構造用セラミックス講座 第二回
3.代表的な材料
代表的な材料

茶碗などの焼き物の材料である陶磁器も広い意味では構造用セラミックスと言って良いでしょう。工業用としては、磁器の高い絶縁性を利用して電力用碍子(がいし)が作られています。碍子は鉄塔や地面と送電線の間を電気的に絶縁しながら、送電線を支える重要な構造部品です。

このセラミックスアカデミーの第2回「多孔体講座(2)」でご紹介しましたハニカムセラミックスの構成材料であるコーディエライトは、熱膨張が小さいことから耐熱衝撃性が高く、従来から耐火物、耐熱部材としても利用されてきました。

これらの磁器やコーディエライトなどは天然原料を主原料に使用して製造されているものですが、前節で挙げましたジルコニア、アルミナ、炭化ケイ素、窒化アルミニウムなどは、高純度の人工原料と高度なプロセス制御技術によって作られる、いわゆるファインセラミックスのうち、構造用セラミックスとして代表的なものになります。また、歴史的なトピックスとしては、1970年代に始まったセラミックガスタービン部品の研究開発で、窒化ケイ素や炭化ケイ素が高温構造用セラミックスとして注目を浴び、材料開発が急速に進展したことが挙げられます。

以降の章では、当社の製品例を中心に、各種構造用セラミックスの特徴を紹介していきます。

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3-1.アルミナ

アルミナは最も幅広い分野で使用されているセラミックスで、組成式Al2O3で表されるアルミニウムの酸化物です。サファイアはこのアルミナの高純度単結晶であり、天然のものは宝石で有名ですが、人工サファイアも工業製品として広く利用されています。結晶形態にはα、γ、δ、θがあり、γアルミナは高比表面積を有するので触媒担体に利用されますが、構造用の多結晶焼結体はαアルミナになります。αアルミナの焼結体は化学的に安定で、融点が高く、機械的強度が高い、電気絶縁性が高い、といったバランスの取れた優れた特性を持っていて、工業製品として広く利用されています。比較的安価であること、耐熱性が高いこと、絶縁性が高いことなどから、高温炉の耐火物に利用されたり、熱電対の保護管、あるいは電子部品の基板に利用されています。日本ガイシでは、高温での耐火度や強度にすぐれたアルミナ質耐火物を商品化しています。

また、半導体製造プロセスで使用される腐食性のハロゲン系ガスにも強い特徴があり、高純度な焼結体を半導体製造装置用部品としても商品化しています。

アルミナ質耐火物

アルミナ質耐火物

半導体製造装置用部品

半導体製造装置用部品

アルミナの機械的、化学的な特徴以外に、高純度な焼結体には光を通す性質があります。高純度かつ緻密な焼結体を製造する技術を駆使し、照明用のセラミック発光管として商品化しています。特に、ナトリウムやハロゲン蒸気に対して高い耐食性を有し、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプに使われています。

照明用透光性アルミナ

照明用透光性アルミナ

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3-2.ジルコニア

身近では刃物にも使われているジルコニアは、セラミックスの中でも室温での強度や靭性に優れた高強度材料です。ジルコニアは組成式ZrO2と書かれるジルコニウムの酸化物で、純粋なジルコニアは1170°C付近での正方晶−単斜晶相変態に伴う体積変化によって焼成の冷却中に亀裂が入って破砕してしまいます。そのため、通常は、CaO,CeO2、MgO、Y2O3などの添加物を加えて安定化させて使います。これら安定化ジルコニアには酸化物イオン伝導性を有するものがあり、燃料電池用の固体電解質として利用可能です。一方、安定化のための添加物を減量して部分的に安定化させた部分安定化ジルコニア(PSZ)は、曲げ強さが1000MPa以上と強く(アルミナの3倍以上)、破壊靭性も8MPa√mと大きく、脆さを克服しています。このほかに微細な正方晶のみの多結晶焼結体(TZP)もあります。工業用としては金型・治工具、刃物、粉砕ボール、ベアリングボール、バネなどとして幅広く利用されています。

