![]()
タッチパネルやリチウムイオン電池の生産に欠かせないフィルム乾燥技術。従来型のロール to ロール式加熱炉は熱風乾燥が主流のため設備が大きい、製品を均一に加熱できない難点がありました。この問題を解決するため、日本ガイシでは長年培ってきた遠赤外線加熱技術を導入。熱風乾燥 + 遠赤外線加熱のハイブリッドシステムを採用することで、乾燥時間と炉長を約半分に短縮することが可能になりました。
赤外線加熱・熱風加熱を併用することで乾燥時間の短縮を実現。温度設定、給排気方式の最適条件のシミュレートが可能で、乾燥時間短縮に加え、均一乾燥条件も把握できます。



産業プロセス事業部
開発G 藤田 雄樹
リチウムイオン電池の電極や、タッチパネル用に透明の導電膜など、さまざまな製品が急速に普及するには、薄型軽量化されることが必要です。そのためフィルムに塗布した溶剤等を乾燥させて製品化する「ロール to ロール」と呼ばれる乾燥炉が活躍しています。
私たち開発グループでは、乾燥時間を短縮し、製品ムラの少ない新しいタイプの「ロール to ロール式加熱炉」の開発を目指しました。従来型の乾燥炉では、製品を乾燥させるために熱風を使います。しかし熱風式の乾燥炉は、気体を加熱して熱風として送り込まなければならないため、大量のエネルギーが必要であり、施設も巨大になります。またエネルギー効率も悪く、省エネ型の設備にすることも困難です。
そこで私たちは、熱風に代わる乾燥手法はないかと考えました。
私たちは、これまでさまざまな加熱炉や乾燥炉を設計してきた経験から、赤外線加熱による乾燥を考えました。ご承知のように有機溶剤を加熱乾燥をする場合、防爆の観点から、ヒーター温度をあまり上げることができません。しかし赤外線加熱は温風乾燥に比べて温度分布がよく、フィルムを均等に加熱することができるメリットがあります。塗膜内部から乾燥を促進させるためフィルムと塗膜の密着状態がよくなり、安定した製品を作り出すことができるのです。
赤外線加熱のメリットと、熱風乾燥の安心感を組み合わせたハイブリッドシステム。これが私たちが開発した新しい乾燥システムでした。
防爆対応の赤外線加熱システムを採用することで、乾燥時間は約半分に短縮。炉の長さも約半分にすることが可能です。また、熱風炉に比べると熱風の量も半分となり、システム全体で約30%の省エネを達成することができます。
私自身は工学部の機械設計出身で、日本ガイシに入社以来、加熱設備の設計・開発に携わってきたのですが、乾燥炉の開発をする上で必要なのは、専門外だった化学工学を主とした乾燥メカニズムを習得する事でした。しかし乾燥のメカニズムは、熱の移動と物質の移動が同時におきる大変複雑な現象であり、本をただ眺めているだけでは、なかなか習得する事ができませんでした。
そういった中、身近に起きている現象に置き換えて、先ず感覚的に捉える事を考えました。例えば、風呂上がりにドライヤーで髪を乾かす際、風速を切り替えると、早く乾燥するし、熱風をあてても、早く乾燥する。よくよく本を開いてみると、これは熱伝達係数と物質移動係数(蒸発速度)との相関による式にて、きっちり説明されてあり、また温度を上げた際の現象なども蒸気圧との関係式により、しっかり書かれてあったのです。
電極の乾燥プロセスも、こういった身近に起きている現象と基本的には同じであり、感覚的に捉えていた事も乾燥試験を繰り返し行うにつれて、理論面で説明する事ができるようになり、効率化や乾燥装置の開発をする上での第一歩を踏み出せました。
そんな中、熱風だけでフィルムを乾燥させる従来型炉のシステムはどうしてもロスが多く、エネルギーの無駄を強く感じていました。
それは、熱風のみを用い、迅速に乾燥させる為には、髪を乾かすのと同様、強い風を当てたり、熱風温度を上げたりしなければいけませんが、強い風を当てるには、大量の風が必要となりますし、またその大量の風を暖める為には、膨大な加熱エネルギーが必要となります。またそうして作り出された熱風も塗膜面に当てた後は、炉外へ直ぐに排気されていく為、エネルギーを殆ど塗膜に与えることができていません。これではとても効率の良い乾燥をしているとは思えませんでした。
今開発している新赤外線乾燥システムは、熱をほぼ100%フィルム乾燥に使うことができ、また正確にコントロールすることが可能です。現象を正確にコントロールするということは、精密で高品質の製品を作る上で不可欠なことだと思います。
今後、防爆対応の新コンセプト赤外線ヒーターといった革新的な技術開発が進むことで、ロール to ロールの主役は、熱風から赤外線に交替するのではないかと考えています。
シミュレーションについて解説したパンフレットをご用意しています。
加熱装置(焼成炉・乾燥炉)に関するお問い合わせ