水銀ランプに代わる紫外LEDが普及
水銀による環境破壊や健康被害を避けるため、各国が一致して水銀フリー社会をめざす取り組みが進んでいます。2017年8月に「水俣条約」が発効し、水銀の採掘、貯蔵、再生、輸出入とならんで、使用製品の製造が規制されることになりました。
こうした動きを背景に、代替品の開発がさかんです。紫外線照射用水銀ランプは、紫外線硬化樹脂の用途についてはすでにLEDに置き換わりつつあり、殺菌用にはより短波長の紫外線を発生するLEDが登場しています。紫外LEDはもちろん水銀フリー。そのうえ、低消費電力、長寿命、小型で軽量なので、今後の普及が期待されています。
LEDによる紫外線殺菌技術が進み、広がる
紫外線殺菌は、環境・衛生管理の要求の高まりから、食品、医療、衛生などの分野で幅広く使われるようになってきました。殺菌用には、細菌やウイルスの核酸に損傷を与える265~280nm(ナノメートル)領域が有効です。
この波長を効率よく発光する紫外LED技術が進んでおり、それにともなって、従来の殺菌用水銀ランプを超える用途の拡大が予想されます。安心・安全な飲料水を供給する浄水場、公共施設における除菌、空気清浄器、家庭用浄水器、掃除機、有害昆虫の駆除など、紫外LEDは生活のさまざまの場面に広がりそうです。
照射効果を高める石英ガラス製マイクロレンズ
照射効果を高めるためには、発光した紫外光の照射範囲を絞り込む必要があります。絞り込みは、殺菌ばかりでなく、プリント基板のパターニングなどの精密な樹脂硬化にも役立ちます。絞り込み用の小型レンズには、透明度が高く、短波長紫外光をよく透過する高純度の石英ガラス製が最適です。石英は融点が高く、製造と加工には独特の技術が要求される素材でもあります。
日本ガイシは多様なレンズ形状に対応
広がる用途に応じて、紫外LED用には多様な形状や大きさのレンズが求められるようになってきました。日本ガイシは、これまで培ってきた独自製法で、複雑な3次元形状の石英ガラスレンズの製造を可能にしました。
紫外LED用マイクロレンズ
ライター
古郡 悦子ふるこおり えつこ
科学技術ジャーナリスト
東京大学理学部化学科、教養学部教養学科を卒業。製薬会社に勤務するかたわら、科学雑誌に記事を書くようになり、研究者や技術者を取材するワクワク感にはまった。以来、科学・技術とその周辺について記事執筆、調査、企画、編集などを手がける。MIT科学ジャーナリズムフェロー、サイテック・コミュニケーションズ創業メンバー。