PSZは機械的特性が優れているばかりでなく、化学薬品に対する耐食性があるので、このような特徴を活かした当社の製品にケミカルポンプの接ガス部品があります。

ケミカルポンプ用PSZ製インペラ

ケミカルポンプ用PSZ製インペラ

また、その高い機械的特性とシート成形技術を組合せて薄板化が可能であり、圧電セラミックスと複合化して微小精密機械部品を生産しています。

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3-3.炭化ケイ素

最近では次世代パワー半導体の基板として注目を浴びつつあるSiC(単結晶)ですが、構造用としては、高温に強い材料です。炭化ケイ素は組成式SiCと書かれるケイ素の炭化物です。強い共有結合性物質で、耐熱性や耐酸化性に優れています。また、半導体と同じくらいの電気伝導性もあります。耐熱性が高いことから、焼結は困難で非常に高温で焼成しなければなりません。そのため、様々な焼結方法が開発されてきました。Si(シリコン)粉末とC(カーボン)粉末とSiC粉末を混合して成形した後、加熱し、SiとCを反応させるか、αSiC粉末とC粉末を混合して成形した後、加熱し、溶融Siを含浸させて反応させる、という反応焼結という方法があります。また、SiC粒子を高密度に成形し、高温で焼結させて、多孔質の焼結体を製造する方法があり、これを再結晶SiCと言います。一方、硼素(B),炭素(C),アルミニウム(Al)などの焼結助剤を添加して焼結することにより緻密な焼結体が得られます。

日本ガイシでは、耐火物用途として、再結晶SiC、SiC粒子をSiO2で結合した酸化物結合SiCや窒化ケイ素で結合した窒化物結合SiCを用途に合わせて揃えています。またさらに、溶融Siを浸透させて気孔を埋めた緻密な焼結体(NEWSIC)も開発しています。緻密なため、従来のSiC耐火物よりも高強度であり、熱伝導率や赤外線放射特性に優れ、さまざまな用途に利用可能です。

また、緻密質焼結体としては、炭化ケイ素は高温薬液に対する耐食性や高熱伝導特性、高強度特性に着目し液送ポンプの接液部品に用いています。また、半導体製造プロセスガスに対する耐食性にも優れるため、半導体製造装置用部材として使用することができます。

最近では、SiC粒子をSiで結合させた多孔質焼結体によって、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)を製造しています。耐熱衝撃性に優れ、高気孔率化の制御も比較的容易です。

炭化ケイ素質耐火物

炭化ケイ素質耐火物

NEWSIC製耐火物

NEWSIC製耐火物

Si結合SiC製ディーゼルパティキュレートフィルター

Si結合SiC製ディーゼルパティキュレートフィルター

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3-4.高熱伝導と耐食性の窒化アルミニウム

窒化アルミニウム製ウエハ加熱ヒータ、チャンバー装着状態イラスト

窒化アルミニウム製ウエハ加熱ヒータ、チャンバー装着状態イラスト

焼き物(セラミックス)は熱を伝えにくいというイメージがありますが、窒化アルミニウムは、アルミニウムに匹敵する高い熱伝導率を持つセラミックスです。窒化アルミニウムは理論的には300W/mK(アルミニウムは237W/mK)の熱伝導率を有するといわれていますが、焼結体は当初、その値には到底及ばなかったため、高熱伝導率化の研究が20年程前から盛んに行なわれてきました。焼結体では、結晶粒子に酸素が固溶したり、粒界が障壁となって熱伝導を阻害するのですが、様々な焼結方法が検討され、これを克服してきました。特にY2O3を始めとする優れた焼結助剤の採用により、酸素を粒界にトラップして、粒子の純度を上げ熱伝導率を向上するなどの技術的進歩があり、最近では、200W/mKを越える焼結体の製造が可能になりました。機械的特性では他のセラミックスに負ける面もありますが、絶縁性でありながら高熱伝導という特徴のために半導体素子の放熱基板として利用されています。

一方で、半導体製造装置、例えば、CVD装置やエッチング装置内で使われる高腐食性のガスに対しても高い耐食性があることから、日本ガイシではシリコンウエハを支持するサセプタを製造しています。例えば、焼結体内部に発熱抵抗体金属やプラズマ発生用の金属電極を一体的に埋設したウエハ加熱ヒータやプラズマ発生電極付きサセプタは、窒化アルミの高熱伝導性を活かしてウエハの温度コントロールをしながら、クリーニング用腐食性ガスに耐えて最新の半導体製造プロセスになくてはならない部品となっています。

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