前に突然姿を現した謎の生物。(日本ガイシのキャラクター。くろこをモチーフにした全身黒づくめの衣装に、丸い大きな瞳が特徴。体長は約7.5センチ)
小松ワタル:もう一人の主人公。親の都合で、東京からアキの住む田舎へ引っ越してきた男子高校生。都会育ちで大のゲーム好き。東京とは違う田舎の環境に戸惑いを隠せないでいる。
アキが学校の帰り道、跨線橋の歩道を歩いている。
(アキの心の声)「あれからずっと いる」
アキが自分の右肩に視線を落とすと、そこには「クロコくん」が腰かけている。
メロディーが流れ始める。
アキがバス停でバスを待ちながら、スマホを見ている。
(アキの心の声)「それどころか」
アキがバス停で並んでいる人たちのほうをそっと見ると、それぞれの腕の上や、スマホの上に、たくさんの「クロコくん」がいる様子が見える。
(アキの心の声)「いたるところで、見えるようになった」
バスに乗り込み、座席から車内を見渡すと、バスのオレンジ色の手すりや柱、乗客の肩の上、ヘッドフォンの上などに、「クロコくん」がいる。
(アキの心の声)「このクロコみたいなやつらは、何なんだ」
バスを降りたアキが、丘の上の公園で一人ポツンとブランコに座っている。
ブランコの座面とチェーンを繋ぐ金具のところで、「クロコくん」が一生懸命にブランコを揺らそうとしている。
アキはスマホを取り出し、ブランコの上にいる「クロコくん」の写真を撮る。
(シャッター音)「カシャ」
スマホで撮った写真を見ると、ブランコは写っているが、「クロコくん」は写っていない。
(アキの心の声)「写って ない」
メロディーが流れ終わる。
遠くから男の子の叫び声が段々と近づいてくる。
(男の子の声)「うわああああ!」
アキがブランコから立ち上がって丘の下を見ると、高校生ぐらいの男の子が叫びながら逃げるように走っている姿が見える。
(男の子の声)「うわああああ!」
アキは男の子が走り去っていく様子を見ながら心の中でつぶやく。
(アキの心の声)「どうしちゃったんだ、この町は」
アキが帰宅するシーンが始まる。
「ただいまー」
アキが玄関で靴を脱いで上がろうとしたとき、ふと、何かが脳裏をよぎり動きが止まる。少しうつむき加減で頭の中を整理しながらつぶやく。
「もしかして」
アキは顔を上げ目の前にある2階に続く階段の先に目をやり、勢いよく家に上がると、そのまま階段を駆け上がり、自分の部屋に入る。
アキは視線の先にある机に駆け寄りながら背負っていたリュックをその場に下ろし、机の前の椅子を除け、机の下にあるデスクトップパソコン本体の後ろをのぞく。
すると、そこに「クロコくん」が立っており、アキは少し驚き目を見開いてつぶやく。
「いた!」
アキと目があった「クロコくん」も驚き、思わずパソコン本体の後ろへ少しだけ隠れる。
メロディーが流れ始める。
「クロコくん」を見つけたアキは、何か思いついたように立ち上がり、部屋から駆け出して階段を下り、勢いよくダイニングに入ると、ゆっくりと周りを見渡す。
アキがすぐ左横にある食卓を見ると、折り畳まれた新聞の端からその下にあるテレビのリモコンが少し見える。
アキはリモコンに被さっていた新聞をサッと持ち上げる。すると、リモコンの横に「クロコくん」がいる。
(アキの心の声)「いる」
「クロコくん」は突然の出来事に驚いた様子だが、アキは食卓の「クロコくん」とリモコンを見つめ直したあと、今度は右側を向いてその先のリビングに駆け入り、壁際に置かれた大型テレビの後ろをのぞき込む。
テレビの後ろでは「クロコくん」が段差に腰かけており、アキのほうを見上げる。
(アキの心の声)「いる」
アキが台所脇に駆け寄り、食器棚の横に置かれた固定電話機を少し除けると、ここにも「クロコくん」がいる。
(アキの心の声)「いる」
