course02ではセラミックスの耐熱性と熱の伝わり方について紹介しました。それでは、熱に強いセラミックスは急な温度変化にも耐えられるのでしょうか? 一緒に考えてみましょう。
物質は温度が高くなると、原子が激しく振動して原子間の距離が広がりその長さや体積が増加します。この現象を「熱膨張」と呼び、温度が1度上がった時に膨張する割合を示したものが「熱膨張係数」です。この値が大きいほど物質はより大きく熱膨張します。
冷たい板状の物質を片側から急加熱すると加熱側では温度が高くなります。この時、加熱側は熱膨張して横に伸びるため、温度の低い側では強く引っ張られる力が働きます。例えば熱膨張係数の高いガラスのコップに熱湯を注ぐと割れてしまうのも、この力が関係しています。引っ張られる力は熱膨張係数と温度差に比例して大きくなるため、熱膨張係数が小さいほど急な温度変化に耐えられます。
同じ種類の原子が集合した単純な構造の金属では10ppm/℃以上の大きな熱膨張係数を示す材料が多く、温度が変化するとその長さも大きく変化します。一方で、異なる種類の原子同士が組み合わさって複雑な構造をしているセラミックスでは、熱膨張係数が10ppm/℃から1ppm/℃程度の物までさまざまです。例えば熱膨張係数が1ppm/℃のコージェライトセラミックスは温度が変化してもほとんど長さが変わらないため、急な温度変化に強い材料と言えます。
※1ppm/℃=温度が1度上がると100万分の1の割合で寸法が増加することを示す単位
分類 | 材料名 | 熱膨張係数 |
---|---|---|
ppm/℃ | ||
金属材料 | 鉄(Fe) | 12 |
銅(Cu) | 17 | |
アルミニウム(Al) | 23 | |
セラミックス | アルミナ(Al2O3) | 8 |
ジルコニア(ZrO2) | 10 | |
コージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2) | 1 | |
窒化アルミニウム(AlN) | 5 | |
炭化ケイ素(SiC) | 4 |
NGKグループはコージェライトセラミックスの特性を生かして、自動車排ガスの高温や急激な温度変化に耐えられる、自動車排ガス浄化用セラミックス触媒担体「ハニセラム」を作っています。世界中の自動車メーカーに採用され、生産累計は約16億個に上ります。(2020年1月現在)