一般的に熱に強いといわれるセラミックス。その理由はセラミックスを構成する原子の結合様式にあります。金属に比べて原子同士が強く結び付いているセラミックスは、溶ける温度(融点)が金属より高いものが多く、熱の伝わり方も異なります。今回は、セラミックスがなぜ熱に強いのかということと、熱の伝わり方とについて紹介します。
原子同士の結び付きが強いセラミックスは融点が高い傾向にあります。例えばアルミニウム(金属)の融点が660度であるのに対して、セラミックスの一つであるアルミナ(アルミニウムの酸化物)の融点は約2,000度です。アルミナは酸化物のため高温の大気中でもさらに酸化されることなく安定しています。そのため、この高温に耐えられる「耐熱性」を持っているのです。これが熱に強いといわれる理由です。
1グラムのセラミックスと金属の温度をそれぞれ1℃上げるために必要な熱エネルギー量「比熱」は、どちらも水よりも小さくそれほど大差ありません。しかしながら、熱の伝わり方を示す「熱伝導率」に関しては大きなばらつきがあります。
金属では自由に動き回れる電子(自由電子)が熱エネルギーを金属イオンに伝えるため、熱伝導率は高く熱がよく伝わります。一方、自由電子のないセラミックスでは、熱エネルギーは音の振動が伝わるように原子に伝わります。この場合、構成している原子の質量比や結合様式、さらに結晶構造や微構造などの条件が影響し、熱伝導率は金属並みの値を示す材料から、その100分の1程度の小さい値を示す材料まで大きなばらつきが出てきます。例えば窒化アルミニウムは熱伝導率が高く、ジルコニアやコージェライトなどは低い熱伝導率を示します。
高い融点と小さな熱伝導率を持つセラミックス材料は、高温に強く加熱されても熱が伝わりにくいため、溶鉱炉や焼成炉などの高温に加熱される部分の断熱に適しており、耐火物材料として利用されています。
NGKグループではセラミックス特有の「耐熱性」の高さを生かして、耐火物や自動車排ガス浄化用の「ハニセラム」、ディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)などを作っています。
そもそも「熱」とは何でしょうか。物質を構成している原子は常に振動をしています。その原子の振動が熱の正体であり、高温の物質では低温の物質よりも原子が激しく振動しており高温の物質から低温の物質に熱が伝わります。
分類 | 材料名 | 融点 | 熱伝導率 | 比熱 |
---|---|---|---|---|
℃ | W/m℃ | cal/℃g | ||
金属材料 | 鉄(Fe) | 1,535 | 84 | 0.11 |
銅(Cu) | 1,085 | 403 | 0.09 | |
アルミニウム(Al) | 660 | 236 | 0.22 | |
セラミックス | アルミナ(Al2O3) | 2,030 | 35 | 0.19 |
ジルコニア(ZrO2) | 2,700 | 4 | 0.11 | |
コージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2) | 1,450 | 2 | 0.17 | |
窒化アルミニウム(AlN) | 2,516 | 170 | 0.17 | |
炭化ケイ素(SiC) | 2,700 | 100 | 0.16 |