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レジリエンス

安全性が高く大容量、亜鉛二次電池「ZNB」が
高める電力インフラのレジリエンス

電力インフラに求められるレジリエンスの強化

近年、大型で強い台風やハリケーン、局地的豪雨などが増え、世界各地に深刻な被害をもたらしています。また、大地震や大事故が起こるリスクはいつもあります。
こうした自然災害や事故の後、一刻も早く社会・経済活動を再開するには、エネルギー・通信などのインフラのレジリエンス(強靱性)を高めておく必要があります。
そのための取り組みが世界各国で進む中、電力インフラのレジリエンスを向上させる方法の一つとして、太陽光発電などの分散電源と蓄電池を組み合わせるシステムが注目されています。

リチウムイオン二次電池とニッケル水素二次電池の長所を併せ持つZNB

蓄電池は充放電を繰り返すことができる電池で、さまざまな種類が実用化されています。それらのうち、分散電源用の小~中規模蓄電池の候補と考えられているのは、電気自動車、ハイブリッド車、モバイル機器などに使われている以下の2種類です。

一つはリチウムイオン二次電池で、小さい体積に多くの電気をためることができる(エネルギー密度が高い)のが特徴ですが、可燃性の有機電解液を用いるため、発火などのリスクへの厳重な対策が必要です。もう一つはニッケル水素二次電池で、水系電解液を用いるので安全性は高いのですが、エネルギー密度はあまり高くありません。

このため、日本ガイシは、安全性とエネルギー密度の両方の要求に応える二次電池の開発に取り組んでいます。それは、亜鉛二次電池「ZNB」です。

カーボンニュートラルに貢献しながら、高い電力レジリエンスを実現

ZNBはニッケル水素電池の負極を亜鉛に置き換えた構造の電池です。安全性が高く、ニッケル水素電池よりもエネルギー密度が高いのですが、寿命が短いという問題がありました。
日本ガイシは、正極と負極を隔てるセパレーターを得意のセラミック技術で作製し、この問題を解決。亜鉛二次電池の実用化が近づきました。

セラミックのセパレーターが寿命の長い亜鉛電池を可能に

[一般的なセパレーター]亜鉛デンドライトがセパレーターを貫通し、短寿命 [OH-イオン伝導性セラミックセパレーター]緻密なセパレーターが亜鉛デンドライトの貫通を阻止し、長寿命

安全でエネルギー密度の高い亜鉛二次電池が実用化されれば、オフィスビルや学校などへの設置が進むことでしょう。この電池に蓄える電気を再生可能エネルギーでつくれば、カーボンニュートラルに貢献しながら電力レジリエンスを高められるという、理想的なシステムの実現も夢ではありません。

※「ZNB」は日本ガイシの登録商標です

亜鉛二次電池「ZNB」

ライター

青山 聖子あおやま せいこ

科学技術ジャーナリスト

お茶の水女子大学・同大学院で化学を専攻。ファンディング・エージェンシーで広報にかかわった経験や、化学雑誌で取材や編集を行ってきた経験を生かし、サイテック・コミュニケーションズで研究機関や技術系企業の広報媒体(ニュースレター、ウエブページなど)を制作している。いくつかの大学でサイエンス・ライティングも教えている。

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