電話機横の「クロコくん」はアキと目が合い驚いた様子だが、アキは驚かない。
アキは何かを考えながらゆっくりと振り返り、左側の先にある和室を見つめる。
アキは和室に駆け入り、押し入れのふすまを開け、布団や衣類が収納された押し入れの中を上段から下段へと隅々までのぞき込んで「クロコくん」を探している。
メロディーが流れ終わる。
アキは下段を探し終え、立ち上がりながらつぶやく。
「いないかー。ってことは、やっぱり」
アキがゆっくり振り返り、何かを考えながら和室を出ようと歩いていると、父の声が聞こえてくる。
「はい。えぇ。はい。そうなんです」
アキが父の声のほうを見ると、別の部屋で父がパソコンに向かって、オンラインミーティングを行っている。
「サブナノセラミック膜は「分子のふるい」で、
革新的なCO2分離プロセスを実現するセラミックスです。
このセラミック膜は、分子のサイズ差がわずか0.05ナノメートルのメタンとCO2を、
瞬時に精密かつ大量にふるい分けることができるんです」
「この技術はCCUS、つまりCO2の回収・有効利用・貯留に貢献できる技術として期待されています」
アキは、父がオンラインミーティングの相手に熱心に説明している姿をじっと見つめている。
父は笑顔で受け答えをしている。
「はは!そうですか。わかりやすかった?」
「あっ、それはよかった。はっはっは」
アキは父の様子を見ながら微笑んでいる。
アキが幹線道路の横にある歩道を歩いているシーンが始まる。
アキが歩きながらふと、歩道脇のフェンスのほうを見る。
アキは何かを見ようとフェンスに近づいていき、その中を眺める。
フェンスの中の敷地にはNASと書かれたコンテナのような大きな物体「NAS電池」が並んでおり、その周りでたくさんの「クロコくん」が活動している。
「クロコくん」たちは、手招きしたり、うなずいたり、指し示したり「クロコくん」同士でコミュニケーションを取っているように見える。
そして「クロコくん」がいる「NAS電池」にはNGK 日本ガイシのマークがついている。
アキは、その様子を見て少しうつむきながら、以前に父が言った言葉を思い出す。
(アキの回想の中の父)「まあ、未来にええこと、しとるわけよ」
アキはゆっくりと顔を上げ、再び目の前にある「NAS電池」と「クロコくん」たちを見つめる。
メロディーが流れ始める。
学校のシーンが始まり、教室の様子が映し出される。
リュックを背負った男子生徒が、黒板に自分の名前を書いている。
男子生徒は走り書き気味に名前を書き終えると、チョークを置いて振り返り自己紹介する。
「えっと、小松ワタルです。東京から来ました。よろしくお願いします」
先生はワタルの自己紹介を聞き終え、応える。
「はい、よろしくー」
クラスメイトの拍手をする音が教室に響く中、アキは机に頬杖をついて、ぼんやりと何かを考えているような表情で、そっと自分の右肩を見る。
アキの右肩には「クロコくん」が腰かけていて、アキと目を合わせつつ、周りのクラスメイトと一緒に拍手をしている。
アキは表情を変えないまま、周りの拍手が終わるころに遅れて、ゆっくりと小さく2回、音のない拍手をする。
先生がワタルに座席を伝え、続けて生徒たちに促すように話す。
「じゃあ、あそこの席。みんな、仲良くなー」
クラスメイトが返事をする。
「はーい」
ワタルが先生に指示された席へ向かう途中、アキの右肩に乗っている「クロコくん」を見つけて驚く。
「ええっ!」
「ク ク ク クク クク クロコッ!」
アキの肩の上の「クロコくん」が、ワタルのほうを見て、元気よく右手を上げる。
アキは大きく目を見開いてワタルを見ながら、ワタルに問いかける。
「あ、あんたも見えんの?」
ワタルはアキの右肩を指さしたまま、その場で固まっている。
