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CO2-EOR

高性能サブナノセラミック膜でCO2を分離し、
CO2-EORの原油回収率アップと環境負荷低減を両立

油層にCO2を圧入することで原油を回収する技術「CO2-EOR」

二酸化炭素(CO2)を資源ととらえ再利用する方法の一つとして、CO2を油層に圧入することで原油を回収するCO2-EOR(二酸化炭素原油増進回収法)という技術が注目されています。
CO2の一部が原油に溶け込んで原油の粘度を下げ、流動性を高めるので、原油の回収率を高めることができるのです。

注入したCO2は原油とともに地上に戻ります。CO2-EORの経済性を高めるにはこのCO2を再利用することが重要ですが、地中にあったメタンなどのガスも混じっているため、CO2だけを分離しなければなりません。CO2濃度が高いほど原油によく溶け、原油回収率を向上させることができるからです。

分子ふるいとして働く日本ガイシの高性能サブナノセラミック膜でCO2を分離

この問題を解決するのが、日本ガイシが開発中の高性能サブナノセラミック膜です。
基材となっているのはアルミナでできた多孔質のセラミックス。円柱形で、レンコンのようにたくさんの貫通した孔があいており、孔の内側はゼオライトの薄い膜で覆われています。
ゼオライトの膜には、1ナノメートルより小さい極微な細孔が無数にあいていて、油層に含まれるガスとCO2を効率よく分ける「分子ふるい」として働きます。

ガスとCO2を効率よく分ける「分子ふるい」

油層に含まれるガスのうち、メタン分子は最も小さく、CO2分子との大きさの差はわずか0.05ナノメートルです。
このため、さまざまな種類があるゼオライトのうち、両者をふるい分けるのに適した細孔をもつものを膜に採用しています。原油とともに地上に戻ってきたガス(原油随伴ガス)をレンコン状の孔に流すだけで、CO2を正確に効率よくメタンなどと分離することができます。
高圧で、高濃度のCO2を通しても、優れた分離性能を発揮できるのもセラミックフィルターの強みです。

原油回収率のアップとカーボンニュートラルに貢献するCO2-EOR

一方、CO2-EORは、CO2を地中に閉じ込める技術の一つとしても注目されています。
注入されたCO2のうち、地上に戻ってこない一部は地中に貯留されるといわれているからです。工場などから排出されるCO2をCO2-EORに利用すれば、大気中に放出されるはずだったCO2を地中に閉じ込めることにつながります。

CO2-EORは、原油の回収率を上げるのと同時にカーボンニュートラルの実現に貢献できる一石二鳥の技術。
日本ガイシが、セラミックスの成形・加工技術の蓄積を生かして実現した高性能サブナノセラミック膜は、その一翼を担うことが期待されています。

高性能サブナノセラミック膜

ライター

青山 聖子あおやま せいこ

科学技術ジャーナリスト

お茶の水女子大学・同大学院で化学を専攻。ファンディング・エージェンシーで広報にかかわった経験や、化学雑誌で取材や編集を行ってきた経験を生かし、サイテック・コミュニケーションズで研究機関や技術系企業の広報媒体(ニュースレター、ウエブページなど)を制作している。いくつかの大学でサイエンス・ライティングも教えている。

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