誘電体講座 第一回
1.誘電体とは?

テレビ、パソコン、携帯電話などの電子機器にはコンデンサーという電子部品が必ず入っています。これは電気を蓄える役割を果たしています。といっても電池のように長時間放電できる電気を蓄えるのではなく、瞬間的に放電できる電気を蓄えます。コンデンサーは誘電体という材料に電極をつけた構造をしています。

誘電体は直流の電気は通しませんので、絶縁体と同じ意味で使われます。ですからセラミックスはもちろん、ガラス、プラスチックなども誘電体です。しかし誘電体というと、誘電率という特性が重要になります。2つの電極の間に誘電体を挟むとコンデンサーになり、誘電体の誘電率に比例してコンデンサーに蓄えられる静電気の量、つまり容量が増えます。それは誘電体の中で「分極」が起こり、電気的に+と−に分かれるからです(図1)。誘電率は通常、真空の誘電率を1としたときの比率として、比誘電率 で表します。分極のメカニズムは後で述べます。

分極した誘電体を挟むコンデンサー

図1.分極した誘電体を挟むコンデンサー

誘電体は直流に対しては絶縁体ですが、交流は通します。それも周波数が高いほど良く通るようになります。それは図2のように、電極に蓄えられていた電荷が、交流で電流の向きが変わったときに流れ出すからです。コンデンサーを流れる交流は損失が生じます。これを誘電損失と言い、普通はtanδ(タンデルタと読む)というパラメータで表します。また誘電特性は温度によっても変化します。この温度変化の大小を示す温度係数も用途によっては重要となります。

コンデンサーを交流が流れるようす

図2.コンデンサーを交流が流れるようす

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2.誘電体セラミックス

ほとんどのセラミックスは絶縁体ですからそのまま誘電体と言えますが、都合のよい誘電特性を持っているセラミックスを特に誘電体セラミックスと言います。比誘電率は低いもので4程度、高いものは10000程度にもなり、用途によって使い分けられています。

最初に注目された誘電体セラミックスはチタン酸バリウム(BaTiO3;チタバリともいう)というセラミックスで、1942年に日本、アメリカ、ロシアでほぼ同時に発見されました。比誘電率が約1500で、高誘電率コンデンサー材料として研究され、特性安定化のため組成を改良して実用化しました。

誘電体には強誘電体という、比誘電率は高いが損失も大きい誘電体と、常誘電体という、比誘電率は約100以下と低いが、損失も少ない誘電体があります。強誘電体はコンデンサーのように大きな容量が必要で、あまり周波数が高くない回路で使われます。チタン酸バリウムは強誘電体であり、無線通信のような高周波の電波を扱う回路では使えません。

常誘電体としては、フォルステライト( Mg2SiO4εγ=7 )、酸化アルミニウム( Al2O3εγ=9 )、ニオブ酸マグネシウム酸バリウム( Ba(Mg1/3Nb2/3)O3εγ=25 )、チタン酸ネオジウム酸バリウム( Ba4Nd9.3Ti18O54εγ=85 )などがあります。高周波用途の常誘電体では、損失を誘電損失の逆数である品質係数Q値( Q=1/tanδ )で表します。ですからQ値が高いほど損失が少ないことになります。また、Q値は周波数に反比例するといわれており、周波数ƒ(GHz)とQ値の積であるQ·ƒ値(GHz)で表記することもよくあります。

誘電特性の発現メカニズムである分極が起こる理由は、次のように説明されています。

分極にはいくつかの種類がありますが、誘電体セラミックスの場合はイオン分極という分極が主因になります。誘電体セラミックスは0.1〜1マイクロメートル程度の大きさの結晶が寄り集まってできている多結晶体です。チタン酸バリウムの結晶は、Ba2+、Ti4+というプラスのイオンと、O2-というマイナスのイオンからできており、これらのイオンは規則正しくならび、ペロブスカイト型と呼ばれる結晶構造になっています。

この結晶は図3.のように、中心に大きなBa2+イオンあり、それが周囲に接しているO2-イオンを押し広げていて、O2-イオンに囲まれている小さなTi4+イオンは周囲に隙間があり、動く余地ができています。そうするとTi4+イオンはO2-イオンの中心にはおらず、隅に寄ります。その結果、+イオンと−イオンとの電気的な中心の位置は一致せず、その間に電界が生じます。これがイオン分極です。これでご理解いただけると思いますが、誘電体セラミックスの誘電率は結晶を構成しているイオン(元素)の種類と、その結晶構造で決まる特性です。

このように誘電率は結晶構造における電荷の非対称性によって発生する特性です。ところが損失の少なさを示すQ値は対称性が良く、規則正しい結晶ほど高くなります。つまり誘電率とQ値は相反する特性で、誘電率の高い材料ほどQ値は小さくなっていきます。実際に使うときは用途によって、誘電率とQ値の重要度に応じた誘電体セラミックスを選ぶことになります。

ペロブスカイト型結晶構造と分極メカニズム

図3.ペロブスカイト型結晶構造と分極メカニズム

参考文献
・岡崎 清「セラミック誘電体工学:第3版」 学献社 (1983)
・大里 齊「高周波誘電体」、強誘電体材料の開発と応用、塩嵜忠監修、p135-147、シーエムシー出版 (2001)
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