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脱・有機溶媒

「脱・有機溶媒」に一歩近づく、
近赤外線波長制御乾燥システム

水系溶媒でも低温で効率よく乾燥

電子機器の部材やディスプレイパネル、包装、医薬品などに各種フィルムの需要が拡大しています。
なかでも際立った伸びを見せているのが、EVの普及を背景にしたリチウムイオン電池の電極用フィルムのニーズです。

フィルムの製造・加工の工程で重要なのが、使用した溶媒を蒸発させる乾燥プロセスです。
環境に配慮して、有機溶媒から水系溶媒への転換が求められていますが、水系溶媒では、熱風乾燥すると処理時間が長くなり、高温ヒーターを使用すれば基材や塗布膜の劣化が生じがちです。
そこで考案されたのが光による乾燥法です。水分子が吸収しやすい波長の近赤外光を選択的に照射して、水分子間の水素結合を離断し、乾燥します。低温で効率的に乾燥できて、「脱・有機溶媒」に一歩近づく画期的な手法です。

日本ガイシが磨いてきた多様な熱処理技術を生かして

日本ガイシは、セラミック製造を通じて、多様な熱処理技術を培ってきました。そのなかで磨いてきたのが、目的の溶媒だけを安全に、そして効率よく蒸発させる乾燥技術です。
溶媒を乾燥させる技術は、製品の品質を決定づける意外に知られていない鍵です。

樹脂フィルムのような熱に弱い基材を傷めない低温乾燥、厚い塗膜のムラのない乾燥、基材内部からの脱水など、乾燥ニーズは多様化しています。
いずれにも対応できるのが、日本ガイシが開発した近赤外線波長制御乾燥システムです。

基材・溶媒・塗膜の条件によりカスタマイズも可能

独自開発の波長制御ヒーターは、熱源近くに空気を流して冷却する仕組みを備えています。これによってヒーター自体の温度上昇を防ぎ、熱源から生じる遠赤外線を遮断して、近赤外線を選択的に照射します。
水に吸収されやすい3μm付近の波長を使い、50℃以下の低温でも効率よく乾燥できるこのシステムは、水系溶媒に最大の効果を発揮します。

低温でも効率よく乾燥

熱による基材の劣化が少なく、溶剤の引火リスクもありません。溶媒や基材の種類、塗膜の厚さなどの条件に合わせて装置のカスタマイズも可能です。

最近、よりコンパクトなスラローム型装置が開発され、短い処理時間でムラや変形のない乾燥ができる製造工程の革新が実現しています。
需要が急増するリチウムイオン電池の電極用基材の「絶乾(絶対乾燥)」など、脱水工程での活躍が期待されています。

近赤外線波長制御乾燥システム

ライター

古郡 悦子ふるこおり えつこ

科学技術ジャーナリスト

東京大学理学部化学科、教養学部教養学科を卒業。製薬会社に勤務するかたわら、科学雑誌に記事を書くようになり、研究者や技術者を取材するワクワク感にはまった。以来、科学・技術とその周辺について記事執筆、調査、企画、編集などを手がける。MIT科学ジャーナリズムフェロー、サイテック・コミュニケーションズ創業メンバー。

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