ニュース 2026年

世界初 研究開発から量産まで一貫して利用可能なセラミック膜LNP形成装置を開発
次世代mRNA医薬の円滑な開発・製造に貢献

企業製品・技術株主・投資家

NGK株式会社(社長:小林茂、本社:名古屋市)は、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンなどの医薬品に用いられる脂質ナノ粒子(LNP:Lipid Nano Particle)の形成装置の開発を開始しました。独自のセラミック膜を採用した新たな方式により、医薬品の研究開発から量産まで同じ原理で利用できる製造技術の実現を目指します。本技術は、次世代医薬品の開発・製造におけるスケールアップ課題の解決に貢献するものであり、研究開発から量産まで一貫して利用可能なセラミック膜を用いたLNP形成装置として世界初となります。

開発したLNP形成装置の概要

 LNPは、薬効成分を守りながら細胞へ届ける役割を持つナノサイズの脂質のカプセルです。新型コロナウイルスワクチンなどに用いられるmRNAは体内で壊れやすいため、mRNA医薬品には欠かせない技術です。
 このたび開発したLNP形成装置は、NGK独自のセラミック膜を用いてLNPを形成します。LNPは、脂質を含む液体(脂質液)と薬効成分を含む液体(薬効成分溶液)を細かく混合することによって形成されます。薬効成分溶液がセラミック膜の表面に沿って流れているところに、脂質液がセラミック膜の無数の孔を透過して均一に供給されることで、膜表面で両液が緻密に混合され、薬効成分を包み込んだLNPが形成されます。

NGKのLNP形成装置の紹介(動画)

特長

研究開発から量産まで同じ原理で製造可能(スケーラビリティー)

 LNP形成では、研究開発段階と量産段階で求められる生産規模が大きく異なるため、研究開発段階ではマイクロ流路法※1、量産段階では金属を用いた膜乳化法やT-ジャンクション法※2など、開発の途中で製造方法を切り替える必要があります。一方で、製造方法の変更によってLNPの品質や特性が変化する可能性があることから、研究開発から量産まで同じ混合原理で製造できる技術が求められていました。
 当社のLNP形成装置は、使用される液量に応じて有効膜面積や気孔率を変更することで、研究開発から量産までの生産規模で同じ原理で混合することができる設計であるため、開発から生産への円滑な移行に寄与します。医薬品製造の受託・販売を手がける太陽ホールディングス株式会社(本社:東京都豊島区)との共同評価では、中程度の生産規模では金属を用いた膜乳化法より形成性能が優れていることが確認できています。

狙ったサイズのLNPを安定して製造可能

 LNPは大きさによって体内での働きが変わり、医薬品としての性能にも影響します。NGKの技術では、均一な細孔径を持つセラミック膜により、粒子サイズの揃った高品質なLNPを形成できます。
 太陽ホールディングス株式会社と、薬物送達システムの研究・開発のコンサルティングを進める合同会社DDS戦略ファーム(本社:東京都江東区)との共同評価では、従来技術で製造したLNPと比較して、幅広い製造条件で粒子の特性や機能が同等であることが確認できました。

シングルユース対応・高い耐薬品性

 従来の量産では、使用済みの膜を洗浄し再利用する方式のため、コストと手間がかかるという課題がありました。セラミック膜は容易に交換可能なため、シングルユースでの運用による工程の効率化に寄与します。洗浄工程の削減や製品切り替えの迅速化、交差汚染リスクの低減に加え、多品種生産にも柔軟に対応可能です。
 セラミック膜は、化学的安定性が高くさまざまな溶媒に使用できるため、新薬開発における多様な製造条件への採用に適しています。

  1. ※1マイクロ流路法 : 微細な流路内で液体を精密に混合し、均一なLNPを形成する方法
  2. ※2T-ジャンクション法 : T字型の流路で2種類の液体を瞬時に混合し、LNPを形成する方法

開発の経緯 

 当社は、2030年に新事業で売上高1,000億円以上を目指す「New Value 1000」のもと、独自のセラミック技術を生かした新製品・新事業の創出に取り組んでいます。 
 NGKグループは、セラミック膜フィルター「セフィルト」をはじめとする膜製品の開発・提供を通じて、バイオ・化学分野を中心にセラミック膜の活用を進めてきました。セラミック膜は、高い耐薬品性や化学的安定性を有し、多様な薬液や有機溶媒を使用する医薬品の研究・製造プロセスとの親和性が高い材料です。LNPをベースにした医薬品は、2036年度に480億米ドル規模※3に達する見込みの有望な市場であることから、長年培ってきたセラミック膜技術を活用したLNP形成技術の開発を2025年度より本格的に開始しました。

  1. ※3出典 : Nature Reviews Drug Discovery「The landscape for lipid-nanoparticle-based genomic medicines」2023年1月10日

今後の展望

 当社は本技術を、mRNA医薬の実用化を支える新たな基盤技術と位置付けています。今後は、国内外の製薬企業やCDMO(医薬品開発製造受託機関)、研究機関との共同評価を進めるとともに、研究開発規模での性能向上や量産化に向けた技術開発を推進します。
 NGKグループは、研究開発から量産までをシームレスにつなぐLNP形成技術の提供を通じ、mRNA医薬をはじめとする次世代医薬品の開発・製造の効率化に貢献していきます。


セラミック膜を用いたLNP形成装置の概要

関連情報

以上