画面が左右2つに分かれ、向かって左側にはワタルを見つめるアキの表情、右側には「クロコくん」を見つめるワタルの表情が映し出される。
ナレーション(アキとワタルの声)
「いい未来が、見えてきた」
「サプライジングセラミックス NGK 日本ガイシ」
メロディーが流れ終わる。
第3話「ノーフューチャー?」篇
これは全4話のストーリードラマ「いい未来が、見えてきた。」
第3話「ノーフューチャー?」篇、WEB限定ムービーの書き起こしテキストです。
登場人物
濱口アキ:主人公の一人。のどかな田舎で暮らす女子高生。理系科目が得意。デジタルに強く、実はかなりの腕のゲーマー。「アキーム」として配信を行っているがクラスメイトには秘密にしている。
クロコくん:アキの前に突然姿を現した謎の生物。(日本ガイシのキャラクター。くろこをモチーフにした全身黒づくめの衣装に、丸い大きな瞳が特徴。体長は約7.5センチ)
小松ワタル:もう一人の主人公。親の都合で、東京からアキの住む田舎へ引っ越してきた男子高校生。都会育ちで大のゲーム好き。東京とは違う田舎の環境に戸惑いを隠せないでいる。
ワタルの父
ワタルの母
引っ越し業者が段ボールをトラックから家の中へ運んでいる。
ワタルも段ボールをトラックから家の中へ運ぶのを手伝っている。
段ボールを持ったワタルが、家に入る前に、後ろを振り返り、浮かない表情で周囲を見たあと、ため息をつく。
「はぁー」
ワタルは再び家のほうへ向き、段ボールを家の中に運び込む。
ワタルがリビングで段ボール箱に寄りかかりながら、母に向かって話しかける。
「えー!Wi-Fi来てないの!?」
母はリビング横の台所で段ボール箱から紙に包まれた食器を取り出していたが、いったん手を止めてワタルのほうへ振り返る。
父が、リビングの床に置かれた段ボール箱から炊飯器を取り出しながら答える。
「工事に来てもらえるのが、明後日なんだよ」
母は父がワタルの質問に答える様子を見て、再び段ボール箱へ向き直し、食器を取り出し始める。
ワタルが不安そうに質問する。
「じゃあ、どうすんの?」
母がワタルのほうを向き、ワタルの質問に淡々と答える。
「別に大丈夫でしょ 2、3日ぐらい」
ワタルはいやそうな顔で答える。
「えー、マジかよー」
ワタルは寄りかかっていた段ボール箱を両手で運びながら振り返り、ため息をついてリビングから出ていく。
父は一瞬ワタルのほうを見るも、手を止めることなく作業を続けている。
母は手を止めてリビングの様子を見たが、すでにワタルの姿は無かったため、すぐに作業を再開する。
海と観覧車が見える丘の上の、カーブした道路の端で、ワタルが海のほうを向いて立っている。
メッセージの受信音が鳴る。
ワタルのスマホにメッセージが届く。
ワタルはスマホのメッセージアプリの画面を見ている。
けーすけ「引っ越し完了??」16時34分
メッセージの送信音が鳴る。
ワタルが、自分がいま見ている、海と観覧車が写った景色の写真を送る。16時36分 既読4
メッセージの受信音が鳴る。
ワタルが送った写真へのリプライが届く。
一馬「田舎wwww」16時36分
続けてメッセージの受信音が二回鳴る。
タクミ「良き景色ー」16時37分
syunya「イノシシとか出るんじゃね?」16時37分
メッセージの送信音が鳴る。
ワタルがメッセージを送る。
「文明が恋しい」16時37分 既読4
メッセージの受信音が鳴る。
けーすけ「No Future 笑」16時37分
スマホの画面を見ていたワタルが、スマホから目を離して顔を上げ、少し風を受けながら遠くを見つめる。
(ワタルの心の声)「ここに、オレの未来はあるんだろうか」
ワタルが、ふと、道路脇の草むらの中に立てられている「イノシシに注意」の看板を見る。
