特集 NGKグループのMI

100年分のデータを強みに、MIで材料開発の新時代を開く

材料開発のDXといわれるMI(マテリアルズ・インフォマティクス)。これまで材料開発は、研究・開発・評価などさまざまなプロセスを経て、熟練開発者の知識と経験を基に行われてきました。長年の勘に頼る部分が多く、一つの材料開発に10年以上かかることも珍しくありません。

NGKグループでは100年にわたって蓄積した大量の実験データやAIなどデジタル技術を活用し、「革新的な材料開発」と「材料開発期間の短縮」を目指してMIの実用化に取り組んでいます。

MI(マテリアルズ・インフォマティクス)とは

MIは材料の構造や特性等に関するデータ(計算データや実験データ)をAIが解析し、新材料を効率よく探索する手法です。

セラミックスのMI実用化は開発途上

樹脂やゴム、製薬などの有機材料を扱うメーカーでは、計算データや実験データによるMIの実用化が進んでいます。それに対し、無機材料を扱うメーカーでMIを実用化している例はごくわずかです。無機材料の中でも特にセラミックスは、結晶粒子が多数集まった複雑な高次構造が特性に大きく影響し、有機材料とは異なり高精度なシミュレーションが困難なことから、MIの実用化は難易度が難しく、国のプロジェクトでも特性予測は開発途上の段階です。

NGKグループが目指すMI

NGKグループでは2021年から全社プロジェクト「MIプロジェクト」をスタートさせました。

当社の強みは創立以来100年にわたって蓄積した1万件以上の実験データです。他社にはないこの豊富な実験データに、新たに立ち上げる高効率・高速実験設備から製造条件を含む大量の新規実験データを加え、さらに社外のデータを相互連携したビッグデータを迅速に取り出せる仕組みを構築し、他社との差別化を図ります。

構築した大規模なデータベースをAIが解析し、要求に応じた材料組成や製法などを導き出すことで、材料開発のリードタイムを10分の1に短縮し、革新的な新規高機能材料の創出を目指しています。

NGKグループ独自のマテリアルズ・インフォマティクス

 NGKグループ独自のマテリアルズ・インフォマティクスを説明した図。これはシミュレーションによる計算データと過去の実験データをデータベース化し、AIに解析させることで新材料を効率的に探索するもので、導入により革新的な材料の創出が期待できます。2030年度末までにNGK全製品の材料開発への適用を目指します。

MI活用に向けた具体的な取り組み

データベースの構築

各種実験データを自動的に整理し、AIによる解析を行うデータの基盤「MIプラットフォーム」を構築しています。

実験の高効率化・高速化

大量の新規実験データを効率的かつ高速に取得する新たな実験方法の確立に取り組んでいます。

AI技術の高度化

目的とする材料組成探索やその材料の製法提案、さらには大学や研究機関との共同研究も行いながら材料開発戦略を提案する高度なAI技術の開発を進めています。

着実に前進しながら、材料開発期間の短縮へ

2022年にはMIの基本仕様を確立し、半導体製造装置用セラミックスのような緻密質材料のMIを試行して材料開発期間を3分の1に短縮する効果を確認しました。さらにデータの増強とAI解析の精度向上により、複雑な多孔質セラミックスの材料開発にも順次拡張していきます。

NGKグループは2030年までに、グループ全製品の材料開発に対してMIの適用を目指しています。材料開発期間10分の1への短縮に加え、これまでにない画期的な材料開発も期待されるMIの実用化によって、新規高機能材料開発の超高速化を実現していきます。