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オン・ボード・モニタリング(OBM)

世界初、自動車からの排ガス中の
NOx濃度を
リアルタイムに測定できるNOxセンサー

世界各国で厳しくなる一方の自動車排ガス規制

地球環境意識の高まりを受けて、自動車排ガス規制はますます厳格化される傾向にあります。特にEUでは、これまでディーゼル乗用車からの窒素酸化物(NOx)と粒子状物質(PM)の排出量がきびしく規制されていましたが、今後はディーゼル車かガソリン車か、乗用車か重量車かを問わず、エンジン車全般に同一の基準が適用される見込みです。しかも、NOxやPMの規制値はよりきびしくなり、新規の規制物質も追加される予定です。

1台1台を監視する、オン・ボード・モニタリング(OBM)の導入も

さらに、規制の実効性を高めるため、オン・ボード・モニタリング(OBM)の導入計画も進んでいます。現在は、新車種の市場投入前に、テスト車両による試験走行で排出される規制物質の量をチェックするのが一般的ですが、OBMでは、一般ユーザーが運転する1台1台の車両について、実際の道路走行の際の排出量を車載センサーで常時監視します。OBMのデータを各車両のライフサイクルにわたって保存することで、トータルの排出量を評価することが考えられています。

日本ガイシのNOxセンサーは、排ガス中のNOx濃度をリアルタイムに測定

こうした排ガス規制の強化やOBM導入は、EUに限らず世界に広がっていくものと予想されます。日本ガイシのNOxセンサーは、排ガス中のNOx濃度をppmレベルの高精度でリアルタイムに測定できる世界初の製品であり、すでにディーゼル車を中心に世界中の自動車メーカーに採用されていますが、今後の規制強化に対応するためのキーテクノロジーの一つになることが期待されます。

センサーの心臓部はジルコニアというセラミック製の素子。NOxを分解したときに出てくる酸素イオン(O2-)の濃度を電気的に測定するしくみです。日本ガイシの独自技術で、厚さ約1mm、幅数mmほどの小さな素子の中に、NOxの前処理と分解のための部屋と、測定などのための複数の電極を作り込みました。

ジルコニア(セラミック)製
素子の断面図

[第1室]1.酸素を取り除く 2.可燃ガスを燃焼させる 3.NO2をNOに変換する [第2室]4.NOを還元触媒で分解し、分解時に発生する酸素量を測定する

このセンサーは現在、ディーゼル車のNOx排出量を削減するのに活躍しています。
ディーゼル車の排気管内には、PMやNOxを除去するために多段階の排ガス浄化装置が設置されていますが、これらの装置で効果的な除去を行うためには、浄化の各段階でNOx濃度を測り、装置を精密に制御することが必要だからです。

OBMにも対応するNOxセンサーで、地球環境の保全に貢献する日本ガイシ

ジルコニア製素子は熱に強いので、高温の排ガス中に直接挿入することができ、センサーは良好な応答性を示します。排ガス規制が強化されると、排ガス浄化装置も複雑化し、必要なNOxセンサーの数は現在よりも増えると予想されています。もちろん、OBMにもこのセンサーは威力を発揮します。

また、NOxセンサーの需要拡大に伴って、「より長期にわたって安定的に排ガスをモニタリングしたい」「ガソリン車の環境性能向上にも活用したい」といった新たなニーズも生まれています。日本ガイシでは、こうした要請に応えてNOxセンサーの高性能化、多様化を図り、適用車種の拡大を通じて排ガス規制強化による環境保全に貢献したいと考えています。

車載用高精度NOxセンサー

ライター

青山 聖子あおやま せいこ

科学技術ジャーナリスト

お茶の水女子大学・同大学院で化学を専攻。ファンディング・エージェンシーで広報にかかわった経験や、化学雑誌で取材や編集を行ってきた経験を生かし、サイテック・コミュニケーションズで研究機関や技術系企業の広報媒体(ニュースレター、ウエブページなど)を制作している。いくつかの大学でサイエンス・ライティングも教えている。

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