看板の内容
「イノシシに注意!!イノシシが出没しています。近づいたり、追いかけたりしないで下さい。立役島町」
ワタルは看板から目を離し、いやそうな表情でため息を吐く。
「はぁー」
メロディーが流れ始める。
ワタルが再び手に持っていたスマホを見ると、スマホの画面の上に、黒い生き物「クロコくん」が現れ、ワタルを見上げている。
ワタルは驚き、思わず声を上げる。
「えっ!?」
スマホをもう一度見ると、「クロコくん」はいなくなっている。
ワタルは不思議そうに、足下を見回す。
「えっ?あれ?なに今の」
ワタルが足下や周りをキョロキョロと見回す。
メロディーが流れ終わる。
突然、ワタルが立っている場所の左側の草むらで音がする。
「ガサガサッ」
ワタルは驚いて一歩後ずさりし、身構えながら音がした草むらの方を見ると、一部の草だけが風の影響とは違った揺れ方をしている。
ワタルが草むらを注視していると、その中に立っている「イノシシに注意」の看板が再び目に入る。
ワタルは草が揺れたあたりを気にしながら、数歩、後ずさりする。
草むらの一部が急に揺れ、音がする。
「ガサガサッ、ガサッ」
ワタルは驚いて叫び声を上げながら、慌てて逃げるように、草むらに背を向けてカーブした道路を全速力で走り下っていく。
「え?え?あ うわああああ」
アキが丘の上の公園で一人、ブランコに座っているシーンが映る。
ワタルが後ろを振り返りつつ、叫びながら走っている。
「うわっ!わっ!うわああああ!」
アキがブランコから立ち上がり、丘の下を走り去っていくワタルの様子を見ている。
夜の小松家の外観が映る。
ワタルがベッドで仰向けに寝転んで、スマホを右手で持ち上げて見ている。
ワタルはアキームのライブ配信を見ている。
(アキームの声)「いやいや、わかってないなー。つーまーりー、それって愛ってことでしょ!」
ワタルがアキームの話を聞きながら微笑む。
「ふふっ」
(アキームの声)「いや、絶対そうだって!その行動には愛を感じたね」
ワタルが笑みを浮かべながら画面を見入っていると、スマホの後ろから、いきなり「クロコくん」が顔を出す。
効果音「ポンッ!」
ワタルが思わず低い声で叫ぶ。
「うわ!!」
ワタルは驚いて、持っていたスマホを放り出し、ベッドの上で跳ね起き、床に落ちたスマホをじっと見つめる。
メロディーが流れ始める
「クロコくん」が床に落ちた裏向きのスマホの上で、右手を上げて立ち、軽快に踊り始める。
アキームのライブ配信は続いている。
ワタルは踊っている「クロコくん」を見て、ベッドの上で後ずさりするも、部屋の壁で行き詰まる。
ワタルが言葉になっていないような捨て台詞を吐きながら、ベッドから跳ね降りて自分の部屋を飛び出す。
「うわ、うわ、な、なんだオマエ」
リビングでワタルの両親がソファに並んで座り、テレビを見ているシーンが始まる。
父は体を起こしてテレビに集中しており、母はソファにもたれながらぼんやりと見ている。
母は階段を駆け下りてくる足音に気づき、リビングの入口のほうを見る。
父もつられてリビングの入口のほうを見ると、ワタルが焦った表情で母に話しかけながら駆け寄ってくる。
「ねぇねぇ、部屋に何かいる!」
母がすぐに聞き返す。
「なんかって何よ」
ワタルがあたふたしながら答える。
「えっ、なんか、黒い生き物」
母が確認するように繰り返す。
「黒い生き物!?」
ワタルがうなずく。
「うん、うん」
メロディーが流れ終わる。
母が気味悪がって、左隣の父のほうを向く。
「やだぁ」
父はワタルを見ながら話しかける。
「なんだろう、ネズミかなぁ」
母がすかさず父を促す。
「ちょっとお父さん、見てきてあげて」
父は困りながら嫌がる。
「えぇー」
母が嫌がる父をなおも促す。
