1.単結晶とは?

これまでの講座では、各種セラミックスの特徴や用途について説明してきました。これまで見ていただいたように、セラミックスは同じ材料でも、製造方法や形態により、様々な機能が発現します。それでは、セラミックスを構成する粒子の方位をそろえ、究極まで緻密化するとどんな物質になるのでしょうか?

その物質のどの部分を見ても、任意の結晶軸の向きが同一であったなら、それは「単結晶」と呼ぶことができるでしょう。

粒界などの微構造が特性に影響を与えるセラミックスと異なり、単結晶では物質そのものの持つ特性が顕著に表れます。それは電気的な特性であったり、機械的な特性であったり、光学的な特性であったりします。これらの特徴を活用して、さまざまな工業分野で単結晶応用製品が実用化されています。

単結晶とは

図1.単結晶とは

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2.単結晶の応用

私たちの身の回りにある工業製品の中には、多くの単結晶が用いられています。
現在、最も多く使用されている単結晶はシリコンです(図2)。シリコン単結晶はICやLSIとして、ありとあらゆるエレクトロニクス機器の中に使われているといっても過言ではありません。その他にも、各種半導体素子、トランス、センサ、太陽電池等々、広い範囲にわたって使用されており、単結晶の生産量は年間7000トン以上にもなります。シリコンに次いで多く使用されているのは水晶です。優れた圧電特性を活かし、振動子や発振器、フィルターなどとして、時計やエレクトロニクス製品に組み込まれています。また、良好な光学特性や安定性から光学部品にも広く応用されています。GaAs、GaP、GaNといった化合物半導体はLEDやLD(レーザーダイオード)として、エレクトロニクス機器の表示ランプや光ディスク用のピックアップ、光通信機器などに用いられています。またシリコンと比較して早い電子移動度を活かして、携帯電話等に必要な高周波電子デバイスにも使用されています。
他にもサファイアに代表される光学単結晶や、フィルター材料としてのタンタル酸リチウムなどが各種製品に用いられています。また、工業用以外に宝飾用としても、ルビー、サファイア、エメラルドといった人工宝石が製造されています。

シリコン単結晶写真

図2.シリコン単結晶写真

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3.単結晶の製造方法

単結晶の製造は通常「結晶育成(Crystal Growth)」と呼ばれます。結晶育成法には大きく分けると、気相法、液相法、固相法があります。これらはさらに多くの方法に分類することが可能であり、目的とする材料によって、最適な方法が選ばれます。代表的な単結晶育成方法として、シリコン育成に用いられるチョコラルスキー法、水晶育成に用いられる水熱合成法、光学単結晶育成に多用されるフラックス法などが挙げられます。

  分類 主な育成方法
単結晶育成法 気相法 昇華法
化学気相成長(CVD)法
HVPE法
液相法 融液成長法 チョコラルスキー(CZ)法
フローティングゾーン(FZ)法
ブリッジマン法
溶液成長法 フラックス法
TSSG法
水熱合成法
固相法 固相反応法
ゾルゲル法

表1.単結晶育成方法の分類

それぞれの結晶育成技術の詳細は専門書(例えば、参考文献など)に委ねることにして、このアカデミーでは、日本ガイシのセラミック技術を活用した結晶育成法である「固相反応法」についてご紹介いたします。

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4.固相反応法

固相反応法は、粒成長現象を利用し、原材料である多結晶体を溶融することなく、固相から直接単結晶を育成する方法です。単結晶は一般には液相または気相から成長することが多いため、結晶成長法としてはかなり珍しい部類といえます。
多結晶体を加熱すると、その結晶粒子の中で比較的大きな結晶が周囲の微細な結晶粒子を併合し、より大きな結晶に成長します。この特性を利用し、微細な結晶粒子からなる多結晶体に巨大な結晶粒子、すなわち単結晶を張り合わせて加熱すると、多結晶粒子がどんどん単結晶に取り込まれ、界面が単結晶から多結晶方向に移動し、最終的に一つの単結晶を得ることができるわけです。
フェライトを例にとって、固相反応法のプロセスをご紹介します。図3に示すように、まず高純度原料を高密度に焼成した多結晶体ブロックを用意し、その一面を鏡面研磨します。この面に、種結晶として、特定方位に切断・鏡面研磨したフェライト種結晶を張り合わせます。この接合体を電気炉にいれ、高精度に制御された特定の温度で熱処理をすると、種結晶と接合している部分の多結晶が徐々に種結晶に取り込まれる形で単結晶化し、最後には全体が単結晶になります。図4に成長中の界面付近の写真を示します。出来上がった単結晶の一部は切断加工し、再度種結晶として用います。良好な単結晶を育成するためには、原料となる多結晶体の品質が重要であり、セラミックス製品の作製で培われたノウハウが活用されています。

固相反応法による製造プロセス

図3.固相反応法による製造プロセス

成長界面写真

図4.成長界面写真

固相反応により単結晶が成長する駆動力は、原料となる多結晶体と生成物である単結晶の表面エネルギー差であると考えられています。すなわち、小さい結晶粒子ほど、相対的に大きな表面エネルギーを持つために不安定であり、より大きな粒子に併合されていくわけです。表面エネルギーを減らすために粒子が接合する機構は焼結の場合と同様に考えることができます。
このように考えると、どのような物質も固相反応法により単結晶化できるように思えるのですが、実際に固相成長が可能な物質は、ある温度を超えると急激に結晶粒子が大きくなる、いわゆる「異常粒成長」をする物質に限られています。異常粒成長のメカニズムは完全には解明されておらず、粒界における液相や第2相微粒子の介在、粒界原子の活性化付与、適度な温度勾配などが重要であると言われています。

参考文献
・日本結晶成長学会編 結晶成長ハンドブック 共立出版株式会社(1995)
・“固相反応法によるフェライト単結晶の育成”:小塚義成他,応用物理Vol.61(1992)
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