ceramic academy
course 03セラミック材料ものづくり講座 08

「加工」セラミックスを削る

製品に仕上げる最終工程

加工前のセラミック製品は、焼成工程までに収縮や表面状態の変化が起こるなど、そのままでは製品として出荷できない状態になっているのが一般的です。加工工程ではこれらの影響を取り除き、目的通りの形状や特性を持った製品に仕上げていきます。

完成度はクラックで決まる

今回紹介するのは、工具で素材を削って形を整える「研削」です。これは外から力を与えて加工する方法で、セラミックスの代表的な加工技術のひとつです。基本的な加工の流れとしては、アイスピックで氷を砕いて形づくる氷の彫刻と同じといえます。この加工を施すうえで重要なポイントとなるのが、氷の表面に発生するクラック(亀裂)。アイスピックの衝撃で発生した多数のクラックのうち、大きなものはこれを起点に破片となって割れ落ち、小さなものはひびとなって氷の内部に残ります。このひびの部分に横方向の力をさらに加えることで表面を削り取り、形を整えていくのです。表面の滑らかさや彫刻の微細さなどのでき映えは、残留するクラックをいかに小さく、かつ意図した方向に発生させるかによって大きく左右されます。

アイスピックで砕いてクラックを発生させる作業と、クラックに横方向の力をかけて削り取る作業の繰り返しで形ができていく

クラックを制御する

研削では、工具の磨耗や破損を防ぐために製品より硬い素材を使うのが一般的で、セラミックスの研削にはダイヤモンドを使用します。アイスピックで砕く代わりにたくさんのダイヤモンドを取り付けた円盤(砥石)を回転させて使うことで、セラミックスを連続的に、かつ微細に削ることができます。ただしクラックは製品の研削に必要不可欠である一方、製品内に残ると性能の劣化や使用中の破損を引き起こすという面も持ち合せているため、クラックをより細かく制御する技術が必要となります。

微細なダイヤモンドを使ってセラミックスを削る。
砥石を回転させることで、連続的な作業が可能。

ここで大切なのが、ダイヤモンド砥石の粒の大きさや削る時の力加減といった加工条件を製品の素材に合わせて選定すること。また素材や加工方法、装置などの特性をよく理解することはもちろん、でき映えを評価する方法を確立することも重要です。日本ガイシでは長年培ってきたセラミック加工技術を駆使し、クラックの大きさと均一性をミリ単位ではなくマイクロメートル単位、最近ではナノメートル単位まで制御することで、より高精度な製品を作り出しています。

加工技術を組み合わせる

加工にはこのほかにも、レーザーのような熱エネルギーや薬品などの化学エネルギーを利用した技術があり、超微細なナノメートル単位の加工に使われています。今後は工具で削る単一的な加工だけではなく、いくつかの技術を組み合わせる複合的な加工やナノテクノロジーを用いて速く微細に加工できる方法を追究していきます。

参考文献
(1)セラミック加工ハンドブック 今中 治編 日刊工業新聞社
(2)セラミックスの超精密加工 ニューセラミックス懇話会編 日刊工業新聞社