「お父さーん、行ってきてよ。ほーらー、はやくー」
ワタルが父と母の進まないやりとりから目をそらすと、テレビの画面がワタルの目に入る。
ワタルは引き寄せられるようにテレビに近づき、画面を注視する。
(キャスターの声)「CO2を回収することで、地球温暖化防止にも役立ちます」
テレビの画面には、NGK日本ガイシのセラミック技術を説明するイラストの横に、虫眼鏡を持った「クロコくん」が動いている映像が映っている。
(キャスターの声)「まさに、このセラミックフィルターは「分子のふるい」なのです」
ワタルがテレビ画面に顔を近づけて、映像を見つめながらつぶやく。
「ク ク クロコ?」
メロディーが流れ始める。
テレビ画面の中の虫眼鏡を持った「クロコくん」が、ワタルのほうを見て、パチパチっと2回まばたきをする。
ワタルも思わずパチパチっと2回まばたきをする。
ナレーション(アキの声)
「いい未来が、見えてきた」
「サプライジングセラミックス NGK 日本ガイシ」
メロディーが流れ終わる。
最終話「いい未来が、見えてきた。」篇
これは全4話のストーリードラマ「いい未来が、見えてきた」
最終話「いい未来が、見えてきた」篇、WEB限定ムービーの書き起こしテキストです。
登場人物
濱口アキ:主人公の一人。のどかな田舎で暮らす女子高生。理系科目が得意。デジタルに強く、実はかなりの腕のゲーマー。「アキーム」として配信を行っているがクラスメイトには秘密にしている。
小松ワタル:もう一人の主人公。親の都合で、東京からアキの住む田舎へ引っ越してきた男子高校生。都会育ちで大のゲーム好き。東京とは違う田舎の環境に戸惑いを隠せないでいる。
クロコくん:アキの前に突然姿を現した謎の生物。(日本ガイシのキャラクター。くろこをモチーフにした全身黒づくめの衣装に、丸い大きな瞳が特徴。体長は約7.5センチ)
黒板に走り書き気味で「ワタル」と書いている手元が大きく映し出される。
字を書き終えた男子生徒がチョークを置いて振り返り自己紹介する。
「えっと、小松ワタルです。東京から来ました。よろしくお願いします」
クラスメイトの拍手をする音が教室に響く中、アキは机に頬杖をついて、ぼんやりと何かを考えているような表情をしている。
アキの右肩には「クロコくん」が腰かけていて、周りのクラスメイトと一緒に拍手をしている。
アキは表情を変えないまま、遅れてゆっくりと小さく2回、音のない拍手をする。
先生がワタルに座席を伝え、続けて生徒たちに促すように話す。
「じゃあ、あそこの席。みんな、仲良くなー」
クラスメイトが返事をする。
「はーい」
ワタルが先生に指示された席へ向かい、アキの机の横を通過しようとしたとき、突然、大声で驚く。
「ええっ!」
クラス中が驚きと共に静まり返る。
アキは驚いて顔を上げ、目の前でアキのほうを見つめて立ちすくんでいるワタルを見る。
ワタルが2度、3度と瞬きをしながら言葉を絞り出す。
「ク ク ク クク クク クロコッ!」
アキの肩の上の「クロコくん」が、ワタルを見ながら元気よく右手を上げる。
アキは大きく目を見開いてワタルを見ながら、ワタルに問いかける。
「あ、あんたも見えんの?」
ワタルはアキのほうを見つめたまま、その場で固まっている。
終業のチャイムの音が鳴り、緑に囲まれた学校の外観が映る。
生徒達が学校の昇降口で、上履きから下履きへ履き替えているシーンが始まる。
アキが自分の靴箱へ歩いて行き、靴を取り出している。
ワタルが小走りでアキを追いかけていき、後ろからアキに声を掛ける。
「あの」
アキは目を見開いて少し驚いた様子で振り返り、ワタルを見る。
ワタルは真剣な表情でアキを見つめている。
メロディーが流れ始める。
アキとワタルが下校しているシーンが始まる。
