熱膨張係数が小さく、急な温度変化に強いコージェライト。NGKグループではこのコージェライトの優れた特性を生かして、排ガス浄化用触媒担体「ハニセラム」を作っていることを前回紹介しました。コージェライトの特性がどのように発現されるのか、ハニセラムを例に見てみましょう。
ガラス以外の固体は、原子や分子が規則的なパターン(結晶構造)を持っています。異なる原子の組み合わせの分子からなるセラミックスは複雑な結晶構造を持つものが多く、コージェライトもその一つです。コージェライトはマグネシウム、アルミニウム、シリコン、酸素を構成元素とする結晶で、六角形の「たる」のような形をしています。加熱されると結晶の径方向は膨張し、高さ方向は縮む、少し変わった性質を持っています。
ハニセラムはコージェライト結晶を焼き固めたハニカム(蜂の巣)構造の製品です。ハニセラムでは急な温度変化が起きても壊れないように、熱膨張係数を小さくする工夫をしています。焼成後にコージェライト結晶がハニカムの壁の中で横倒しになるように並ぶようにすることでハニカムの長さ・太さ方向の熱膨張係数を小さくしています。熱膨張係数が小さいほど急な温度変化に耐えられることは「01-03 セラミックスは急な温度変化に強い?」で説明した通りです。
ではどのようにして壁の中の結晶の方向をそろえるのでしょうか? ハニセラムは天然原料のカオリンやタルクを主な原料としています。これらの原料は、成形用口金の中で詰まらないよう微細に粉砕されてふるいにかけられます。粉砕後の粒子の大きさばかりでなく形状を精密にコントロールすることで、原料が口金を通過して成形される時に成形体の壁の中の原料粒子の方向がそろい、この成形体を焼成することでコージェライト結晶の方向がそろったハニセラムができ上がります。