銅の特性プラス優れた性質を備えた銅合金が活躍
有史以来、人類は銅をベースにしたさまざまな合金を利用してきました。青銅や黄銅はその代表例です。銅は導電性や熱伝導率が高く、展延性に富む金属です。その特性を活かしながら、さらに優れた性質が加わった銅合金が産業界で存在感を発揮しています。
常識を超えた強度を持つベリリウム銅に広がる用途
そのうちで、ベリリウムを2%程度含む「ベリリウム銅」は、最高レベルの強度を備えた超合金です。銅特有の導電性と強度は二律背反と考えられてきましたが、この常識を打ち破って、ステンレスに近い強度を併せもつ異次元の特性バランスを実現させました。加えて、優れたバネ性、耐熱性、耐疲労性、耐食性、加工性を備えています。
このような特性から、ベリリウム銅は信頼性の高い導電性バネ類や接点の材料として、エレクトロニクス製品から通信インフラ、モビリティーにまで幅広く活躍しています。家電や産業機器部品の小型化に役立っているほか、自動車の各種スイッチやリレーでは強靭で長寿命なバネ材として用いられます。電装化が進む自動車用途では、高い性能と信頼性が求められるセンサーなどに、軽量・小型化がはかれるベリリウム銅が重宝されています。耐熱性の高さから、ヒーターのサーモスタットにも好適な材料です。
5G基地局では、ベリリウム銅が電磁波シールド材として使われています。脱炭素をめざして市場が広がるEVでも、充電コネクターなどに用途が拡大中です。また、ベリリウム銅の耐久性を生かした用途には飛行機の着陸脚(ランディングギア)があげられます。
熱と摩耗に強いニッケルすず銅
ベリリウム銅と肩を並べる強度をもつ「ニッケルすず銅」も、日本ガイシが提供する銅合金の一つです。ニッケルすず銅は、ニッケル9~21%、スズ5~6%を含み、ベリリウム銅に匹敵する特性に加えて、きわめて高い耐熱性と耐磨耗性をもつのが特長です。高耐熱バネ材として、自動車や産業機器などに使われています。
日本ガイシ、多種類の高性能銅合金を展開
高性能銅合金は、これからも機能のかなめとなる部品を中心に活躍の場を広げて行くことが予想されます。日本ガイシは、用途に応じた多様な特性をもつ、線から板まで多種類の形状の銅合金を展開しています。
ベリリウム銅とニッケルすず銅
ライター
古郡 悦子ふるこおり えつこ
科学技術ジャーナリスト
東京大学理学部化学科、教養学部教養学科を卒業。製薬会社に勤務するかたわら、科学雑誌に記事を書くようになり、研究者や技術者を取材するワクワク感にはまった。以来、科学・技術とその周辺について記事執筆、調査、企画、編集などを手がける。MIT科学ジャーナリズムフェロー、サイテック・コミュニケーションズ創業メンバー。