アキとワタルは、住宅街の長い上り坂を二人並んで無言で歩いている。
アキが前を向いたまま、ワタルに話しかける。
「私も、最近見えるようになった」
ワタルはアキのほうを向いて話す。
「オレは、ここに引っ越してきてからで」
アキがワタルのほうを向いて淡々と答える。
「ふーん」
アキとワタルがまた、しばらく無言のまま歩いている。
アキは前を向いて歩きながらもワタルの様子が少し気になっている。
今度はワタルからアキに話しかける。
「アレって何なの?ここら辺の妖怪?」
アキは、真剣な表情で問いかけてくるワタルを見て、おかしそうに微笑みながら前を向き直すと、少し歩くスピードを上げながら面白がって復唱する。
「ふふふふっ。妖怪」
ワタルがアキの様子を見て思わずつぶやく。
「えっ」
アキが歩きながら一瞬振り返って、真剣な表情のままのワタルを確認すると、また微笑みながら前を歩く。
「ふふふふっ」
ワタルは、アキの様子を見て理解ができず、またつぶやく。
「えっ」
アキは微笑みながら前を歩き、ワタルは怪訝そうな表情で後ろを歩いている。
アキとワタルが、バスに乗っているシーンが始まる。
アキとワタルは、二人掛けの席に横並びで座っている。
「クロコくん」が二人、アキとワタルの前の席の背もたれの上に、横並びで座っている。
アキは窓の外を見ている。
ワタルが車内を見回すと、イヤホンで音楽を聴いている乗客の右腕にいる「クロコくん」や、
スマホを見ながら立っている乗客の肩に乗った「クロコくん」、オレンジ色の手すりに設置された降車ボタンの近くにいる「クロコくん」が見える。
ワタルが横にいるアキを見ると、アキはずっと窓の外を見ている。
ワタルは何かを考えているような表情で正面を向き直す。
アキとワタルの前の席の背もたれの上に「クロコくん」たちが腰掛けている。二人の「クロコくん」は、身振り手振りで楽しそうにコミュニケーションをとっている。
メロディーが流れ終わる。
アキとワタルが幹線道路の歩道にいるシーンが始まる。
ワタルはアキよりも先に、一人で歩道脇のフェンスへ近づいていき、フェンスの中を眺めながら声を上げる。
「うーわぁー。めっちゃいる。でも、何ここ?」
フェンスの中の敷地には、「NAS」「NGK日本ガイシ」と書かれた大きなコンテナのような物体が並んでおり、そのまわりでたくさんの「クロコくん」たちが活動している。
アキもフェンスへ近づき、ワタルの横に並んでフェンスの中を見つめながら話し始める。
「これね、NAS電池って言うんだって」
アキのほうを向いて話を聞いていたワタルがアキに問い返す。
「電池?」
アキがワタルのほうを向いて答える。
「そう」
アキとワタルが目を合わせたあと、二人とも再びNAS電池のほうを向き、アキは話を続ける。
「もし大きな災害とかがきて、街の電力が途絶えちゃったりしても、この電池を使えば数日分、街の電力が持つらしいよ」
アキは話し終えると、ワタルの様子を見る。
ワタルはアキの話を聞き終えると、感心しながらアキを見るが、すぐにまた前を向いてフェンスの中を見つめる。
「へーすげぇ」
アキもまた前を向き、フェンスの中を見つめながら更に話を続ける。
「しかも、環境にも優しいんだって」
ワタルはアキの話に納得するが、ふと不思議そうな表情でアキを見ながら問いかける。
「それと このクロコたちがなに?」
アキはワタルの様子を見て優しく微笑むと、その場で急に振り返り、ワタルをおいて無言で歩き出す。
ワタルは何が起こったのか分からず戸惑いながらも、アキを追いかけるように歩き出す。
NAS電池のまわりで「クロコくん」たちがコミュニケーションを取りながら活動している様子が映し出される。
メロディーが流れ始める。
アキとワタルが高台にある公園の芝生の上に横並びで立ち、海と山、町、港の見える景色を眺めているシーンが始まる。
