機器や装置、構造物などを構成する部品(構造部品)に使われるセラミックスを「構造用セラミックス」といいます。構造用セラミックスでは、機械的、熱的、化学的な性質が重要視されます。これに対して、電気的性質や磁気的性質、光学的性質などを主として利用するものを機能性セラミックスと呼び、一般に区別されています。
構造用セラミックスとして古くから使われている例に、耐火物や陶磁器、タイル、レンガなどがあります。これらはセラミックスの硬くて耐熱性があり、また、耐食性に優れている特性を利用していました。しかし、従来のセラミックスは、天然原料をそのままに近い形でしか利用できなかったため、安定な特性を持った工業製品を作り出すことは困難でした。近年、高純度の原料が生産されるようになり(更には自然界には存在しない物質原料も生産され)、製造技術も格段に進歩したおかげで、非常に優れた特性を持ちながら、一定の品質を保つことが可能となり、用途が広がってきました。現在では、構造用セラミックスとしての応用製品は、自動車部品、精密機械部品、化学機械部品、工具、スポーツ用品、家庭用品などさまざまな分野に広がっています。
セラミックスは、一般的には、硬い、軽い、変形しにくい、耐熱性がある、腐食しにくい、熱膨張が小さい、磨耗しにくい、電気を通さない、といった性質があります。これらの性質を金属と比較してみましょう。上に書きました性質を材料の特性におきかえて、代表的な値を一覧表にしました。セラミックスと一口にいってもその種類によって特徴がありますし、金属も多種多様ですので、おおよそのイメージをつかんでいただければと思います。なお、超硬合金は、セラミックスと金属の複合材料といった方が正しく、高強度で硬いですが、比重が大きい材料です。
性質 | 特性 | セラミックス | 金属 | |||||
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ジルコニア | アルミナ | 炭化ケイ素 | 窒化アルミニウム | 超硬合金 (WC-Co) |
ステンレス (SUS304) |
アルミニウム | ||
硬い | 硬度、HV | 1100 | 1800 | 2200 | 1000 | 1400-2000 | 200 | 30 |
軽い | 比重(g/cm3) | 6.1 | 3.9 | 3.2 | 3.4 | 14 | 7.9 | 2.7 |
変形しにくい | ヤング率(GPa) | 200 | 400 | 450 | 320 | 570 | 193 | 70 |
耐熱性 | 融点(°C) | 2700 | 2050 | 2600 | >2000 分解 |
1500 (Co融点) |
1400 | 660 |
腐食 | 耐食性 | 中~高 | 低~中 | |||||
熱膨張 | 熱膨張係数 (×10-6/°C) |
10 | 8 | 4 | 5 | 5 | 17 | 23 |
電気絶縁性 | 体積抵抗率 (Ωcm) |
1013 | >1014 | 105 | >1014 | 10-5 | 10-5 | 10-6 |
構造用セラミックスの硬くて変形しにくい特性は、一方では欠けやすいなどの脆いという弱点でもあります。大きな力がかかった時、金属のように塑性変形することなく、強度の限界に達すると一気に破壊してしまいます。ですから、そのような弱点を知った上で、一点に大きな力がかからないようにする設計が重要になります。一方で、脆さを克服するためのさまざまな手法が提案されており、強くてタフな材料も開発されています。
耐食性については、セラミックスが基本的に化学的に安定で、酸やアルカリなど種々の薬液や、腐食ガスとの反応性が低いということがいえます。どのような薬液、ガスに強いかというのは、それぞれのセラミックスの種類によって異なります。