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特集C1が紹介する「C1と水」に関する世界遺産の旅をご案内します。
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"世界遺産"シリーズ3 命を育む森 白神山地

命の尊さを教える森

世界自然遺産になった白神山地の自然保護運動のきっかけは、水源保護であった。秋田からこの山地を横切って青森にいたる青秋林道建設反対は、藤里町の写真屋鎌田孝一さんの「私たちの水源を守ろう」という呼びかけで始まった。それがブナ原生林の伐採反対にもつながり、登山愛好者や釣り人など大勢の人を巻き込んだ反対運動になった。マスコミにも取り上げられ、1990年林野庁は工事中止を決定し、白神山地に森林生態系保護地域を設定した。これを機に1993年に、ブナ原生林を中核とした1万7千haがユネスコの世界自然遺産に登録されたのであった。

命に欠かすことのできない安全な水、それを守るのが白神山地の自然保護運動の原点である。やがてジーンプール(種の宝庫)としてのブナ林が見直され、腐葉土のろ過する水や低温で発酵する酵素など、自然の貴重さが認識され、観光だけでなくエコツァーという旅が行われるようになった。自然水をベースにした酒やワイン、水そのものも観光化とともに人気を博すようになった。しかし、コアゾーン(核心地域)などへの立ち入り禁止など、ここで生活していたマタギたちに大きな影響を与えることにもなった。

 今回の旅の最後に泊まった鯵ヶ沢の奥にある熊の湯のご主人、二十一代赤石マタギ吉川隆さんは「私たちに自然という言葉はない」という。森や山に生活している彼らはその中の一員だからである。

 子供に自然というテーマで絵を描かせると、小学校三年くらいまでは、森や木と人間を描くが、高学年になると森や木だけで、人間はいないということを吉川さんが教えてくれた。自然の中にいた人間が、知識を得ると自然と分離してゆくのだろうか。アスファルトジャングルの都会も自然を人間が文明という道具で変形してきたものなのだと思う。

 命を育む森といわれる白神山地、かつてマタギたちは、自然と共生しながら暮らしてきた。時に自然の恵みとして植物や動物の命を戴くが、それゆえに自然に対する畏怖と尊敬の念を持ち、森を大切にしてきたのだ。生を粗末に扱う事件が、世間をにぎわす現在、白神の森に命の尊さを教えられる。錦繍の秋の白神山地では、生まれ故郷の川を鮭が遡っていた。卵から孵り海に出た鮭は匂いで生まれた川がわかるのだという。これも命の不思議である。

旅の案内/紀行文

登山家 石井 光造

写真

写真家 棚田 棚田盈人