アキが前を向いたまま話し始める。
「私のお父さんね、日本ガイシで働いてんの」
ワタルが確認するように繰り返す。
「日本ガイシ?」
アキがすぐに答える。
「そう。N、G、K!」
アキが楽しそうな笑顔で、急にワタルのほうを向いて見つめる。
ワタルは静かに驚く。
「え?」
アキはワタルの様子を見て微笑む。
「ふふっ」
アキとワタルのそばにある岩の上では、二人の「クロコくん」が景色を眺めている。
アキは前へ向き直し、話を続ける。
「今までどんな仕事してんのか、よく知らなくてさ、話聞いてもいまいち、よく分かんなかったんだけど」
アキが岩の上の「クロコくん」たちを指さしながら話す。
「これだった」
前を向いていた「クロコくん」たちは、アキとワタルのほうへ振り返り、首をかしげる。
アキは微笑みながら、また前へ向き直し、話し続ける。
「スマホつくる人、車つくる人、街つくる人、エネルギーつくる人」
「そんないーっぱいいる、世界中のクリエイターたちを、見えないところから支えてるんだって」
ワタルはアキの話を聞いて、岩の上の「クロコくん」たちを見ながら話す。
「だからクロコ」
アキが少し誇らしげな様子で話す。
「なんか、ちょっとかっこいいなって思った」
ワタルはアキの様子を見て微笑むが、ふと気付いたように、アキに問いかける。
「えっ。でも、結局は何をやってるの?」
アキは急に真面目な表情になり、ワタルのほうを向くと、ゆっくりと答える。
「カーボンニュートラルや」
ワタルは棒立ちになったまま、アキに問い返す。
「は?なんて?」
アキはワタルに向かって微笑みながら、右手の人差し指を立てて3回、言葉に合わせて振る。
「つーまーりー」
アキは前のほうへ向き直し、遠くを見ながら答える。
「まぁ、未来にええこと、しとるわけよ、コイツらは」
アキが近くの岩の上にいる「クロコくん」たちを見て、屈みながら「クロコくん」たちに語りかける。
「なっ?」
「クロコくん」たちは、アキに向かって親指を立て、GOODサインで答える。
アキも笑顔で「クロコくん」たちに向かって、GOODサインを返す。
ワタルはアキと「クロコくん」たちの様子をそばで見ていたが、段々と眉間にしわを寄せながら、何かを考えている。
アキはワタルに声を掛けると、ワタルの後ろを通って歩き出す。
「そろそろ帰ろっか」
ワタルはアキの呼びかけが耳に入らない様子で、手を動かしたり、眉間に手を寄せたり、何かを思い出そうとしながらつぶやく。
「つーまーりー」
「え、なんかどっかで聞いたことあるような」
メロディーが流れ終わる。
アキは振り返ってワタルの様子を見つつ、後ろ向きに歩きながら、ワタルに呼びかける。
「なにー?どうした?おいてくでー」
アキは再び前を向いて歩き出す。
ワタルが何かを思い出したように、声を上げる。
「あぁ!ははっ」
いきなり声を上げたワタルに気づいたアキは、振り返ってワタルのほうを向く。
ワタルはアキと向かい合いながら、右手の人差し指を立てて、口ずさむ言葉に合わせて振る。
「つーまーりー!」
ワタルは思わず笑顔になり、一瞬アキから目を離すが、再度アキのほうを見て、指をさしながら叫ぶ。
「アキーム!?」
メロディーが流れ始める。
アキは驚いて息をのみ、目を大きく見開いてパチパチと瞬きをしながらワタルを見る。
ワタルは嬉しそうな笑顔でアキを見ている。
青空のもと、複数の大きな風力発電の風車が海岸線に並んで立っている様子を空撮したシーンが映し出される。
ナレーション(アキとワタルの声)
「いい未来が、見えてきた」
「サプライジングセラミックス、NGK、日本ガイシ」
アキは驚いた表情のあと、微笑みながら、はぐらかすように斜め上へ目線を外す。
メロディーが流れ終わる。