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course 01セラミック材料基礎講座・入門編 05

セラミックスは電気を通さない?

電気の発見に伴い、電気を通す性質を持つ物質(導電体)と、電気を通さない性質を持つ物質(絶縁体)があることが分かりました。セラミックスは電気を通さない性質を持つ材料として古くからがいしとして利用されてきました。今回はセラミックスの代表的な特徴の一つである電気を流さない性質(絶縁性)に関して紹介します。

電気とは

物質を構成する最小単位が原子であり、原子はプラスの電気を帯びた原子核とマイナスの電気を帯びた電子から成り立っていることは、皆さんご存じかと思います。電気として一般的に利用されているのは、この原子から取り出された電子のことです。金属では原子の外側の電子を放出してプラスに帯電した金属イオンとなって結合しており、この放出された電子が金属の中を自由に動き回る事ができるので電気を流すことができます。(自由電子)

一方、セラミックスにはイオン結合と共有結合の二つの結合様式があります。イオン結合したセラミックスでは、金属原子の外側の電子は放出されますが、この電子は非金属原子に取り込まれて金属原子はプラスイオン、非金属原子はマイナスイオンになっており、自由に動ける電子がありません。もう一つの結合様式である共有結合では、電子を取り込む性質をもつ非金属原子同士が互いの電子を取り込んで結合しているため自由に動ける電子がありません。このようにセラミックスには自由に動ける電子がないので金属のように電気が流れません。この性質を利用して送電線を支えるがいしなどの絶縁体として利用されてきました。

金属結合
イオン結合
共有結合

セラミックスで電気を利用するには?

しかしながら、絶縁体のがいし以外にもNAS電池など電気を利用する製品にセラミックスが使われています。このような製品ではセラミックスにどうやって電気を流しているのでしょうか? NAS電池ではベータアルミナというセラミックスが使われておりそのセラミックスの結晶の中を電子ではなくナトリウムイオン(Na+)が移動して電気を運んでいるのです。NOXセンサーやSOFC(固体電解質燃料電池)では酸素イオン(O2)、EnerCeraではリチウムイオン(Li+)、ニッケル亜鉛電池では水酸イオン(OH)を動かすことによりセラミックスでも電気を流すことが可能になっています。

電子が流れないセラミックスですが、電気を帯びたイオンを動かすことで蓄電や発電、そしてガスの濃度を測定したりと多彩な機能をもつ製品が開発されているのです。

NAS電池の動作原理図を例に、充電と放電の際にナトリウムイオンが電子を運ぶ様子を説明します。

充電

正極側で多硫化ナトリウム(Na2Sx)が電子(e-)を受け取って硫黄(S)とナトリウムイオン(Na+)に分かれ、ナトリウムイオンはベータアルミナ中を右から左方向に移動、負極側で電子がナトリウムイオンと結合して金属ナトリウム(Na)になります。負極側では金属ナトリウムが増えて行き、正極側では多硫化ナトリウムが減って硫黄に変わります。スイッチは電源につながり、電子は電源から供給されて負極側で金属ナトリウムとなって蓄えられます。

充電の図

放電

負極側で金属ナトリウムが電子を放出してナトリウムイオンとなってベータアルミナ中を左から右方向に移動し、正極側では硫黄が電子をもらって硫黄イオンになりナトリウムイオンと結合して多硫化ナトリウムに変化していきます。スイッチは負荷につながり電球は点灯します。電子は金属ナトリウムから供給されて負荷の電球を点灯、正極側では硫黄が電子を受け取って硫黄イオンとなりナトリウムイオンと結合して多硫化ナトリウムとなります。

放電の図